出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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深頸部膿瘍
しんけいぶのうよう

もしかして... 糖尿病  嚥下障害  歯周炎  う蝕  むし歯

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深頸部膿瘍とは?

どんな病気か

 頸部深部に膿瘍を形成する疾患で、頸部が赤くはれて痛みを伴います。原因となる感染が先行しますが、はっきりしないこともあります。糖尿病などをもっている場合は重症となりやすく呼吸困難や嚥下障害を生じることがあります。また炎症が縦隔に及ぶと重篤な状態となります。

原因は何か

 歯の炎症が原因となることが多く、歯周炎う蝕むし歯)からの歯根膜炎歯髄炎などから起こります。また咽頭炎扁桃周囲炎扁桃周囲膿瘍、顎下腺炎、異物などが原因となることもあります。

症状の現れ方

 先行する歯の炎症や咽頭炎のため、口腔内、咽頭に痛みがあり、そのあとに頸部の腫脹や発熱が出現します。頸部の腫脹、熱感、発赤などとともに、咽頭痛や嚥下痛があります。開口障害、嚥下困難、呼吸困難感などが出ると重症です。

検査と診断

 頸部の触診のみでは過小評価してしまうのでCT検査が必要です。できれば造影剤検査を行うと、切開術に重要な情報が得られます。CTにより膿瘍形成の有無、炎症の範囲、重要臓器への広がりなどを見ます。口腔、咽頭の診察で原因病巣をさがします。喉頭の浮腫の有無などは内視鏡で観察します。採血で白血球数やCRPなどから炎症の程度を調べます。

治療の方法

 治療の基本は抗生剤の点滴治療と、外科的に切開してうみを出すことです。軽度の場合は膿瘍に注射針を刺してうみを吸い取り、あとは抗生剤でよくなります。膿瘍が形成され首のはれが著しい場合は、切開排膿して数カ所にうみを出すためのドレーンを入れ、洗浄します。

 並行して抗生剤の点滴治療を行います。頸部の炎症が強く、喉頭に浮腫が認められる時は呼吸困難を生じるので、気管切開を行う必要があります。

病気に気づいたらどうする

 頸部がはれて赤くなり痛みがあるようなら、すぐに病院を受診することが必要です。その前に歯の痛みや歯ぐきのはれなどは早めに治療しておくことが大切です。

(執筆者:東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教授 加藤 孝邦)

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