ペットボトルが開けにくい 階段がこわい

手や足のしびれや脱力感に悩んでいませんか?

その症状、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)の末梢神経障害かもしれません

手や足の脱力感やしびれに悩んでいませんか。手に力が入らず、髪を洗うときに腕が上がらない、ペットボトルのキャップを上手く開けることができない、お箸やフォークをうまく持てないなど、以前はできていた簡単な動作ができなくなって困ったりしていませんか。また、手や足にしびれやチクチクとする感じがあったり、熱さ・冷たさを感じにくくなったりしていませんか。このように、手や足に困った症状がある場合、末梢神経障害かもしれません。

末梢神経障害は原因となる病気がさまざまであり、
病気に応じた治療が必要

末梢神経は、脳や脊髄などの中枢神経から枝分かれして、体中に張り巡らされている電気信号の通り道です。脳と電気信号をやり取りすることで、筋肉を動かしたり、痛みや皮膚の感覚などを感じたりするなど、さまざまな機能があります。末梢神経がダメージを受け、働きが悪くなった状態を末梢神経障害といいます。

末梢神経障害の治療は、原因となった病気に応じて行わなければ改善が期待できません。末梢神経障害が起こる原因は、糖尿病などの代謝性疾患、特定部位の末梢神経が圧迫されて起こる整形外科疾患、抗がん剤の副作用、感染症、免疫の病気など多岐にわたり、複数の原因が関わっていることもあります。

また糖尿病は糖尿病・代謝内科、整形外科疾患は整形外科など、それぞれの原因となった病気を専門とする診療科は異なります。

あなたの手や足の脱力感やしびれがなかなか解決しない場合には、主治医に相談の上、他診療科のセカンドオピニオンを求めることを考慮するのも良いかもしれません。

CIDPは末梢神経障害を引き起こす自己免疫疾患で、
脳神経内科で診断可能

末梢神経障害を引き起こす疾患の1つにCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)があります。CIDPは自己免疫疾患であり、免疫の異常により複数の末梢神経がダメージを受け、手や足の筋力低下や感覚障害が起こりやすいことが知られています。CIDPが診断できるのは主に脳神経内科ですが、珍しい病気であり脱髄の確認や他疾患との鑑別が必要なため、診断までに時間がかかることが少なくありません。

病気の経過は人それぞれで、完治は難しいことが多いですが、適切な治療により症状の改善や進行を遅らせることができます。また、CIDPは国の指定難病に認定されており、医療費助成の対象となります1)

手や足の脱力感やしびれに悩んでいませんか?

Q&AでCIDPについて学ぼう

以下にCIDPについてよくある質問をまとめました。
気になるところだけでもぜひチェックしてみてください。

Q1

CIDPの患者数はどのくらいですか。

2021年の全国調査によると、CIDPの推定患者数は約4,180人、有病率は10万人当たり約3.3人です。発症年齢は平均52歳で、0~90歳まで幅広く分布しています。女性よりも男性に多く、男女比は1.5:1でした2)。

Q2

CIDPはなぜ起こるのでしょうか。

CIDPは、自己免疫が末梢神経を攻撃することで、神経細胞の一部(髄鞘:ずいしょう)が炎症を起こして徐々に損傷する病気です。遺伝はせず、感染もしないと考えられています。

神経細胞には1本の突起状の細長い神経線維(軸索:じくさく)があり、髄鞘に覆われています。髄鞘には電気コードの漏電防止と同じような働きがあり、そのおかげで脳との素早い信号のやり取りが可能となっています。CIDPの主な症状は、手や足の筋力低下や感覚障害です。これは、髄鞘がダメージを受け、末梢神経系の情報伝達がうまくできなくなるために起こります。

Q3

CIDPの症状はどんなものがありますか。

主な症状として、以下のようなものが知られており、いずれも手足の筋力低下や感覚障害に関係しています(図)。

つまずきやすいふらつく、階段を上り下りしにくい、ボタンが留めにくい、腕が上がらない(洗髪の時など)、指が震える、手足がしびれる 手足の感覚が鈍い

Q4

CIDPの症状の出方や経過は人によって違うのですか。

症状が長く続き徐々に進行する人もいれば、症状の落ち着きと再発を繰り返す人もいます。また、徐々に手足の筋力が低下して杖や車椅子が必要になる場合があります。

CIDPにはさまざまなタイプがあります。患者さんの約半数を占める典型的CIDPでは、症状は8週間以上継続し、左右対称に表れ、4肢(手足)のうち2肢以上の筋力低下、感覚障害が出ます。近位筋(手足の付け根側の筋肉)も遠位筋(手足の先側の筋肉)も同じように障害が出るのが特徴です。

典型的CIDPに該当しないタイプは、筋力低下や感覚障害が出る部位が主に手足の先側の「遠位型」、左右非対称の「多巣性」、1肢だけの「局所型」の他、症状が脱力などの運動障害のみの「運動型」、感覚障害のみの「感覚型」の5病型に分類されます3)

Q5

診断や治療はどのように行いますか。

CIDPが疑われる場合、まずどの病型に当てはまるかが判断されます。その上で、各種検査で症状がよく似た別の病気ではないことと、髄鞘の損傷が確認された場合にCIDPと診断されます4、5)

典型的CIDPは、同じように末梢神経障害が起こりやすい自己免疫疾患のギランバレー症候群や糖尿病性神経障害などと症状がよく似ています6)

治療は、症状の軽減や消失を目指す寛解導入療法が行われます。自己免疫の働きを抑える治療として、免疫グロブリン療法や副腎皮質ステロイド薬が選択されることが多く、効果が不十分な場合に、髄鞘を攻撃している免疫物質を血液中から除去する血漿交換療法が行われます7)。症状が安定すれば、よい状態を維持する維持療法に移行します。

Q6

何科を受診すればよいですか?
受診時のアドバイスはありますか。

主に脳神経内科で診断可能です。CIDPには、血液や尿などの検査値による診断マーカーがありません。さまざまな症状がありますので、自分の症状を日記や手帳に書き留めておいて医療機関を受診する際に持参すると、医師が症状を把握するのに役立ちます。

CIDPの治療目標は、症状を軽減し病気の進行を遅らせることです。治療方針について主治医とよく話し合うことが大切です。また、CIDPの症状や障害が日常生活に及ぼす影響、治療と学業・仕事との両立などで悩みがある場合は、医師やソーシャルワーカーに気軽に相談してみましょう。

手や足の脱力感やしびれに悩んでいませんか?

参考文献 :
  • 1)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 44, 南江堂, 2024.
  • 2)Aotsuka Y, et al. Neurology 2024; 102: e209130.
  • 3)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 12~13, 南江堂, 2024.
  • 4)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 7, 南江堂, 2024.
  • 5)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 124, 南江堂, 2024.
  • 6)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 74~76, 南江堂, 2024.
  • 7)日本神経学会 監修: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン作成委員会 編集: 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 30~31, 南江堂, 2024.