出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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原田病
はらだびょう

  • 眼科
  • 診療に適した科

原田病とは?

どんな病気か

 日本では、ベーチェット病サルコイドーシスとともに、頻度の高いぶどう膜炎のひとつです。日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。色素細胞に対して免疫反応が起こることが原因と考えられ、眼だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎症候群とも呼ばれています。

原因は何か

 どうして色素細胞に対する免疫反応が起こるのかは、わかっていません。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球の血液型にあたる組織適合抗原(HLA)のなかの特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

症状の現れ方

 発熱、のどの痛みなどのかぜのような症状、耳鳴り難聴めまい、頭痛などが先に現れることもあります。時に頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。眼の症状としては、まぶしい、眼の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両眼に現れます。

検査と診断

 眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この網膜剥離は滲出性網膜剥離と呼ばれ、炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離とは違い、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

治療の方法

 発症早期におけるステロイド薬の大量点滴投与が有効と考えられています。

 ステロイド薬は大量に投与すると血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド薬を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。前部ぶどう膜炎を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド薬の点眼や、虹彩の癒着防止のための散瞳薬の点眼も行われます。

 多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力ももどってきます。回復後、眼底は色素脱失によりいわゆる"夕焼け状眼底"と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、眉毛などの一部が白くなることもあります。眼の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。

病気に気づいたらどうする

 治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めの眼科受診が必要です。

原田病と関連する症状・病気

(執筆者:宇治武田病院眼科部長 河本 知栄)

ぶどう膜炎に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、ぶどう膜炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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宇治武田病院眼科部長 河本知栄

 ぶどう膜とは虹彩、毛様体、脈絡膜の総称です。これらの組織は血管に富み、色素細胞が多く含まれていて、ブドウの皮の色のように見えることから、こう呼ばれます。図27図27 ぶどう膜炎が起こる部位のように虹彩、毛様体は前部、脈絡膜は後部に位置します。虹彩・毛様体の炎症と脈絡膜の炎症では症状の現れ方や治療法が異なるため、「前部ぶどう膜炎」「後部ぶどう膜炎」として区別して扱われます。両者は合併して起こることが多く、この場合は「汎ぶどう膜炎」と呼びます。

図27 ぶどう膜炎が起こる部位

 虹彩はいわゆる瞳であり、瞳孔の大きさを変化させて眼のなかに入る光の量を調節しています。虹彩毛様体炎では、その機能が低下して明るさの調節ができなくなったり、前房内に出た炎症細胞によって、まぶしく感じたり、白眼の部分が充血したりします。脈絡膜は網膜に近接しているため、網膜にも炎症が及びやすく、通常は網脈絡膜炎の形で現れます。網膜は視神経によって脳とつながっている大切な器官です。そのため、脈絡膜炎は治療の時期を逃すと、重大な視力障害を引き起こします。

 ぶどう膜炎には、細菌、真菌、ウイルスなどによる感染性のものと、免疫反応によるものとがあります。ぶどう膜は直接外部に接していないので、多くの場合、病原菌は他の組織から移行してきます。細菌や真菌では、近くの角膜や結膜から広がってくるものと、肺や肝臓などの遠くの臓器から移行してくるものがあります。頻度は低いのですが、寄生虫が眼底に流れてきてすみつくこともあります。

 免疫反応によって起こるものの多くは、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病などのような、全身症状を伴う病気のひとつの症状として現れます。感染症や外傷などがきっかけになって発症することが多いため、診断にあたっては発症までの経過も参考になります。たとえば、眼の症状が出る前にかぜ症状、疲労感、肩こりなどが現れることがあります。また、梅毒、結核、麻疹、水痘、風疹などにかかったことがないかどうかなどが、原因を探るポイントとなります。

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