出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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筋性斜頸
きんせいしゃけい

もしかして... 骨盤位  逆子

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筋性斜頸とは?

どんな病気か

 筋性斜頸は、乳児に発生する先天性の奇形であり、全新生児の0・08~1・9%にみられ、骨盤位分娩(いわゆる逆子)、初産児、難産例に多いといわれています。頸部の前面を斜めに走る胸鎖乳突筋の一部が増殖するため、頸部の前の筋肉に腫瘤が発生します。通常、腫瘤は自然に小さくなって治癒していくのですが、一部が残存したり、筋肉の短縮が生じると筋性斜頸となります。そのため、子どもの頭部および顔面は悪いほうに傾き、よいほうに回旋することになります。

原因は何か

 前述のように胸鎖乳突筋の短縮が原因となります。これは分娩時の外傷により誘発されるといわれていますが、筋肉の短縮が残存するため、外傷と炎症の合併、胎内での圧迫、先天奇形などの諸説があります。

症状の現れ方

 新生児の時の顔の向き癖で指摘され、胸鎖乳突筋に腫瘤を確認されると筋性斜頸が指摘されます。このため、乳幼児までに診断がついていることが多く、成人以降に急に発症することはほとんどありません。頸部の側屈あるいは回旋制限によって気づくこともあります。

 右側に発症することが多く、顔は左側を向き、頭部は右側に傾き、右肩が左よりも挙上されている状態が典型的な症状です。

 これらの症状が学童期まで続くと、顔面の形状に左右非対称が現れることがあります。股関節の低形成や足の変形などの運動器の先天的異常を合併していることも多くあります。

検査と診断

 両手で胸鎖乳突筋の硬度を調べます。また、回旋制限や側屈に制限がないかを調べ、これらに制限がある場合は筋性斜頸と診断されます。超音波検査で確認する場合もあります。その他の斜頸(骨性斜頸)を除外診断するためにX線検査も行います。

治療の方法

 生後1年半までは、保存的に治療を行うのが通常です。具体的には、子どもの顔面が正面を向くように枕やタオルで工夫します。授乳や話しかけはできるだけ患側から行い、患側を向く時間が長くなるように工夫します。患部のマッサージ治療は効果がないとの報告があります。

 多くの場合は自然治癒しますが、そうでない場合は3~4歳で、胸鎖乳突筋の腱切り術といわれる手術を受けることが望ましいと報告されています。

病気に気づいたらどうする

 小児専門の整形外科医が勤務する病院を受診してください。通常は、大学病院あるいはそれに準ずる病院への受診をすすめます。

筋性斜頸と関連する症状・病気

(執筆者:大阪市立大学医学部附属病院整形外科病院講師 豊田 宏光)

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