抗リウマチ薬

[薬物療法] 2015年6月30日 [火]

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抗リウマチ薬(1) ― 第一選択は免疫抑制薬のメトトレキサート

 関節リウマチは、免疫の働きに異常がおこり、関節の滑膜を異物と勘違いして攻撃してしまう病気です(関節リウマチのおこる仕組み)。その免疫機能による攻撃をやめさせるために、免疫機能に働きかけて病気の活動性を下げる薬を総称して、「抗リウマチ薬」と呼びます。抗リウマチ薬には、“免疫抑制薬”、“免疫調整薬”があります。現在さまざまな薬が開発されている“生物学的製剤”も、働き方から見れば抗リウマチ薬の一つといえます。

 免疫抑制薬は、からだ中の免疫作用を抑えて、関節内での免疫の動きも弱めようとする薬です。免疫調整薬は、正常に働く免疫機能には作用せず、異常をおこしている免疫機能に働きかけます。免疫抑制薬よりも副作用が少なく、効きめは緩やかです。これらの抗リウマチ薬には、炎症を止める作用がほとんどないため、痛みを止めたり炎症をコントロールするために、通常ロキソプロフェンなどの“消炎鎮痛薬”も同時に処方されます。

 現在の治療では、確定診断の段階で関節破壊が早く進むことが予想される人(血液検査でリウマトイド因子や抗CCP抗体が高値で陽性/骨破壊がみられる/関節機能が障害されている/炎症活動が強い、など)に対しては、免疫抑制薬のメトトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレート、トレキサメットなど)が第一選択薬として使われます。すでに合併症などをおこしていてメトトレキサートが使えない場合、あるいはメトトレキサートを使っても効きめが現れない場合には、同じ免疫抑制薬のレフルノミドやタクロリムスなどに変更されるケースもあります。

関節リウマチの治療に用いられる主な薬剤
関節リウマチの治療に用いられる主な薬剤

抗リウマチ薬(2) ― 知っておきたい特徴

 抗リウマチ薬(生物学的製剤を除く)の服用にあたっては、次の特徴を押さえておきましょう。

【効き始めるまでに一定の時間がかかる】
服用を始めてから、関節の痛みや腫れが軽くなるなど薬の効果が実感できるまでに、薬剤によって、またその人の反応性によって差があります。免疫抑制薬のメトトレキサートや免疫調整薬のサラゾスルファピリジンは、比較的短期間で効果がでる薬ですが、それでも2週間から2カ月ほどはかかります。3カ月服用を続けても効果がでない場合は、用量を増やしたり、別の薬剤を併用したり、薬剤を変更することを検討します。

【レスポンダーとノンレスポンダー】
例えばお酒に強い人と弱い人がいるように、抗リウマチ薬は「この人にはよく効くけれども、あの人には効かない」といった個人差がでやすく、有効率は、薬にもよりますが30~70%とされています。効果のあった人を“レスポンダー”、効果のでない人を“ノンレスポンダー”といいます。レスポンダーかノンレスポンダーかは、残念ながら今のところ、事前に知ることはできません。3カ月間服用しても効果がなければノンレスポンダーということになり、服用する薬剤を変更します。

【エスケープ現象】
あるときを境に、それまでよく効いていた薬が効かなくなってしまうことがあります。これを“エスケープ現象”といい、抗リウマチ薬では比較的おこりやすいことが知られています。他の抗リウマチ薬を追加すると、効果が戻ってくることも最近の研究で明らかになっています。

【副作用】
副作用がでやすいのも特徴です。

抗リウマチ薬 ― 知っておきたい4つの特徴
抗リウマチ薬――知っておきたい4つの特徴

抗リウマチ薬(3) ― “メトトレキサート”の用量、用法が海外並に

 ここでは最近の関節リウマチ患者さんの多くに使われる、メトトレキサートについて詳しく見ていきます。

 メトトレキサート(商品名:リウマトレックスなど)は、細胞の中で葉酸の代謝をブロックすることで、免疫の働きを抑える薬です。細胞が増殖するときには、ビタミンBの一種である葉酸が欠かせません。関節リウマチの炎症がおこっているところでは、リンパ球やマクロファージが増殖を続けています。これらは免疫細胞であり、かぜのウイルスなど体内に敵を発見すると増殖して攻撃しますが、このときに炎症反応が生じるため“炎症細胞”とも呼ばれます。メトトレキサートは、炎症をおこそうと増殖している細胞の葉酸の働きを阻害して増殖を抑制し、炎症反応を抑えます。このため関節の炎症は治まりますが、それ以外の部位でも免疫機能が低下します。こうした理由で、副作用としての感染症に注意が必要なのです。

 日本では肝機能障害などの副作用に対する懸念があり、発売以来、海外で認められた最大用量を使用することも、また、治療開始時からの投与もできませんでした。しかし、2011年の2月に1週間あたりの最大使用量は海外と同じく16mgになり、また、治療初期からの使用も認められました。

 しかし、メトトレキサートの作用で関節リウマチが抑えられても、体内で葉酸が働かないのは困ります。そこで、メトトレキサートを1週間に8mg以上服用する場合は、副作用を予防するために葉酸も併用します。とはいえ、同時に飲んでは互いの効力を阻害してしまうので、服用する日をずらします。

“メトトレキサート”の働きと飲み方
メトトレキサートの働きと飲み方

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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