出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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肛門痛
こうもんつう

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肛門痛とは?

どんな病気か

 肛門周辺に発生する痛みのことです。これには原因の明らかな症候性肛門痛と、原因のわからない無症候性肛門痛とがあります。実は原因のはっきりしない、心因的なものがいちばん対応が厄介なのです。

 肛門痛にはチクチク、ズキズキ、ジーンとした性質のものがあります。一方、骨盤・直腸痛はズーンとした鈍痛、ボールがはまり込んだ感じ、神経痛のような発作性の痛み、いつも便意を感じる不快感などがあります。そして、排便によって変化する、長く座っていると出現、夕方または夜間に出てくるなど、日内変動もあります。

原因は何か

 症候性肛門痛の原因には、表3表3 肛門痛のように一般的な肛門の病気から、直腸、泌尿生殖器、仙骨・筋肉・靭帯などの骨盤内臓器の病気や腰椎・脊髄の病気、そして外傷などがあります。

表3 肛門痛

 無症候性肛門痛の代表的なものとして、消散性直腸肛門痛、肛門挙筋症候群、仙骨・陰部神経痛があります。

症状の現れ方

 消散性直腸肛門痛とは、夜間から早朝にかけて、突然、直腸肛門部に激痛が走り、30分から1時間の七転八倒の苦しみのあと、朝になると何ごともなかったように治ってしまう痛みです。この時、無性に便を出したい感じがするのが特徴です。しかし、精密検査をしても、何の所見もありません。

 肛門挙筋症候群は、立ったり座ったりする時に、尾骨から骨盤底にかけて強い痛みが出るもので、肛門挙筋のけいれんや筋肉の肥厚が原因と思われます。

 仙骨・陰部神経痛の原因は不明です。しかし、陰部神経に沿った圧痛がある、以前に高所から落ちたとか、尻餅をついた、最近背骨が曲がってきたなど、脊柱の変化との因果関係を推測させることがあります。

 そのほか、心因的なもの、全身の病気の部分現象として、神経梅毒、スモン病、脊髄腔造影、過敏性直腸、帯状疱疹後疼痛や加齢による循環障害など多数の要因があります。

治療の方法

 症候性肛門痛では、原因となる病気を治療することが先決です。無症候性肛門痛では、食生活の改善、運動不足の解消、ストレス解消、うつ病認知症対策など、生活環境を変えることがまずすすめられます。

 次いで鎮痛薬などの内服、座薬をはじめ、鎮痛薬や副腎皮質ホルモン剤を加えた注射で、仙骨・陰部神経ブロックを行うことが有効になります。さらに、精神安定薬や抗うつ薬の内服などが効果的なことがあります。

 外科的には、肛門挙筋の一部を切離して、筋肉のけいれんをとることも行われています。

(執筆者:特定医療法人社団松愛会松田病院理事長・院長 松田 保秀)

肛門部痛に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、肛門部痛に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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