出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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胎児水腫
たいじすいしゅ

もしかして... 不整脈  染色体異常  リンゴ病

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胎児水腫とは?

どんな病気か

 胎児水腫とは、胎児がさまざまな原因で、いわゆる「水ぶくれ」状態になっていることをいいます。具体的には、胎児の皮膚がむくみ、さらにおなかや胸のなか、あるいは心臓の周囲に液体がたまっている状態を指します。

 発生頻度は約0・6%程度で、かなりめずらしい病気です。

原因は何か

 原因はさまざまです。古くは、お母さんと胎児の血液型が一致しない血液型不適合妊娠の場合に多くみられましたが、最近では予防法が開発され、このタイプの胎児水腫はほとんどみられなくなりました。

 これに代わって、胎児の先天的な異常(心臓の奇形や不整脈、首の周囲のリンパ液の異常な貯留、染色体異常)、胎児の先天的な感染症、一卵性双胎などにおいて胎児水腫が発見される割合が増えています。

検査と診断

 診断には、胎児超音波検査が有用です。超音波検査で胎児の皮膚が厚くなり、腹水や胸水が認められれば診断できます。

治療の方法

 残念ながら、ほとんどの胎児水腫の赤ちゃんは心不全状態になっているため、予後は一般的にはよくありません。多くは子宮内で死亡するか、生後早期に亡くなってしまいます。

 しかし、ごく一部の赤ちゃんでは、治療により助けることができます。たとえば、不整脈のために胎児水腫になった赤ちゃんでは、お母さんに不整脈の治療薬を投与することにより、薬が胎盤をとおして赤ちゃんに届き、胎児水腫が消えることがあります。

 また、妊娠初期にお母さんがリンゴ病にかかってしまうと、このウイルスが赤ちゃんに感染して重症の貧血を引き起こし胎児水腫になります。この場合には、お母さんのおなかから輸血用の針を刺して子宮内の赤ちゃんに直接輸血をすれば劇的に症状がなくなることもあります。

 一卵性双胎の一方の赤ちゃんが胎児水腫になった場合は、お母さんのおなかから小さな内視鏡を子宮のなかに刺して、カメラで観察しながら、2人の赤ちゃんをつないでいる胎盤表面の血管を焼いて胎盤を別々にすることにより治療できることもあります。

(執筆者:東京大学医学部附属病院女性診療科・産科講師 亀井 良政)

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コラムRh型母子間血液型不適合妊娠

東京大学医学部附属病院女性診療科・産科講師 亀井良政

 お母さんと胎児の血液型が一致しない(不適合)場合、まれにお母さんの血液成分(抗体)が胎児の血液を攻撃して、胎児の貧血を引き起こし、重症になれば胎児の全身のむくみ(胎児水腫)や胎児の死亡を起こすことが知られています。

 血液型には、実は数十種類の分類法がありますが、妊娠で問題になるのは主にABO型とRh型です。Rh型不適合妊娠では、Rh陰性のお母さんがRh陽性の胎児を妊娠した場合、最初の妊娠では異常は起こりませんが、2回目以降の妊娠で問題が起こる可能性があります。

 妊娠中は、初期からお母さんの血液検査で抗体の有無を調べることにより、この異常が発生する可能性がわかります。異常がみられれば、胎児の状態を超音波検査で観察しながら、早期に分娩させたり、出生後は赤ちゃんの血液を交換する治療が必要になります。

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