[慢性じんましん] 2019/03/29[金]

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原因がはっきりわかっておらず、なかなか治らない蕁麻疹(特発性の慢性蕁麻疹)。予期せず襲ってくる強烈な痒みに、人知れず悩んでいる患者さんもいるのではないでしょうか?

特発性の慢性蕁麻疹患者で治療を続ける大壽美楓季(おおすみふうき)さんとそのお母さん(智子さん)、大壽美さんの主治医で皮膚科専門医の葉山惟大先生(日本大学医学部附属板橋病院皮膚科)に、お話を伺いました。

かゆくて眠れない!でも診察室では無症状


大壽美楓季さん

大壽美楓季さん(以下、楓季さん):最初は汗疹(あせも)だと思っていました。かゆいので嫌でしたが、汗疹にしてはヒリヒリしないので、なんだか変だなとは思っていました。

大壽美智子さん(以下、お母さん):かゆくて、掻きむしって夜中にシクシク泣いているのでびっくりしました。「かゆくて眠れない」というのです。

楓季さん:湿疹が出ているときに、例えばお風呂に入る前など、母を呼んで一緒に見てもらって、やっぱり汗疹ではなさそうだねと話しました。

お母さん:湿疹が出始めて1週間くらいして、よくならないので近所のクリニックに行きました。

楓季さん:湿疹が出るのは夜が多いのですが、診察時間は昼間。診察の時には湿疹が出てないことも多くて、こういうところに湿疹が出てかゆいんです、と言葉で伝えましたが、うまく伝えられたかどうか…。

お母さん:最初は写真を撮っていなかったのですが、それからは湿疹が出るとすぐに写真を撮るようになりました。

葉山先生:楓季さんの言うとおりで、夜間に蕁麻疹が出ることが多く、昼間に診察を受けても症状が出ていないことはよくあります。皮膚科医は、蕁麻疹というものが、症状が出たり治まったりする疾患だとわかっていますから、「夜、大変だよね」と声をかけています。

家族が協力!症状を伝えるときに役立つポイント

蕁麻疹のかゆみで勉強にも集中できず、活動することに消極的に


大壽美智子さん

楓季さん:蕁麻疹がかゆくてかゆくて、勉強にも集中できませんでした。

お母さん:蕁麻疹が出ているところを冷やせばかゆみを抑えられるだろうかと考えている姿をよく見ました。結局眠れなかったといって、学校をお休みすることもありました。

楓季さん:テスト期間中は、あまりにかゆくて勉強に集中できず、途中で勉強をあきらめて痒みが治まるのを待つんです。なかなか治まらなくて、待っているうちに寝てしまうこともありました。

葉山先生:特発性の慢性蕁麻疹は、ストレスでも悪化します1)。学生の患者さんにとっては、テスト期間中は蕁麻疹が悪化しやすいものなのです。

楓季さん:それ以外にも、例えば体育などで何かが皮膚に触れたりすると、それが刺激になって蕁麻疹が出ることがあり、触れないように気を付けるのも大変でした。

お母さん:担任の先生は、お休みの連絡をしても、蕁麻疹なんてたいしたことはないのだろうといった様子だったので、蕁麻疹が出ているときの写真を持っていってみてもらって、大変さをわかってもらえるように働きかけました。今思うと、どんなときに蕁麻疹が出るのかや、服用している薬について、詳しい情報を伝えておけばよかったと思います。

葉山先生:夜間に蕁麻疹が出て眠れないと訴える患者さんもいます。かゆくて眠れない苦しみ2)は、体験したことがなければわかりません。学生の患者さんで、昼間に蕁麻疹が出ていないがために、担任の先生に大したことではないと思われてしまうという話はよく聞きます。写真を見てもらうと、説得力がありそうですね。

突発性の慢性じんましんが睡眠状態に与える影響
Hoskin B et al.:Clin Ther. 2018:doi 10.1016j.clinthera.2018.12.004 [Epub ahead of print]より改変

いったい自分はどうなってしまうのだろう。繰り返す蕁麻疹で不安に


葉山惟大先生

楓季さん:私はチアダンスをやっていたのですが、子どもの頃からの夢である世界大会出場があと少しで叶うというところでした。蕁麻疹がかゆくて練習も思うようにできず、治療を受けてもよくならず、自分はどうなってしまうのかとても不安で、どうしたらいいのだろうと悩みました。

お母さん:それで、紹介状を書いてもらって、蕁麻疹治療に力を入れているという病院を受診しました。先生から、「治るように一緒にがんばろう」と言っていただいて、希望の光が差してきたのを覚えています。

葉山先生:特発性の慢性蕁麻疹を治療するうえで、目指すところは最終的な治癒です3)。なかなか治らない場合には、専門の治療を行っている施設に紹介してもらうとよいでしょう。新しい治療も次々と開発されていて、医師の関心も高まっているんですよ。

葉山先生から医師として、特発性の慢性蕁麻疹患者さんに伝えたいこと

治療継続には、家族のサポートも

楓季さん:先生にじっくり話を聞いてもらい、治療についてもしっかり説明を受けることができました。自分でも納得したうえで治療を受けているので、時々再発することはありますが、今は不安もなく治療を続けています。テストはもちろんですが、高校受験も、チアダンスの世界大会も、先生に相談して治療をしながら乗り越えてきました。

葉山先生:患者さんからご自分の症状をきちんと伝えてもらうことももちろんですが、私たち皮膚科医も、しっかり患者さんのお話を聞くことが大切ですね。人によっては、就職活動や結婚、妊娠などがきっかけで、蕁麻疹が出る方もいます。テスト期間中はストレスで蕁麻疹が出やすくなりますが1)、薬によっては、飲むと眠くなるものもあるため、眠くならないように薬の量を調整するなど、患者さんのニーズに合わせて治療を工夫しています。

お母さん:きちんと話を聞いてくださる主治医の先生と信頼関係ができていると、再発したときでもすぐに相談でき、安心です。

葉山先生:症状が落ち着いてくると、治療中であることを忘れてしまう場合もあります。ご家族には、患者さんが忘れずに服薬などの治療を続けられるよう、声をかけたり見守ったりといったサポートをお願いしたいですね。

楓季さん:いまは、自分にあった治療を受けることで、蕁麻疹の症状も安定しています。大学にも合格し、キャビンアテンダントになるという、新たな目標もできました。これからもしっかり治療を続けながら、夢の実現を目指してがんばっていこうと思っています。

コラム 蕁麻疹診療の考え方

2018年に改訂された『蕁麻疹診療ガイドライン』3)。その結語には、「蕁麻疹は多くが最終的には治癒に至り得るという点で希望を持ちやすい疾患でもある。そのため、最終的には治癒に至るとしても、そこまでの間、いかに患者への負担を少なく、また不安を除きながら治療を続け得るかは、治療にあたる医師に委ねられた課題である」とあります。ぜひ治癒への希望をもって、治療を続けてほしいと思っています(葉山先生)

  1. Maurer M et al.:Allergy. 2011;66(3):317-330
  2. Maurer M et al.:Allergy. 2017;72(12)2005-2016
  3. 日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改訂委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌:128(12),2503-2624,2018
提供 ノバルティスファーマ株式会社
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