出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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特発性食道破裂
とくはつせいしょくどうはれつ

特発性食道破裂とは?

どんな病気か

 特発性食道破裂はブールハヴィー症候群とも呼ばれ、主に飲酒後の嘔吐により食道内圧が上昇して、とくに病的変化のない正常の食道が破裂するものです。

 下部食道の左側が破れることが多く、時に中部食道の右側が破れることもあります。現在でも死亡する危険性が高い疾患です。

原因は何か

 嘔吐反射が起きた時、こらえようとしたために食道内に嘔吐物が充満し、その瞬間的な内圧の上昇に耐え切れなくなって食道壁が破裂するものです。嘔吐の原因はいろいろありますが、大部分は飲酒後によるものです。

症状の現れ方

 嘔吐反射直後、突然バットで殴られたような胸痛が発生します。上腹部痛であることもあります。その後、引き続き胸が苦しくなる胸内苦悶や呼吸困難、冷汗が出て、顔色が青くなりショック状態となります。苦しさはいつまでたってもよくなりません。時には首のまわりがはれて、押すとプチプチという感じがすることもあります。

検査と診断

 胸部単純X線写真(図14図14 特発性食道破裂の胸部単純X線像)で気胸や、胸腔に食物残渣や水分が貯留しているのが認められます。また、縦隔気腫皮下気腫が認められることもあります。

図14 特発性食道破裂の胸部単純X線像

 しかし、発症から早期のものや、胸腔内まで破れておらず、食道破裂が縦隔内にとどまっているものでは、はっきりした所見が認められず、横隔膜の線や心陰影がぼやけるだけのものもあります。CT検査を行うと縦隔気腫皮下気腫、気水胸が明瞭に描き出されます。

 水溶性造影剤を用いて食道造影を行うと、食道が破れているところから造影剤が食道外へ漏れ出るので、確定診断がつきます。

治療の方法

 ただちに手術を行って胸腔内や縦隔をよく洗浄し、破裂した食道壁を2層に縫合して十分なドレナージ(ドレーンチューブを留置する)を行うことが必要です。

 縦隔内にとどまり、胸腔内穿破に至らないもののなかには、手術せずに保存的な治療で治るものもあります。これらでも胸腔ドレーンの留置は必要です。

病気に気づいたらどうする

 飲酒後の嘔吐に引き続いて強烈な胸痛を自覚したら、"食道が破れたかもしれない"と訴えて大きな病院をただちに受診することが大切です。なかなか診断が難しく、治療も難しく、また死亡する危険性も高いからです。

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(執筆者:東海大学理事・同大医学部付属病院本部長 幕内 博康)

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