循環器疾患の手術適応
じゅんかんきしっかんのしゅじゅつてきおう
- 心臓血管外科
- 診療に適した科
循環器疾患の手術適応とは?
手術適応となる主な病気
人は血管とともに老いるといいますが、高齢者では加齢現象に加えて糖尿病や高血圧、脂質異常症などの動脈硬化を促進する因子が作用して、心臓を含めた血管の病気が多くなります。
血管には動脈と静脈がありますが、血管の病気はその管が詰まる(閉塞)か、拡張する(瘤)か、どちらかの病態になります。動脈では、体のどこの場所にこうした変化が起こっても、閉塞した場合には動脈が血液を送っている臓器に血液が行かなくなり(虚血)、その組織が死んでしまったり(壊死)、十分に機能しなくなったりします。
虚血の程度によっては命を脅かしたり、日常生活に支障を来したりするので、患者さんに必要とされる機能の程度に応じて手術適応が決まってきます。
下肢への動脈閉塞の時には、治療しなければ下肢の切断になりそうな時(重症虚血肢)や、歩くとすぐに足が痛くなり歩けなくなる時(間欠性跛行)などでは手術を検討します。
心臓に栄養を送る冠状動脈の場合には、内腔が75%以上狭くなったり詰まったりした場合に問題となります。
頸動脈の場合には、70%以上狭くなって脳梗塞を起こしたり、脳の虚血発作がある場合には、今後の脳梗塞の頻度が高くなるので手術を検討します。
最近は、こうした動脈閉塞部位にカテーテルを通して広げる方法が普及してきたので、外科的手術にするかどうかは、閉塞部位や範囲によっていろいろと検討が行われます。
一方、動脈瘤の場合には、瘤が発生した動脈によって大きさは異なりますが、一定の大きさになると破裂して命を落とすことになるので、その大きさによって手術適応が決まります。胸部や腹部の大動脈瘤では、最大横径が5~6cm以上になると手術を検討します。大動脈の壁が裂ける(解離)場合もありますが、解離した部位や範囲によって手術適応は異なってきます。
心臓にある大動脈弁や僧帽弁に異常を来した場合には、心機能や血管の状態などを考慮して手術を検討します。そのほか、主に下肢の静脈が詰まったり(深部静脈血栓症)、皮下の静脈が拡張する静脈瘤なども多い病気ですが、程度が軽い場合には手術を行うことはありません。
主な手術法
動脈が閉塞している場合には、閉塞している場所をバイパス(迂回)して血流を改善します。バイパスとする代用血管には、自分の動脈(内胸動脈や橈骨動脈など)や静脈(大伏在静脈)、人工血管などが使われます。バイパスする血管の場所によって、どれを選ぶかは異なります。
閉塞した血管を開いて、閉塞の原因となっている血栓や厚くなった動脈の壁を切除する方法も行われます(血栓内膜摘除術)。動脈瘤の場合には、動脈瘤を開いて、中に代用血管を入れて血行を再建します。近年は、大腿動脈などからステントグラフトを挿入して治療を行う血管内手術も盛んになってきました。
大動脈や大腿動脈などの太い血管には人工血管が使われます。心臓の弁を替える時にも、人工弁や生体弁などいろいろと検討が行われます。
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