救急手術の適応と予後
きゅうきゅうしゅじゅつのてきおうとよご
救急手術の適応と予後とは?
高齢者は、受診をためらって診断が遅れることがあり、そのため病気が重症化して緊急手術が必要になることがあります。また、感染症にかかっているのに、感染の指標である血液中の白血球の増加が認められない場合や、特徴的な腹膜刺激症状がはっきりしない腹膜炎の場合があり、診断の遅れにつながります。低栄養状態で活動性の乏しいお年寄りは抵抗力がないため、感染症が急に進みます。
高齢者の虫垂炎や胃潰瘍は穿孔(孔があく)を引き起こしやすく、救急手術が必要になることがあります。高齢だからといってがんに対する手術をためらううちに、出血やイレウス(腸閉塞)が生じて救急手術になることもあります。
外科の救急手術
一般外科の主な救急疾患は、消化管出血と急性腹症です。吐血・下血を示す消化管出血は、ほとんどの場合、保存的治療や内視鏡による治療によって止血されます。内科的治療による止血が困難な時は救急開腹術が必要になります。
外科救急手術の対象になるのは多くの場合、急性腹症です。突然現れた腹痛で、緊急手術が必要かどうかを判断すべき腹部の疾患群を急性腹症といいます。イレウス、消化管穿孔、ヘルニア嵌頓、急性虫垂炎、急性胆嚢炎、上腸間膜動脈閉塞症などがあります。
①イレウス(腸閉塞)
以前にがんなどで開腹手術を受けたことのある高齢者に、腸管の癒着やがんの再発によるイレウスが多くみられます。腸管や腸間膜が絞めつけられることによって腸管壁の血流障害を来す絞扼性イレウスは、腸管保護のための救急手術が必要です。高齢者には、大腸がんによるイレウス、S状結腸軸捻転、大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアの嵌頓などが多くみられます。
②消化管穿孔、腹膜炎
高齢者は消炎鎮痛薬やステロイド薬などを内服していることが多く、その副作用で胃・十二指腸潰瘍が生じ、出血や穿孔が起こります。胃・十二指腸潰瘍の穿孔では、開腹術により穿孔部に対する処置を行ったのち、腹腔内を洗浄し、腹腔ドレーンを挿入して術後に滲出液を体外に出します。
③その他
高齢者では虫垂炎の頻度は高くはありませんが、症状が軽くみえても穿孔して汎発性腹膜炎に進みやすいので、手術するかどうかを早く決めることが必要です。
高齢者の胆嚢炎は進行が早いので、迅速な胆嚢摘出術(開腹手術、または腹腔鏡下手術)が必要です。全身麻酔手術に耐えられない患者さんには、経皮経肝胆嚢ドレナージを行います。
上腸間膜動脈閉塞症は、腸管の虚血に対する血行の再建が必要で、緊急手術の対象となります。
まれに、腹痛が腹部大動脈瘤の破裂によることもあり、その場合には緊急手術を要します。
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