出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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遠視
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遠視とは?

どんな病気か

 眼に入ってきた光は角膜・水晶体を通過し、網膜に到達します。正視ではちょうど網膜上でピントが合っていますが、遠視では眼の奥行きの長さ(眼軸)が短いことが多いため、網膜よりも後ろにピントが合う状態になります(図72図72 遠視)。

図72 遠視

 遠視は「遠くが見えるよい眼」と勘違いされがちですが、眼の屈折状態としては、本当は遠くにも近くにもピントが合っていません。しかし、眼には水晶体というレンズのはたらきをする部分の厚みを増して像の結ばれる位置をずらす「調節」という機能があるので、若い頃は遠くも近くも見ることができます(図73図73 ピントの調節)。

図73 ピントの調節

 ただ、「調節」の機能は年齢とともに衰えてくるため、徐々にピントを合わせることができなくなり、より「調節」を要する近くから見えにくくなっていきます。遠視の人は正視の人や近視の人よりも多くの調節力がいるので、「若いころは眼がよかったから、早く老眼になった」とよくいわれているのはこのためです。

 遠視のおおよその頻度は、新生児100%、幼児60~70%、小学生50%、中学生20%、高校生15%で漸次減少します。老人では水晶体の加齢変化により、再び遠視化したり、近視化することもあります。

症状の現れ方

 遠視では、見る時に絶えず「調節」をしなければいけないため、①眼が疲れやすい(眼精疲労)、②頭痛・眼痛、③集中力に欠ける、といった症状が出ます。小児の場合、調節をする時に眼が寄る作用が強く出るため内斜視になります(調節性内斜視)。

 最も注意が必要な遠視は小児の強度遠視です。遠視が強度になると調節をしてもピントが合いにくいため視力が発達せず、放置すると弱視になってしまいます。

治療の方法

 遠視の治療としては、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正を行います。とくに事務やコンピュータなど長時間の近見作業に従事する人は調節による眼精疲労を起こしやすいため、年齢にかかわらず近見作業用の眼鏡の装用が、症状の軽減に役立ちます。

 調節性内斜視の小児は、適切な眼鏡の装用により内斜視を治療することができます。また、弱視になる可能性がある強度遠視の小児でも、早期から適切な眼鏡の装用によってピントの合った像を見せることで、視力の発達を促すことができます。

(執筆者:伊丹中央眼科院長 二宮 さゆり)

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コラムコンタクトレンズ||そのメリットと注意点

大阪大学大学院視覚情報制御学寄附講座教授 前田直之

 コンタクトレンズは、近視や乱視などの屈折異常で視力が低下した時に、黒目(角膜)の表面に接触(コンタクト)させて使用するレンズです。

 コンタクトレンズは、眼鏡に比較していろいろな長所があります。たとえば、近視が強くなると、眼鏡では物が実際より遠くに小さく見えてしまいますが、コンタクトレンズでは距離感も大きさもほとんど変化がありません。視野は広いですし、スポーツなどでも支障がありません。乱視が強い場合は、ハードコンタクトレンズを使用するとよいでしょう。

 以前は限られた人が限られた時間使用するものでしたが、素材や製造技術の発達により、装用感がよく、手入れが簡単で、より安全、より安価なコンタクトレンズが続々登場し、今では、日本だけでおよそ1500万人が使用しています。

 このように、大変便利なコンタクトレンズですが、角膜に直接接触しているので、眼に障害が生じる可能性が高くなります。昔は、コンタクトレンズによって角膜が酸素不足になって、長時間使用すると角膜に障害が発生するというトラブルが多かったのですが、最近のコンタクトレンズでは、めったになくなりました。むしろ、コンタクトレンズの手入れが不十分で、こびりついた汚れがもとでアレルギー性結膜炎になったり、不潔なコンタクトレンズによって細菌やアメーバの感染症が角膜に生じるなどのトラブルが目立つようになってきています。

 このようなことを避けるには、多少高価ですが、毎日交換のレンズ、酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズかハードコンタクトレンズを使用するのが一番です。また、ケースに保存するコンタクトレンズを使用する場合は、油断せずに、日ごろから毎日保存液を交換し、レンズをきれいにこすり洗いして清潔にしておくこと、井戸水や水道水を使用しないことが重要です。

 なお、使用中に眼に異常を感じたら、すぐにコンタクトレンズの使用を中止し、それでも異常が続くようなら眼科を受診してください。

 コンタクトレンズは大変便利なのですが、あくまでも医療用具です。使い方を誤るととんでもないことになりかねません。使用上の注意をよく守り、定期的に眼科専門医による眼のチェックを受ける必要があります。

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