出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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エプーリス
えぷーりす

もしかして... 金属冠

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エプーリスとは?

どんな病気か

 歯肉にみられる良性の限局性腫瘤をエプーリスといい、歯肉腫と呼ぶこともあります。エプーリスの大部分は炎症性および反応性の腫瘤ですが、腫瘍性のものもあります。

 炎症性エプーリスには、肉芽腫性エプーリス、線維性エプーリス、血管腫性エプーリス、巨細胞性エプーリス、骨形成性エプーリスなどがあります。腫瘍性エプーリスには、線維腫性エプーリス、骨形成性エプーリスがあり、そのほかに、特殊型として先天性エプーリスなどがあります。

原因は何か

 エプーリスは歯肉、歯槽骨、歯槽骨膜、歯根膜などから発育してきます。誘因としては、合っていない金属冠などの機械的刺激や、歯石などの炎症性刺激、ならびに卵胞ホルモンや黄体ホルモンなどの内分泌異常が関係すると考えられています。

症状の現れ方

 一般的に歯間部歯肉に腫瘤がみられ、接触痛や出血があります。20~30代の女性に多発し、妊婦にみられる妊娠性エプーリスもあります。

 エプーリスの形は、有茎性、半球状、結節状、分葉状とさまざまで、表面は平滑です。色調や硬さは種類によって異なり、発育はゆっくりで、腫瘤が大きくなるにつれ、歯が傾いたり、離れて開いたり、動くこともあります。

治療の方法

 歯肉や歯槽骨の一部を、骨膜とともにすべて外科的に切り取ります。原因除去のために、歯を抜くこともあります。また、妊娠性エプーリスについては、分娩後に小さくなったり、消えることもあるため、経過観察することも必要です。

(執筆者:日本大学歯学部歯周病学教授 伊藤 公一)

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日本大学歯学部歯周病学教授 伊藤公一

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)の原因です。このウイルスに感染すると、体を守る免疫系細胞であるヘルパーT細胞やリンパ球の一種であるCD4陽性細胞が感染して、免疫機能が障害されたり破壊が起こり、その結果、免疫不全が生じます。

 その初期症状は、かぜに似ていることもありますが、無症状に経過することも少なくありません。口のなかには、真菌であるカンジダによる感染が起こります。舌や頬の粘膜に白い苔のような病変が生じます。また、歯肉には壊死と潰瘍が起こり、疼痛、自然出血、浮腫などが生じます。症状は、急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎と極めて類似しているので、鑑別診断が不可欠となります。

 その後、発熱、体重減少、持続性の下痢などの症状(エイズ関連症候群)が現れます。病変が進行すると、カリニ肺炎、カポジ肉腫、悪性リンパ腫などが現れ、患者さんの多くは予後不良です。

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