出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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肝性脳症
かんせいのうしょう

もしかして... 肝硬変  せん妄  不随意運動

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肝性脳症とは?

どんな病気か

 肝臓は生体のなかで最大の代謝をつかさどる臓器です。肝臓が機能不全に陥るとさまざまな代謝産物が体内にたまることになり、神経有毒物質あるいは神経機能に必要な物質の欠乏により神経症状が現れます。

 肝性脳症は肝硬変などによる肝機能不全や、門脈の血液が肝臓に入らず、肝臓での処理を受けることなく大循環系に流入する短絡路(シャント)による門脈大循環性脳症(シャント脳症)、尿素を処理できずアンモニアが大量に生じてしまう尿素サイクル酵素欠損症などで起こります。症状は急性、間欠性(時々生じる)、あるいは慢性に発症します。

原因は何か

 病気の原因は不明な部分もありますが、2つの要因、すなわち肝不全因子とアンモニアが重要と考えられており、その組み合わせでさまざまな型の肝性脳症が起こると考えられています。アンモニアの毒性機序(仕組み)は確定していませんが、脳内の神経伝達障害や機能障害などが考えられています。またアミノ酸の量的、質的不均衡により、神経伝達の抑制が起こるとする説などがあります。

症状の現れ方

 神経症状としては、意識障害を中心としてさまざまな精神症状と運動系の症状が現れます。昏睡を起こす前の時期では多幸気分、異常行動、せん妄などを示し、見当識障害、言語障害も加わり、次第に昏睡になっていきます。また不随意運動、ミオクローヌス、固定姿勢保持困難、羽ばたき振戦など、さまざまの特異な運動障害がみられます。

検査と診断

 肝臓に基礎疾患があることが基本で、経過中に意識障害などの脳症が現れたら本症を疑います。高アンモニア血症を伴う肝機能障害および、全般性徐波(ゆっくりした波が脳全体から出る)で三相波(三相を示す脳波)を示す特徴的な脳波が診断に重要です。

治療の方法

 治療は、食事中の蛋白質制限、腸内窒素化合物を除去するためのラクツロース、アンモニア産生腸内細菌を抑えるための抗生剤、血漿アミノ酸の不均衡を是正するためのアミノレバンの投与など、専門的治療が必要です。

(執筆者:脳神経センター大田記念病院院長 栗山 勝)

脳症に関連する可能性がある薬

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