出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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先天緑内障(牛眼)
せんてんりょくないしょう(ぎゅうがん)

  • 眼科
  • 診療に適した科

もしかして... 母斑症

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先天緑内障(牛眼)とは?

どんな病気か

 先天緑内障では胎生期における隅角の発達異常により、房水の流れる線維柱帯の機能が生まれつき低下しており、房水を排出する機能が悪くなります。その結果、著しい高眼圧となります。子どもでは眼の組織が軟らかいため、眼圧が高くなると眼球、とくに角膜が大きくなり、牛眼ともいわれます。全身先天異常の有無によって原発性と続発性に分類されます。

原因は何か

 ほかの眼組織の異常や全身の先天異常を伴わない場合は、原発先天緑内障といいます。頻度としては出産1万~1万2500人に1人といわれています。生後3カ月以内に診断されたものは90%が両眼性です。3カ月~3歳までの間に診断されたものでは60%が両眼性です。そのほか、眼球の先天発達異常を伴うものや、母斑症や代謝異常など全身の先天異常を伴う場合を続発先天緑内障といいます。

 眼球では角膜や虹彩の異常、全身的には歯の異常や顔面異常、皮膚の異常など多岐にわたる合併が多くみられます。遺伝性のものも多いですが、遺伝形式は病気によって異なります。

症状の現れ方

 乳児が光をいやがったり、涙が多かったり、まぶたのけいれんで気づくこともあります。3歳以下では眼圧が上昇すると角膜が大きくなります。3歳を超えると眼球が発達し、角膜の進展性がなくなっているため眼圧にも耐えることができ、角膜拡大はみられません。したがって、視力低下で見つけることが多く、発見が遅れ予後不良となりやすい傾向があります。片眼性の角膜拡大は発見しやすいのが特徴です。

検査と診断

 眼圧検査、隅角検査、視神経乳頭陥凹、角膜径などを検査し、診断します。乳幼児の検査では催眠が必要です。角膜径は新生児で11mm以上、1歳で12mm以上の場合は注意が必要です。

治療の方法

 診断が確定すれば、原則として手術療法が行われます。通常、全身麻酔をして、ゴニオトミーまたはトラベクロトミーという、房水の流れが悪くなっている隅角を切り開いて房水流出を改善する手術が行われます。

 予後は約8割で眼圧を正常にコントロールできますが、新生児や2歳以降の発症では予後が悪く、角膜径が14mm以上では予後不良とされています。

病気に気づいたらどうする

 赤ちゃんで目つきがおかしい、光をいやがる、涙が多いなどの症状ががみられたらすぐに眼科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

(執筆者:東京都健康長寿医療センター眼科副部長 本庄 恵)

緑内障に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、緑内障に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム緑内障のレーザー治療

東京都健康長寿医療センター眼科副部長 本庄恵

 レーザー治療は外来で施行でき、痛みが少なく、副作用がないのが特徴です。閉塞隅角緑内障ではレーザー虹彩切開術が治療の第一選択になります。開放隅角緑内障では、薬物治療で効果が十分でない時にレーザー線維柱帯形成術が検討されることになります。

 現在、緑内障の治療では閉塞隅角緑内障以外は基本的には薬物治療が第一選択です。薬物で眼圧コントロールが困難な場合に手術治療を選択するか、レーザー治療を選択するかは患者さんの年齢や緑内障の進行具合、緑内障の病型によって異なるので、主治医とよく相談したうえで治療方針を決めることが大切です。現在よく行われているレーザー治療としては以下のようなものがあります。

レーザー虹彩切開術

 虹彩に小さな孔をレーザーであけることにより、緑内障急性発作や閉塞隅角緑内障で隅角を通して房水が通過できなくなり眼圧が上昇している時に、房水をバイパスする経路をつくり、眼圧を下げる治療法です。

 急性、慢性の閉塞隅角緑内障、将来緑内障発作を起こす危険のあるような狭隅角眼、急性緑内障発作を起こした眼の反対眼がレーザー虹彩切開術の適応になります。局所麻酔下にて外来で施行可能です。術後、眼圧が一時的に上昇したり、炎症が出たりすることがあるので、多くは数日間の点眼治療が必要です。

 急性緑内障発作でも程度が強い場合は、角膜が白く濁ってしまいレーザーの施行が困難な場合があります。その時は手術により虹彩に切開を入れる虹彩切除術が必要です。

 レーザー虹彩切開術後も高い眼圧が継続する場合は、薬物治療や手術治療が必要になります。その場合の治療方針は開放隅角緑内障に準じます。

レーザー線維柱帯形成術

 レーザー光を房水の排出路である隅角・線維柱帯に当て、熱の作用で流出の抵抗を減少させて眼圧を下げる治療法です。60歳以上の高齢者で、初期~中期の原発開放隅角緑内障、水晶体嚢性緑内障がよい適応です。40歳以下の若年の患者さんでは無効であることが多いことが知られています。

 点眼治療で眼圧コントロールが困難な場合に行われることが多いのですが、長期的な効果は手術治療に劣るとされています。しかし、短期的には約8割の患者さんで数mmHgの眼圧下降を得ることができるため、場合によっては有効な治療法となります。術後に眼圧が上昇したり、炎症が起きるなどの合併症があり、術後はきちんと眼科受診することが大切です。

レーザー毛様体凝固術

 眼球のなかで房水を産生する部位である毛様体をレーザーで凝固破壊することにより房水の産生を抑え、眼圧を下げる治療法です。薬物治療や手術療法によっても眼圧コントロールが不良な難治性の患者さんに用いられる最終的な手段です。術後は炎症を抑える治療が必要になります。

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