出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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乳歯のむし歯(う蝕)
にゅうしのむしば(うしょく)

もしかして... むし歯

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乳歯のむし歯(う蝕)とは?

 乳歯のむし歯は、永久歯のむし歯と比べてかなり異なった病態となります。すなわち、むし歯が多発しやすいこと、急速に進行すること、歯の痛みがほとんどなく進行すること、活発な防御機転がはたらきやすいこと、などです。

 乳歯がむし歯になりやすい理由として、次のようなことが考えられます。小児では歯の清掃が成人よりも十分に行われにくいこと、砂糖類の甘い食物の摂取量が多くなりがちなこと、粘着性の高い食物を摂取しやすいこと、永久歯に比べて乳歯の歯質は酸に対する抵抗性が弱いこと、などです。

 乳歯のむし歯の診断は主に視診で行われますが、必要に応じてX線写真を撮影します。これには生え変わる永久歯の成長状態を観察する目的も含まれます。

 乳歯のむし歯の治療は、多発性と進行速度、むし歯の罹患型および患児の年齢などを考慮して行いますが、むし歯になりやすい状態の場合と比較的なりにくい状態とを区別して治療計画がたてられます。治療は一般に永久歯にほぼ準じますが、抜歯して永久歯が生えてくるまでそのスペースを確保する処置(保隙処置)は、乳歯治療に独特のものです。

(執筆者:東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授 荒木 孝二)

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コラム歯科治療恐怖症

東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授 荒木孝二

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 薬で恐怖心を和らげるやり方には、笑気吸入鎮静法と静脈内鎮静法があります。笑気吸入鎮静法では、治療中に笑気というガスを吸うことにより気持ちが楽になり、歯科治療に対する不安感、恐怖心を解消し、痛みも感じにくくなります。静脈内鎮静法は文字どおり静脈内に鎮静薬を投与する方法ですが、笑気吸入鎮静法よりもさらに確実な効果が得られます。心理的アプローチで歯科治療恐怖症を克服する方法としては、系統的脱感作療法があります。

 歯科治療を受けたいけれども、怖いためにいつも先延ばしにしてしまうという人は、一度こうした方法について歯科医師と相談されてはいかがでしょうか。