川崎病と冠動脈障害
かわさきびょうとかんどうみゃくしょうがい
- 小児科
- 診療に適した科
川崎病と冠動脈障害とは?
どんな病気か、原因は何か
川崎病(〔急性熱性〕皮膚粘膜リンパ節症候群)は4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の熱性発疹性疾患で、全身の中小動脈を侵す系統的血管炎と考えられています。
合併症には無菌性髄膜炎、消化器症状などがありますが、重要なのは冠動脈における動脈瘤(こぶ)の形成で、川崎病患者の5~10%程度に合併します。動脈瘤を合併した場合は、血栓性閉塞により心筋梗塞や突然死を起こすことがあります。心臓には冠動脈の炎症だけでなく弁膜症や心筋炎を起こすこともあります。
症状の現れ方、検査と診断
川崎病の急性期には特有の症状があり、本症の診断は臨床症状の組み合わせによって行われます。
厚生省(当時)川崎病研究班作成の川崎病診断の手引きでは、6つの主要な症状、すなわち、
①5日以上続く発熱(38~40℃)
②四肢末端の変化:〈急性期〉手足の硬性浮腫(むくみ)、手のひらないし指趾先端の紅斑、〈回復期〉指先からの膜様落屑(角層が小板状に皮膚表面からはがれ落ちること)
③不定形発疹
④両側眼球結膜の充血
⑤口唇、口腔所見:口唇の紅潮、イチゴ舌、口腔粘膜のびまん性発赤
⑥急性期の非化膿性頸部リンパ節腫脹
のうち、5症状以上が認められる場合、川崎病と診断します。ただし、4症状しかなくても冠動脈瘤が認められ、他の疾患が除外されれば川崎病と診断されます。
検査として本症に特異的なものはありませんが、白血球の増多、赤沈の亢進、CRPの著しい上昇がみられます。心電図、胸部X線、心エコー検査により心臓の合併症の有無を確認することも重要です。
心合併症の診断
急性期にはほとんどの症例が冠動脈に炎症を起こしており、炎症があるレベル以上になると動脈瘤が生じ、それ以下ではそのまま治っていくものと考えられています。
発熱後1週間~10日ころに冠動脈に変化が生じ、約半数に拡張所見が認められます。急性期後も動脈瘤が残る頻度は10%程度とされており、さらに残った動脈瘤の約半数は1~2年以内に正常にもどりますが、その後逆に内腔が狭くなったり、動脈瘤のなかに血栓が詰まって心筋梗塞を生じることもあります。
また、全体の約3%の症例では、冠動脈の炎症が治っても成人後に高脂血症などの冠危険因子が加わることにより、虚血性の心疾患へ発展することもあります。冠動脈瘤の診断には断層心エコー検査が利用されますが、異常が認められれば冠動脈造影検査が必要になります。
治療の方法
心臓に後遺症がない場合には、アスピリンを発病から2カ月間服用し、その後心エコー検査で冠動脈瘤がないことを確認して中止します。急性期からγ-グロブリン静注大量療法が行われるようになり、以前に比べて冠動脈瘤の合併が減ってきました。
また、冠動脈瘤が合併している場合にはアスピリンを継続投与し、瘤が大きいものにはワルファリンの併用も考慮し、重症例ではバイパス手術や経皮的冠動脈形成術が必要になることもあります。
病気に気づいたらどうする
前記のような症状に該当する場合には小児科を受診して、適切な治療を受けてください。
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