出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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急性アルコール中毒
きゅうせいあるこーるちゅうどく

  • 内科
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急性アルコール中毒とは?

どんな病気か

 急性アルコール中毒とは、アルコール飲料としてエタノールを短時間に多量に摂取したために通常の酔った状態を超えて、運動失調や意識障害、さらには昏睡、呼吸抑制、血圧低下といった状態が生じることです。重症の場合には死亡することも多く、決して軽視できません。

原因は何か

 普段酒に強いと思っている人でも、たとえば日本酒1升やウイスキーボトル1本を30分以内で飲むといった短時間での多量摂取は、しばしば昏睡や死亡につながります。その半分の量やスピードでも、急性アルコール中毒は起こります。

 摂取されたエタノールは、アルコール脱水素酵素などによりアセトアルデヒドに代謝され、さらにアセトアルデヒド変換酵素により酢酸になりますが、日本人には遺伝的にこのアセトアルデヒド変換酵素のはたらきが比較的弱い、あるいはほとんどはたらかない人が大勢います。

 それらの人たちはたいていお酒に弱いことを自覚しており、通常飲むのをひかえていますが、そういった人たちに無理矢理一気飲みなどさせた場合、ごく少量のお酒であっても急性アルコール中毒は起こる可能性があり、最悪の場合死ぬこともあります。したがって、そのような行為は殺人といっても過言ではありません。

 そのほか、小児がアルコールを少量飲んだ場合、あるいは幼児がエタノールを含んだ化粧水を飲んだ場合などにも、アルコール中毒が起こることがあります。

症状の現れ方

 症状は、個人差はあるものの、主に血中アルコール濃度によります(表13表13 血中アルコール濃度と症状)。血中アルコール濃度は、飲んだ量・速さのほか、肝機能などの体の状態や、すでに述べた遺伝的性質などによって決まります。

表13 血中アルコール濃度と症状

検査と診断

 前述のように、血中アルコール濃度の測定は有用ですが、小規模の病院ではすぐにはできないところも多くあります。その場合は、症状とその進行状況によって、中毒の有無と重症度を診断します。

 そこで決して見落としてはならないのが、アルコール中毒そのものよりも、むしろアルコール以外の原因による意識障害です。飲酒後の運動失調やアルコールの麻酔作用によって、患者さんはしばしば転倒し、それを訴えないことがあると、頭部打撲や頭蓋内出血などが見逃されやすくなります。

 そのほか、脱水、血圧低下などによって、脳梗塞が発症していたり、低血糖や、反対に糖尿病による高血糖、さらには肝機能の悪化によって意識障害が生じていることもありえます。単純にアルコールによる意識障害と決めつけずに、これらの疾患を医師が見極めることが大切です。

治療の方法

 軽症例は、体温を保つように注意しながら観察することで、自然に回復します。

 重症例で昏睡の場合には、気管内挿管を行い、必要に応じて人工呼吸を行います。鼻から胃に管を挿入して、大量の微温湯で胃を洗浄して胃のなかのアルコールを取り除き、同時に下剤を投与します。また、輸液によってアルコールの排泄を促進させますが、血液透析が必要になることもあります。

 そのほか、症状・程度に応じて、脱水、低体温、低血圧、低血糖、呼吸抑制、代謝性アシドーシス、興奮・不安などの対処を行います。また、嘔吐による窒息に注意します。

病気に気づいたらどうする

 呼びかけにはっきり応じるようであれば、そのまま寝かせて様子をみます。ただし、体温が下がらないようにふとんや毛布をかけたり部屋の温度に気をつけ、嘔吐による窒息にも注意します。

 呼びかけにはっきり応じられなかったり、だんだん反応が悪くなっていく場合には、救急病院に搬送します。

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(執筆者:神戸女子大学公衆衛生学教授 栗原 伸公)

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