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遺伝しない脊髄小脳変性症
いでんしないせきずいしょうのうへんせいしょう

遺伝しない脊髄小脳変性症とは?

どんな病気か

 遺伝しない脊髄小脳変性症のなかには明らかな誘因をもたずに症状が進行していく変性疾患と、体外性の誘因をもつもの、体内性で中枢神経系以外の誘因をもつものとに分かれます。症状は遺伝性の脊髄小脳変性症と似ており、歩行時のふらつきや、話す時にろれつが回らなくなるような症状に加えて、手足が震えたり、足のつっぱりや眼の動きに制限があるといったように、さまざまな症状が複合して進行していく病気です。

 誘因をもたずに症状が進行していく変性疾患には、病巣が小脳、脳幹、脊髄、大脳にまで及ぶ多系統萎縮症と、小脳主体に病巣が限られる皮質性小脳萎縮症があります。多系統萎縮症では症状の進行は速く、症状も多様ですが、皮質性小脳萎縮症では進行はゆっくりで、運動失調以外の症状は少ない傾向にあります。

原因は何か

 多系統萎縮症や皮質性小脳萎縮症など誘因をもたない変性疾患では原因は不明ですが、体外性の誘因をもつものや体内性で中枢神経系以外の誘因をもつものには、原因が明らかなものもあります。体外性の誘因には飲酒や抗てんかん薬の副作用があり、体内性ではビタミンE不足やさまざまな代謝性疾患でも同様の症状を起こす時があります。

症状の現れ方

 多系統萎縮症や皮質性小脳萎縮症は歩行の障害から始まるといわれています。ただし、多系統萎縮症では症状が多様で歩行時のふらつきに加え、ろれつが回らない、めまい(小脳の症状)、手足の震え、ぴくつき、動作が遅くなる、うまく字が書けない、食事でむせる(パーキンソン病様の症状)、立ちくらみ、トイレに何回も行く、便秘(自律神経症状)などの症状が4~5年で急速に進行します。このため、転倒や誤嚥の危険があります。一方、皮質性小脳萎縮症では歩行時のふらつきが主体で、症状は徐々に進行します。

検査と診断

 経過や症状、のんでいる内服薬の種類、家族歴の有無、血液検査とMRIである程度の診断は予想されます。遺伝しないもののなかで誘因がないものについては症状の詳細が重要ですが、誘因があるものについてはその誘因が明らかであれば診断は容易です。

治療の方法

 誘因をもたない変性疾患は現在のところ、根本的な治療法はありません。誘因をもつものはその誘因を断つことにより、症状の改善が望めます。飲酒が原因であれば禁酒により、抗てんかん薬の副作用であれば薬物の中止により症状が改善する可能性があります。

病気に気づいたらどうする

 誘因をもつものについては治療して完全に回復する可能性があるので、この疾患を疑わせるような症状に気づいたら、ただちに神経内科で診察を受けて確実な診断を得ることが大切です。

遺伝しない脊髄小脳変性症と関連する症状・病気

(執筆者:横浜市立大学医学部脳卒中科准教授 児矢野 繁)

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コラム錐体路と錐体外路

藤沢市民病院神経内科医長 小山主夫

 錐体路とは随意運動に関与するもので、その経路は前頭葉の運動野から延髄の錐体交差で反対側に交差し、脊髄の前角に至るまでをいいます。この経路は、いうなれば運動の「オン・オフ」のはたらきをし、錐体路の障害では運動麻痺がみられます。

 一方、錐体外路とは大脳深部の基底核を中心とする複雑な経路で、運動や筋緊張を調整するはたらきをしています。錐体外路の障害では、筋緊張の異常や、さまざまな不随意運動がみられます。

コラム神経難病(特定疾患)

天竜病院神経内科 西山治子

 原因不明、治療方法が未確立で、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない病気、経過が慢性で、単に経済的な問題だけでなく、介護などに著しく人手を要するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担が大きい病気のことを難病といいます。

 このなかでも、診断基準が一応確立していて、しかも難治度や重症度が高く、患者数が比較的少ないために医療費の公費負担という手段をとらないと原因の究明、治療方法の開発などに困難を来すおそれのある病気を対象として、特定疾患治療研究事業が実施されています。

 この事業の対象になる病気を一般的に特定疾患と呼んでおり、特定疾患に該当する神経系の病気としては、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病など)、亜急性硬化性全脳炎、脊髄小脳変性症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、副腎白質ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ハンチントン病、もやもや病、スモンがあります。

 2009年10月から新たに脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、ミトコンドリア病なども追加されました。

 特定疾患に該当する場合には、それぞれの特定疾患の診断書を主治医に記入してもらい、保健所に申請する必要があります。

 特定疾患に認定されると医療保険による自己負担分が一部公費負担になりますし、さらに難病のために日常生活に著しい支障があると認定された重症患者さんや、スモン、プリオン病の患者さんは、医療費の自己負担分全額が公費負担になります。

 神経難病の方やその介護を行っている家族への支援としては、特定疾患治療研究事業以外にも、神経難病患者在宅支援事業、重症難病患者入院施設確保事業、難病相談・支援センター事業などがあり、少しでも負担が軽くなるような対策が行われています。

コラム遺伝子の検査

横浜市立大学医学部神経内科学 戸田宏幸

 遺伝とは何らかの素因が子孫に受け継がれることで、病気も遺伝する場合があります。家族に同じ病気の人がいる場合は、遺伝性の病気を考える必要があります。

 遺伝性の病気は、遺伝子の異常で発症します。遺伝子は細胞内のDNAという物質から成り立っており、これが子孫に伝わります。異常な遺伝子が子孫に伝われば、家族に同じ病気が発症することになりますが、子孫が発病する可能性は病気の種類や遺伝の形式(遺伝の伝わり方)によって異なります。

 遺伝性の病気で遺伝子に何が起こっているかは病気によってさまざまで、複雑です。遺伝性の脊髄小脳変性症では、DNAの塩基(A、G、C、Tの4種類)という部分の3つずつの反復が異常に増えたもの(CAGCAGCAG…など)が病気の原因になります。3つずつの反復という意味で、これらはトリプレット・リピート病とも呼ばれています。

 遺伝子検査では、患者さんの血液からDNAを取り出し、特殊な方法で異常の有無を確認しますが、それが従来知られている遺伝子の異常と同じであれば、その病気の可能性が強くなります。

 実際、患者さんに検査を受けてもらうかどうかは非常に難しい問題です。選択は患者さんの自由で、承諾をいただかないかぎり医師が検査をすることはありません。

 検査で遺伝性の病気と確認された場合、患者さんによっては"知らないほうがよかった"と感じることがあるかもしれません。患者さんには"知らなくてよい権利"、"知りたくない権利"というものがあります。家族の考えもあるでしょうが、家族に相談しにくい問題でもあります。

 一方、検査をして自分の病気を知りたいと考える人もいるでしょう。また子どもが同じ病気になる可能性がある場合、そのカップルには正しい情報を提供すべきです。

 いずれにしても主治医とよく相談し、慎重に検討してください。

遺伝しない脊髄小脳変性症に関する医師Q&A