出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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猫ひっかき病
ねこひっかきびょう

もしかして... 結膜炎  糖尿病  肝硬変

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猫ひっかき病とは?

どんな病気か

 猫ひっかき病は、ネコやイヌに引っかかれた創(傷)や咬まれた創から細菌が感染し、赤くはれ、頸部のリンパ節の痛み・はれ、発熱などの症状を来す疾患です。夏から秋にかけて発生頻度が高くなります。

原因は何か

 バルトネラ属の菌が感染することにより発症します。この菌はネコやイヌなどの動物の爪や口腔内、あるいは動物に寄生するネコノミなどに存在します。

 日本ではネコの1割が感染し保菌しており、ヒトへの感染のほとんどはネコによるものと考えられます。とくに子ネコからの感染の危険性が指摘されています。

症状の現れ方

 通常、数日~数週間の潜伏期のあと、次の症状があります。

①皮膚症状(出現率5~9割)

 最初に皮膚症状が現れます。典型例では直径2~5mmの小さな赤い発疹、あるいはうみをもった発疹、瘡蓋(かさぶた)を生じます。

②リンパ節のはれ(出現率8~9割)

 痛みのあるリンパ節のはれが、腋の下や頸部、下顎に現れます。リンパ節のはれは鶏卵大以上になることもあります。リンパ節は硬く、押すと痛みがありますが徐々に軟らかくなり、しばしば一部が破れてうみが流れ出ます。発疹やリンパ節のはれは2~5カ月で自然に治ります。

③発熱(出現率5~7割)

④その他

 頭痛や意識障害を訴える脳症(出現率1割以下)や結膜炎を合併することもあります。また、糖尿病肝硬変など免疫力の低下を伴う基礎疾患がある場合や小児では、しばしば重症になります。

検査と診断

 ①ネコやイヌとの接触歴、②原因不明で3週間以上継続するリンパ節のはれ、③原因不明の発熱、④組織病理学的所見により診断されます。

治療の方法

①成人では、通常は自然に治るため、解熱薬や鎮痛薬の対症療法だけで経過観察します。一般に予後は良好で、抗菌薬を使わなくても6~12週でよくなります。

②症状が長引く場合には抗菌薬を内服します。

③重症例では入院や集中治療室での治療が必要になります。

病気に気づいたらどうする

 皮膚科、内科、あるいは小児科を受診してください。また、意識障害や重度の頭痛、あるいは食事ができない時は、救急車を要請してください。

(執筆者:川崎市立川崎病院救命救急センター室長・救急部長 田熊 清継)

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