痛みのメカニズムに新発見 自己免疫疾患の治療に応用が期待

[ニュース・トピックス] 2013年7月12日 [金]

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自己免疫疾患とは?

(この画像はイメージです)

 身体には、もともとばい菌やウイルスなど有害なものを取り除く働きが備わっていますが、何かの拍子で、自分自身の細胞や組織を「異物」として押しのけたり戦ったりしてしまうことがあります。これが、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患といわれる病気のグループです。
 関節リウマチ以外では、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、強皮症、リウマチ様筋痛症、大動脈炎といった病気が、自己免疫疾患に挙げられていて、様々な種類の痛みを伴います。
 これまでの調査で、自己免疫疾患の患者さんでは、血液の中に炎症性サイトカインIL-6(以後IL6)という物質が異常に増えることが分かっていました。


 このため、治療ではIL6とくっついて、IL6が悪さをできないように押さえ込んでしまう方法が主流でした。
 

そして「なぜIL6がそんなに増えてしまうのか?」という疑問に答えられれば、自己免疫疾患の痛みをもっと知ることができると期待されてきました。

これからの治療に応用可能

 そして、ついに岸本忠三教授(元大阪大学総長)率いる研究チームがこの疑問の答えを見いだしたのです。その秘密は、「Arid5a」というタンパク質にありました。
 

健康な人では、つい最近までIL6は作られないと考えられていましたが、実は身体の中でIL6が作られても、すぐに分解されて消し去られてしまうのです。ところが、IL6が増えている自己免疫疾患の患者さんでは、IL6が作られるときに、「Arid5a」も一緒に作られてしまいます。この物質が、IL6を分解する働きを邪魔してしまうのだそうです。
 この発見を元に、これからは、「Arid5a」が作られないようにしたり、IL6の分解を邪魔しないようにしたりするような、治療方法の開発が、一つの目標となりました。実験ではすでに、このタンパク質を欠損させたマウスが登場しています。このマウスは強皮症でしたが、タンパク質を欠損させるとIL6が減ったそうです。
 

痛みを原因から取り除く可能性のある発見が、日本から発信されたことに世界中の科学者が注目しています。(唐土ミツル)

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