このQ&Aページでは、2017年に開催された「webで参加するじんましん公開セミナー」、第1回「かゆみがつらい」および第2回「じんましんのなに?なぜに答える」のセミナー内で参加者の方からいただいた質問と、セミナーに登壇いただいた講師の先生による回答を一部抜粋して掲載しています。
講演に参加できなかった方も、講演の内容をもう一度振り返りたい方も、ほかの患者さんが抱かれている疑問やそれに対しての先生のアドバイスをぜひ参考にしてください。
じんましんは多くの方が経験する疾患です。1週間ほどで治ることが多いのですが、長期的に痒みやみみずばれのような膨疹に苦慮される患者さんも少なくありません。
現在は、従来よりも治療選択肢が増えてきていますので、なかなか治らない場合はぜひ皮膚科専門医にご相談ください。
長く続くと不安に思うこともあるかもしれませんが、一般的に慢性じんましんはきちんと治療すれば軽快していく、もしくはコントロールができる疾患です。皮膚科医の指示に従って、治療に取り組んでいってください。
【矢上先生】
皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると消えてなくなるのが特徴で、たいていは痒みを伴います。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2503)
【矢上先生】
じんましん全体で最も多いのは「特発性」で、調べても原因がわからないことがほとんどです。ピロリ菌、感染症、甲状腺などが原因となっている場合には、血液検査で原因がわかることもあります。また、原因不明のじんましんを繰り返している患者さんの中には、小麦や甲殻類、果物など問題なく摂取できても、それらの食材の摂取と同時に運動を行ったり、薬剤の投与により全身のじんましんや重篤な場合はアナフィラキシーショックが誘発される方もいらっしゃいます。このような場合は、血液検査や皮膚テスト(プリックテスト)を行います。じんましんを繰り返している場合は、皮膚科やアレルギーの専門医がいる医療機関を受診し、ご相談をされるとよいでしょう。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2505, 2506, 2531)
【石黒先生】
まずは、症状が出やすい条件がいつも一緒かどうか、自分で振り返ってみてください。同じ食物の摂取で症状がよく出るのかどうか、汗をかいた時に出やすいかどうかなどです。
それが本当に原因かどうかを確認するには、皮膚科を受診して相談し、場合により検査をしてもらいましょう。歯科や耳鼻科的な疾患が原因となることがあり、それらを治療することで軽快していく場合もありますので、気になる症状があれば診察を受けましよう。
【矢上先生】
じんましんは、ある日突然発症します。食物などのアレルギーが原因でじんましんになる方は少ないです。原因が確認できないまま、数日で症状がなくなる急性じんましんが多いのですが、急性じんましんかと思って様子をみていたら、長期的に慢性じんましんになっている方もいらっしゃいます。膨疹が出続けていると、入浴や飲酒などによりじんましんが繰り返されて慢性化し、さらにじんましんが出やすくなることがあります。じんましんがたまに出るからといって放置せず、適切な治療を受け、早期にしっかりと治しておくことが大切です。体の免疫機能が低下してじんましんが出やすくなる、ということはないので、じんましんが続く場合は皮膚科専門医に相談をされるとよいでしょう。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2518)
【矢上先生】
ストレスがじんましんの原因の中心ではなく、あくまでもプラスαの悪化因子のひとつになります。仕事を辞めるような大きな決断をすることで症状が改善する可能性はありますが、大切なことは、適切なじんましんの治療を受けることでしょう。じんましんの治療は最終的に無治療でも症状が現れない状態(治癒)を目指すとされていますが、長期的に症状が続き苦慮される患者さんは少なくありません。現在はさまざまな治療法がありますので、漫然と治療を受けるのではなく、医師にご自身が困っていることを具体的に伝え、ご自身に合った治療法を選択していただいてください。その上で、ご自分のストレスや心の持ちようを見直し、生活習慣や周囲の環境を変えていくように取り組まれるとよいでしょう。信頼できる周囲の方に相談されるのもよいですし、医療機関で相談されてもよいでしょう。まずは、皮膚科専門医にじんましんの治療についてご相談ください。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2504, 2510)もしくは日本皮膚科学会皮膚科Q&A
【石黒先生】
じんましんの原因は不明なことが多いです。原因がわからない方でも治る方が多いことがわかっています。特に症状が出て1年以内の方はきちんと治療すると治る率が高いことがわかっています。まだ十分に症状が抑えられていないようですので、引き続き医師の診察を受け、薬の調整をしてもらうとよいでしょう。
出典:石黒直子ほか:皮膚臨床 51(7), 885, 2009
【石黒先生】
今後も様々な方面から検討を続けて、特定の原因が明らかでないじんましんがどのようにして発症するのか解明していきたいと思います。
【矢上先生】
寒冷じんましんは、抗ヒスタミン薬の内服で効果があるとされます。1剤を内服し効果が不十分な場合は、医師に相談し他の抗ヒスタミン薬に変更していただき、ご自身に合った薬剤をみつけることが大切です。また、寒冷じんましんでは、「医師の指導の下、水浴により耐性を獲得できる場合がある」、とされますがショック症状など重篤な症状が誘発される可能性がありますので慎重に行うことが大切です。温熱じんましんについても抗ヒスタミン薬は効果があり、また、繰り返す温熱による耐性誘導が有効であったとする報告があります。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2516, 2545)
【矢上先生】
じんましんの病型分類によっては治療の反応に違いがあり、適宜増減が可能な抗ヒスタミンの増量やその他の薬剤の併用が必要となることがありますから皮膚科専門医にご相談をされるとよいでしょう。「温浴などにより積極的に汗をかくこと」がコリン性じんましんに効果があるといわれますがそれほど有効ではなく、「発汗低下を伴う方には試みてよい」というレベルとされています。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2547)
【矢上先生】
圧じんましん(遅延性)は、抗ヒスタミン薬が効かない場合はステロイド薬が奏効するとされています。しかしながら、副作用を考えると長期的にステロイド薬を内服することは勧められません。難しいかもしれませんが、圧を回避する生活習慣を身に着けることが大切です。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2516)
【石黒先生】
圧じんましん(遅延性)では、確かに痒み以外に、ときに痛み、灼熱感が出るようですね。痒みは痛みの弱い感覚と以前は考えられていましたが、最近の研究により異なった神経線維により伝達されていることがわかり、別々の感覚であると考えられるようになりました。しかし、まだまだ不明な点も多いようです。
出典:倉石泰:アレルギー免疫 23(9)1193-1199,2016
【石黒先生】
機械的な刺激で出る機械性じんましん(人工じんましん)も通常の慢性じんましんと同様の治療により軽快していく場合が多いです。引き続き医師の診察を受け、薬の調整をしてもらうとよいでしょう。
出典:秀道広ほか:日皮会誌 121(7),1339-1388,2011
【石黒先生】
多くの慢性じんましんはきちんと治療することで治る場合が多いです。東京女子医大の皮膚科での検討では、治る方での治るまでの平均期間は、発症から約2年です。
ほぼ毎日症状が出る場合には、眠気の少ない抗ヒスタミン薬などの定期的な内服を開始します。また、治療で軽快してからも、少なくとも3か月以上の内服の継続が望ましいと言われています。もし、現在の治療でも軽快しない場合には、治りにくい方に行われる新しい治療も出てきていますので、医師にご相談ください。
出典:石黒直子ほか:皮膚臨床 51(7), 885, 2009
【石黒先生】
お話からはおそらくじんましんで、機械的な刺激で出る機械性じんましん(人工じんましん)もお持ちではないかと思います。ただし、寝込むほどというのは症状が強いですので、早めに医師にご相談ください。じんましんと似ているが違う病気というものもあります。その場合には発熱や関節の痛みなどの全身の症状も出ますので、きちんと診断してもらいましょう。
【石黒先生】
特定の食物を摂取して比較的すぐに症状が出ることが多いようであれば、皮膚科できちんと検査をしてもらうとよいと思います。
そのような食物がなければ基本的には制限はありませんが、例えば鯖は鮮度が落ちるとヒスタミンを多く含むようになるため、新鮮なものを摂取するようにしましょう。また、じんましんの症状が強い時にはアルコールや強い香辛料など末梢血管を拡張するものは痒みを増強することがあるので、注意が必要です。熱いお湯での入浴や長湯も痒みを増強する可能性があります。十分睡眠をとり、ストレスがたまらないような生活を心がけましょう。
秀道広ほか:日皮会誌 121(7),1339-1388,2011
【石黒先生】
症状の出る回数は少ないようですが、症状が出ると強く出るようですね。症状が出るにあたり特定の原因や誘因、条件がわからない場合には、皮膚科でご相談いただき、ご自分にあった抗ヒスタミン薬を常に携帯しておく方法もあります。
また、出やすい条件(疲れた時など)がある程度決まっているようでしたら、処方された抗ヒスタミン薬で症状の出現を完全に抑制しえた場合は、引き続きおなじ薬剤を予防的に内服しておくのもひとつの方法ですので医師に相談してみてください。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018,日皮会誌2018; 128(12): 2503-2624(2513, 2515)
一般的にじんましんは夜間に出ることが多い傾向がありますが、その理由はよくわかっていません。
【石黒先生】
睡眠不足、ストレス、疲労が重なった時にじんましんが出やすい方では、 処方された抗ヒスタミン薬で症状の出現を完全に抑制しえた場合は、症状が出る前に、引き続きおなじ薬剤を予防的に内服しておくのもひとつの方法ですので、医師にご相談してみてください。また、じんましんが出やすい状況が続くようなら、十分睡眠をとり、ストレスがたまらないような生活を心がけましょう。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018,日皮会誌2018; 128(12): 2503-2624(2513, 2515)
【矢上先生】
抗ヒスタミン薬は、「いずれも母乳に移行しうる薬剤」とされ、授乳中は内服しないことが望ましいとされています。しかしながら、見た目や痒みなどのじんましんの症状によって支障が出ている場合は、医師が安全性を考慮したうえで必要があると判断した場合に抗ヒスタミン薬により治療することがあります。
産後はストレスも多く、じんましんがなかなか治らず大変だと思いますが、授乳もいずれ終了する時がきます。ストレスを発散するように気を付けつつ、処方された薬剤を指定された時間通りに服用してみてください。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2512)
授乳中に安全に使用できると考えられる薬 - 薬効順 -|国立成育医療研究センター(2020年7月10日閲覧)
【矢上先生】
慢性じんましんは、感染、食物、疲労・ストレス、生理など二次的要因により症状が増悪することがあります。抗ヒスタミン薬などをすでに複数内服されておられますが、抗ヒスタミン薬の種類や量、組み合わせ、またはその他の薬剤との組み合わせなど、患者さんごとに効きが異なります。よって、漫然と薬剤を内服するのではなく、医師に相談し、薬剤を変更してもらいながら治療を進めていくとよいでしょう。難治性の慢性じんましんの場合、新しい治療も治療の選択肢のひとつになりますので皮膚科専門医にご相談ください。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2505, 2507, 2511)
【矢上先生】
皮膚を掻破していると皮膚がボロボロになったり、色素沈着が起こります。個人差はありますが、炎症や掻くことをやめれば、半年から1年程で色素沈着は改善を目指すことができます。皮膚を掻破してバリア機能が下がるとさらに痒みを生じますので、保湿剤でスキンケアをされるとよいでしょう。痒みが続くようであれば皮膚科専門医を受診して保湿剤と共に適切な薬剤を塗布することで、痒みや皮膚の状態の改善を目指すことができます。
【石黒先生】
多くの慢性じんましんはきちんと治療することで治る場合が多いです。東京女子医大の皮膚科での検討では、治る方の場合に治るまでの平均期間は、発症から約2年でした。
慢性じんましんの多くの方がストレスを感じた時や疲労時にじんましんが出現したり悪化することがあります。このような方たちではストレスが取り除かれることで症状が和らぐ可能性はあります。
出典:石黒直子ほか:皮膚臨床 51(7), 885, 2009
【石黒先生】
多くの慢性じんましんはきちんと治療することで治る場合が多いです。東京女子医大の皮膚科での検討では、治る方の場合に治癒に至るまでの平均期間は、発症から約2年です。
出典:石黒直子ほか:皮膚臨床 51(7), 885, 2009
【矢上先生】
じんましんが6週間以上経過すると「慢性じんましん」に移行し、治りづらくなります。現在は、眠気の少ない抗ヒスタミン薬が第一選択で、抗ヒスタミン薬の処方には増量(倍)や2剤の組み合わせなどがあります。ある程度内服して症状が軽快しない場合は皮膚科専門医に相談し、症状にあった薬剤を処方していただいてください。それでもじんましんが続くようであれば、抗ヒスタミン薬以外の薬剤を加える治療法もあります。
さまざまな薬剤による治療でもよくならない場合は新しい治療も出てきていますので皮膚科専門医にご相談ください。また、慢性じんましんは、薬物治療と同時に、入浴や運動、食事(香辛料など)などのじんましんの誘発因子を回避することやストレスの緩和を行うことで徐々に改善していきます。じんましんの誘因は個々の患者さんで異なりますので、じんましんの契機となるご自身の誘発因子を見極め回避することも、とても大切です。
出典:日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624(2504, 2511, 2518, 2536-2538 )
【石黒先生】
東京女子医大の皮膚科での検討では、症状がでてから5年以上が経過している方では治る率が低いことから、まずはきちんと内服することで症状をコントロールすることを治療の目標としていくようお話ししています。
出典:石黒直子ほか:皮膚臨床 51(7), 885, 2009
【石黒先生】
診断により治療方法が異なりますので、まず、皮膚科を受診いただき、現在の症状がアトピー性皮膚炎によるものか、じんましんによるものか、もしくは両者ともあるのかを診断してもらってから、適切な治療をしてもらうことをお勧めします。
【石黒先生】
じんましんであれば症状が出るのを抑える適切な塗り薬はありませんが、湿疹であれば塗り薬で治療をします。診断により治療方法が異なりますので、まず、皮膚科を受診いただき、現在の 症状がじんましんによるものか、湿疹によるものか、もしくは両者ともあるのかを診断してもらってから、適切な治療をしてもらうことをお勧めします。