出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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遺伝とは?

多因子疾患としての生活習慣病

 生活習慣病のひとつに、高コレステロール血症という病気があります。そのなかでも、とりわけコレステロール値が高い家族性高コレステロール血症は、単一遺伝子疾患のひとつです。

 これは、単一の遺伝子に生じた突然変異が主な原因となる疾患で、メンデルの法則によって遺伝します。単一遺伝子疾患は、種類は多いものの頻度はあまりありません。

 一方、メンデルの遺伝法則はみられないものの、何らかの遺伝要因が関与する多因子疾患の存在が明らかになってきました。高血圧糖尿病、がんなどの生活習慣病も、発症には複数の遺伝要因とさまざまな環境要因が関与します。

 単一遺伝子疾患は、異常遺伝子をもつことが発症の必須条件であることから原因遺伝子と呼ばれ、多因子疾患の発症関連遺伝子は発症の危険因子のひとつにすぎないことから、感受性遺伝子と呼ばれています。

 以上のように、生活習慣病は遺伝子、環境要因、生活習慣が関与し、その寄与率も疾患によってさまざまです。しかも相加的あるいは相乗的効果を及ぼしあう可能性があります。

家族歴の重要性

 同じ食事、運動をしていても、人によって肥満になる人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。この個人差は遺伝子によるものです。遺伝子の影響がより強い一卵性双生児では、二卵性双生児と比較して、肥満度、脂質、血糖値、血圧の発生頻度が高いことが明らかにされています。

 また、双生児ではない普通の人の高血圧を例にとると、両親ともに高血圧の場合は50~60%、どちらか一方の場合は約30%、両親ともに正常の場合は約20%の確率で高血圧が発症します。このように、高血圧の発症については50~60%は遺伝、40~50%は環境が要因であるとされ、遺伝的な要因のほうがやや確率が高いのです。

 つまり生活習慣病といえども、遺伝の影響が強いことが明らかにされたわけです。しかしこの一卵性双生児においても、食事療法を行うことで肥満が改善されることも証明されています。家族歴、つまり両親がどのような病気にかかったことがあるかを知ることで、事前にその病気にかかりやすいかどうかがわかります。

(執筆者:東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授 和田 高士)

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コラムメタボリックシンドローム

東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授 和田高士

 メタボリックシンドロームとは、食べすぎ、運動不足などの不健康な生活習慣を続けることで、腸のまわりに内臓脂肪が過剰に蓄積し、この内臓脂肪から悪玉生理活性物質(アディポサイトカイン)が多く分泌されたり、善玉の生理活性物質(アディポネクチン)が減少することにより、高血圧、脂質異常、高血糖が生じた状態をいいます。

 メタボリックシンドロームは、これまでの健診の考え方と根本的に異なります。これまでは、検査の数値の異常度で評価してきました。つまり中性脂肪は200mg/dLより400mg/dLのほうが重症という値の高低を問題としていました。メタボリックシンドロームでは、正常範囲(基準範囲)を超える項目がいくつ存在しているのかを問題とします。これまでは「軽度」(レベル1)の異常はいくつあっても、軽度の異常ということで重要視されていませんでした。しかし、それぞれが軽度の異常であっても3つ、たとえば腹囲、高血糖、高血圧と3つそろえば1+1+1となり、これが単独のレベル3の異常(重症)に匹敵することがわかってきたのです。

 肥満者が増加しています(図9図9 10年ごとにみる肥満者の推移(年齢別))。

図9 10年ごとにみる肥満者の推移(年齢別)

 美味しいものを食べ、動かずにテレビを見ながらごろごろしていたい。さらに自由時間も、趣味を楽しむ時間も減ってストレスが増える一方です。これらは複合的に影響して、内臓脂肪がたまって肥満となります。

 メタボリックシンドロームの該当者とは、内臓脂肪型肥満(腹囲が男性 85cm以上、女性90cm以上)に加え、高血糖、脂質異常、高血圧の3つのうち2つ以上を合併した状態で、予備群とは内臓脂肪型肥満に加えて3つのうち1つを合併した状態です(図10図10 メタボリックシンドロームの診断)。

図10 メタボリックシンドロームの診断

 メタボリックシンドロームの該当者・予備群は複数のリスクが重なることにより、心筋梗塞や脳卒中を発症する可能性が非常に高くなるとされています。メタボリックシンドロームは、運動量の不足や過食をはじめとする好ましくない生活習慣に原因があると考えられています。運動量の増加と食事の改善により、内臓脂肪を減少させてメタボリックシンドロームを改善し、心筋梗塞や脳卒中のリスクを軽減することが期待できます。

①運動と食事改善の併用が効果的

 内臓脂肪蓄積の指標となる腹囲の1cm減少は、約1kgの体重(大部分が脂肪)の減少に相当します。体重を1kg減少させるためには、運動によるエネルギー消費量の増加と食事改善によるエネルギー摂取量の減少を合わせて約7000kcalが必要です。たとえば1カ月かけて腹囲を1cm減少させるためには、1日当たり約230kcalが必要となります。

 巷にはさまざまな食事療法が紹介されていますが、米国の調査では、厳しいやり方では、5~6割程度の人しか1年間ダイエットを続けられませんでした。しかも血圧、血糖には効果がみられなかったという論文が発表されました。理論的な食事内容でも自分に合わないければ意味がなく、厳格な内容より、どれだけダイエットを続けられるかのほうが重要だという結論でした。

 一般に、運動のみで体重を減少させるのに比べ、食事改善と合わせて行ったほうが体重の減量がしやすく、内臓脂肪の減少量も大きくなります。そこで、運動に加えて「食事バランスガイド」など(図11図11 食事バランスガイド──あなたの食事は大丈夫?)を参考に食事の改善を行うことにより、内臓脂肪の減少量を大きくすることが可能となります。

図11 食事バランスガイド──あなたの食事は大丈夫?

②内臓脂肪減少のために必要な運動量

 内臓脂肪を確実に減少させるためには、現行の運動量に加えて、週に10エクササイズ程度かそれ以上の運動量が必要と考えられます(図13図13 1エクササイズに相当する活発な身体活動)。30分間の速歩を週5回行うと10エクササイズの運動量に相当します。食事摂取量を変えないまま週10エクササイズ程度の運動量を増加させることにより、1カ月で1~2%近くの内臓脂肪が減少することが期待されます。

図13 1エクササイズに相当する活発な身体活動

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