急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎
きゅうせいえしせいかいようせいしにくえん・ししゅうえん
- 歯科
- 診療に適した科
急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎とは?
どんな病気か
従来は最初の報告者の名前をとって、ワンサン潰瘍性歯肉炎や口内炎ともいわれていました。しかし、急激に発症し、歯肉の壊死、潰瘍の形成、偽膜の形成、疼痛および強い口臭などを特徴とすることから、急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎と呼ばれるようになりました。
すでに歯肉炎にかかっていた人にこの病気が合併すると急性壊死性潰瘍性歯肉炎と、歯周炎に合併すると急性壊死性潰瘍性歯周炎といわれます。これらは口のなか全体に起こる広範型と、数歯に起こる限局型に分けられます(図43)。
原因は何か
原因はよくわかっていませんが、プラーク、ストレス、喫煙、栄養障害などが考えられています。
症状の現れ方
急激に歯と歯の間の歯肉(歯間乳頭)に痛みが出て、赤くはれ、1~2日で歯間乳頭は破壊され死んでしまい(壊死)、潰瘍が形成されます。
潰瘍部は、白血球、赤血球、フィブリン、壊死組織片、細菌塊などからなる灰白色の偽膜でおおわれます。偽膜ははがれやすく、取れてしまうと潰瘍部が露出するため、血が出やすく、食べ物や歯ブラシなどが当たることで痛みも現れます。
通常、歯間乳頭と歯の縁の歯肉に病変は限られ、歯間乳頭がクレーター状に陥没するので、歯と歯の間にすきまができます。軽症の場合は4~5日で治りますが、重症になると病変は歯槽粘膜、扁桃など周囲組織に波及し、発熱、頭痛、倦怠感、所属リンパ節の腫脹などが現れることもあります。
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コラムHIV感染と歯科治療
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)の原因です。このウイルスに感染すると、体を守る免疫系細胞であるヘルパーT細胞やリンパ球の一種であるCD4陽性細胞が感染して、免疫機能が障害されたり破壊が起こり、その結果、免疫不全が生じます。
その初期症状は、かぜに似ていることもありますが、無症状に経過することも少なくありません。口のなかには、真菌であるカンジダによる感染が起こります。舌や頬の粘膜に白い苔のような病変が生じます。また、歯肉には壊死と潰瘍が起こり、疼痛、自然出血、浮腫などが生じます。症状は、急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎と極めて類似しているので、鑑別診断が不可欠となります。
その後、発熱、体重減少、持続性の下痢などの症状(エイズ関連症候群)が現れます。病変が進行すると、カリニ肺炎、カポジ肉腫、悪性リンパ腫などが現れ、患者さんの多くは予後不良です。