出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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家族性大腸腺腫症
かぞくせいだいちょうせんしゅしょう

家族性大腸腺腫症とは?

どんな病気か

 大腸全体に多数(通常100個以上)の腺腫が発生し、放置すると大腸がんを高率に合併する遺伝性の病気です。

 従来、この病気は大腸のみに起こると考えられていたため家族性大腸ポリポーシスと呼ばれ、体表部に骨腫や軟部腫瘍を合併するガードナー症候群とは別の病気とされてきました。しかし、近年、両方の病気は同じ遺伝子の異常で起こることがわかり、同一のものと考えられるようになりました。

 この病気は胃、十二指腸、小腸、骨、軟部組織、眼などの大腸以外の全身の臓器に、ポリープあるいは腫瘍状病変を高率に合併することがわかっています。

原因は何か

 5番目の染色体にあるAPC遺伝子の異常が原因で起こり、優性遺伝します。しかし、最近、この病気の一部はAPC遺伝子以外の遺伝子異常によって起こりうることが報告されています。

症状の現れ方

 血便、下痢、腹痛などの消化器症状のほかに、体表部に骨腫や軟部腫瘍(表皮嚢胞、線維腫など)が現れます。

検査と診断

 大腸のX線検査(注腸造影)、内視鏡検査および鉗子生検(組織をとって調べる)によって多数の腺腫が確認されれば、この病気と診断されます(図22図22 家族性大腸腺腫症(大腸内視鏡像))。できれば遺伝子検査まで行って、APC遺伝子の異常を確認しておくと、治療法の選択や家系員の早期診断に役立ちます。

 この病気と診断されれば、胃・十二指腸のX線および内視鏡検査、骨X線検査、眼底検査などを行い、大腸以外の病変をチェックしておく必要があります。

治療の方法

 診断確定後は、大腸がん合併の有無を問わず大腸切除術(結腸全摘・回腸直腸吻合または機能温存的大腸全摘)を行います。家系調査によって無症状で発見された場合、大腸の予防的手術は遅くても20代前半までに行うべきとされています。

 一方、大腸以外の腫瘍状病変に対しては、がん化の危険性は極めて低いので、予防的手術の必要はありません。

病気に気づいたらどうする

 血便などの症状があれば消化器内科を受診してください。また、近親者がこの病気と診断されれば、無症状でも大腸の検査を受けるべきです。

家族性大腸腺腫症と関連する症状・病気

(執筆者:公立学校共済組合九州中央病院病院長 飯田 三雄)

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