出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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咽喉頭異常感症
いんこうとういじょうかんしょう

咽喉頭異常感症とは?

どんな病気か

 のどに異常感を感じても、耳鼻咽喉科の診察では訴えに見合う病変が咽頭や喉頭に認められない病態を総称した病気です。

原因は何か

 咽頭に異常感を感じさせる疾患(原因)は数多くありますが、主に3つに大別できます。それは①局所的原因、②全身的原因、③精神的原因です。

 ①局所的原因にはのどや鼻・副鼻腔、喉頭、咽頭、食道・胃、気管・気管支などの軽い炎症性疾患、およびアレルギー性鼻炎を代表とする鼻や喉頭・気管の過敏症、また甲状腺疾患、咽頭・喉頭・口腔の早期がんや良性腫瘍など腫瘍性病変、さらに形態異常による舌根肥大症、茎状突起過長症、頸椎の変形などがあります。近年、逆流性食道炎の関与が注目されています。

 ②全身的原因となる疾患としては自律神経失調症、内分泌異常、更年期障害鉄欠乏性貧血嚥下障害などいろいろな疾患があります。

 ③精神的原因としてはうつ病、仮面うつ病、心身症、神経症、がん不安などがあげられます。

症状の現れ方

 多くはのどに何かがつかえる感じを訴えます。嚥下運動を行った時で、唾などを飲み込んだ時がほとんどです。しかし、食事や水などの液体を飲んだ時にはその症状を感じません。

検査と診断

 原因・要因はさまざまなため、すべての検査を行うことはできません。耳鼻咽喉科的診察と鼻腔・喉頭のファイバースコープ(内視鏡)検査、頸部の触診などを行います。疑われる原因を選別してから血液検査、CTなどの画像検査、食道・胃ファイバースコープ(内視鏡)検査、心理テストなどを追加して行います。

治療の方法

 原因疾患が明らかになれば、治療を行います。原因疾患が見つからない時には経過観察や精神安定剤の投与をします。

病気に気づいたらどうする

 症状が続き、心配していても改善しない時は、耳鼻咽喉科を受診して、異常のないことを確認してもらうと早くよくなります。

(執筆者:東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教授 加藤 孝邦)

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 小児の食道異物では最も多いものです。摘出は容易なことが多いのですが、まれに2枚以上の硬貨がひっかかっていることがあります。硬貨を数枚飲んだ可能性のある場合には、必ず医師に伝えておくべきでしょう。

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咽喉頭異常感症に関する医師Q&A