出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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慢性下痢
まんせいげり

慢性下痢とは?

どんな病気か

 1日に消化管に入ってくる水分の量は、経口摂取と分泌される消化液で約10Lです。そのほとんどが小腸で吸収され、糞便としては約0・1~0・2L排泄されます。腸管に流入する単位時間あたりの水分量(大腸の1日あたりの最大水分吸収能は5~6L)が、その吸収能力を超えると下痢になります。

 下痢とは、便の水分量が増えて、液状から泥状またはそれに近い状態になったものとされ、慢性下痢の人は約3%とされています。症状が3週間以上続く時には慢性下痢といわれます。下痢は、その病態生理から、浸透圧性下痢、分泌性下痢、腸管粘膜障害による下痢、腸管運動異常による下痢に分類されます。

原因は何か

 浸透圧性下痢は、腸管に吸収されない食べ物や薬剤により浸透圧が上昇し、水分と電解質が腸管内に移行することによって起こります。分泌性下痢は、細菌の毒素やウイルス、胆汁酸や脂肪酸、ホルモンなどによる腸管からの水分の分泌亢進により起こります。

 腸管粘膜障害による下痢は、炎症性腸疾患や細菌などにより腸管から滲出液や血液が排出されることによって起こります。

 腸管運動異常による下痢は、腸管運動の亢進や低下によって起こります。

 最近では、機能性疾患である過敏性腸症候群が注目されています。その病態は器質的疾患を伴わず、腹痛・腹部不快感と便通異常(下痢、便秘)を主体とし、それらの消化器症状が長期間持続もしくは悪化・改善を繰り返す疾患です。

 下痢の原因による分類では、小腸や大腸の器質的な異常(潰瘍性大腸炎クローン病腸結核などの感染症、寄生虫、吸収障害、大腸がん、消化管の術後、先天性疾患など)だけではなく、他臓器や内分泌疾患(膵臓疾患、甲状腺機能亢進症、カルチノイド症候群など)、過敏性腸症候群、薬剤性(抗生剤、利尿薬、強心薬、抗不整脈薬、自律神経薬、抗がん薬など)や放射線性などざまざまです。

症状の現れ方

 水分(電解質)が必要以上に体外に排出された状態なので、その程度に応じた脱水状態になっています。下痢の原因にもよりますが、貧血、発熱、腹痛、体重の減少などを伴うこともあります。

検査と診断

 貧血や炎症の有無を調べるための血液検査、潜血反応や細菌・虫卵検査のための糞便検査、大腸の器質的な異常を調べるための大腸内視鏡検査や大腸X線検査が必要です。

治療の方法

 対症療法として、下痢の程度に応じて水分・電解質の補給を行いますが、下痢の原因疾患はさまざまであり、下痢を引き起こした原因疾患の治療が重要です。

 成人男性の過敏性大腸症候群の下痢型に対しては、大腸痛覚伝達を抑制し、腹痛及び内臓知覚過敏を改善するラモセトロン塩酸塩(イリボー)が発売されています。

(執筆者:佐賀大学医学部内科講師 坂田 祐之)

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下痢症に関連する可能性がある薬

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