出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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敗血症
はいけつしょう

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敗血症とは?

どんな感染症か

 敗血症とは、肺炎腎盂腎炎など生体のある部分で感染症を起こしている場所から血液中に病原体が入り込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群です。

 背景として悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、肝・腎疾患、膠原病といった基礎疾患がある場合、あるいは未熟児、高齢者、手術後といった状態である場合が多いとされています。

 抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対する防御能が低下している人も、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。

 血液中に病原体が入り込む原因の感染巣としては、腎盂腎炎といった尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症のほか、胆嚢炎胆管炎腹膜炎褥瘡感染などがあります。

 また、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に病原微生物が侵入する、カテーテル関連敗血症も近年増加しています。

症状の現れ方

 悪感・戦慄(ふるえ)を伴う発熱が最も主要な兆候ですが、重症の場合には逆に低体温になることもあります。心拍数や呼吸数の増加もみられ、血圧低下、意識障害を起こしショック状態となる場合もあります(敗血症性ショック)。

 また、重要臓器が障害されると呼吸不全腎不全・肝不全といった、いわゆる多臓器障害症候群(MODS)を併発することもあります。糖尿病がある人や高齢者は自覚症状が乏しいこともあるので注意が必要です。

検査と診断

 検査では白血球数の増加やCRP上昇などの一般的な炎症反応の増加が認められます。白血球数は逆に低下することもあります。そのほか、障害を受けた臓器によって、肝機能障害や腎機能障害も認められます。血液の凝固能が低下している場合もあり、この時は播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発していると考えられます。

 発熱時の血液培養による原因菌の検索も重要です。

治療の方法

 強力な抗菌薬投与とともに、さまざまな支持療法が不可欠です。昇圧剤、補液、酸素投与などのほか、呼吸不全・肝不全・腎不全に対しては人工呼吸管理、持続的血液濾過透析や血漿交換などが必要になる場合もあります。

 DICを併発した場合には、蛋白分解酵素阻害薬やヘパリンを使用します。短期間の副腎皮質ホルモン薬が併用されることもあります。

 近年ではグラム陰性桿菌による敗血症において重要な役割を担うエンドトキシン(細菌毒)を吸着する方法など、新しい治療法が試みられています。

 敗血症は近年の抗菌薬の進歩によって治療成績が改善しましたが、治療が遅れたり合併症の程度によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。

 早期の診断と適切な抗菌薬の使用、各種合併症に対する支持療法が重要です。

(執筆者:東京慈恵会医科大学感染制御部 加藤 哲朗)

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コラム不明熱

東京慈恵会医科大学感染制御部 加藤哲朗

 不明熱とは、古典的には38・3℃以上の発熱が3週間以上続き、1週間の入院検査でも診断がつかないものと定義されています。しかし、実際には原因疾患の特定が困難な高熱疾患の意味合いで使用されていることもあります。

 不明熱の主な原因としては、感染症、悪性腫瘍、膠原病およびその類縁疾患の3つがあげられます。感染症では、粟粒結核や肺外結核などの結核菌感染症、感染性心内膜炎、EBウイルスやサイトメガロウイルス感染症、そして肝臓や骨盤内の膿瘍などが重要です。また近年HIV感染症が不明熱の原因として発見されることもあります。悪性腫瘍では、ホジキン病を含む悪性リンパ腫のほか、腎細胞がん、大腸がん、肝細胞がんなどが不明熱の原因となることがあります。膠原病のなかでは成人型スティル病、血管炎症候群などがあります。そのほか、クローン病などの炎症性腸疾患、サルコイドーシスなどの肉芽種性疾患、薬剤熱、血腫、内分泌疾患などが原因となることがあります。

 不明熱の原因検索には、一般的な病歴聴取に加えて生活歴や旅行歴、薬剤内服歴などの詳細な問診のほか、ていねいな診察と画像検査や血清検査を含む臨床検査が重要になります。

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