[「難治性うつ病」の治療に新たな選択肢] 2013/09/06[金]

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 うつ病は、気分が落ち込み憂うつな気持ちになる、やる気が出ないなどの精神的な症状に加えて、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的症状も現れることがあり、患者さんのQOLを大きく低下させます。うつ病の患者数は増加傾向にあり、この15~20年の間で患者さんの数は3倍以上になったほか、さらに国民の約16人に1人は生涯に一度はうつ病を発症する可能性がある(いずれも厚労省調べ)疾患です。
 多くの患者さんが悩んでいるうつ病治療に2013年、新たな選択肢が認可されました。「良くならない」「治りにくい」うつの症状の改善が期待される新しい治療法について、自身も最前線で患者さんの治療にあたっている、国際医療福祉大学医療福祉学部教授の上島国利先生にお話をうかがいました。

3人に1人の患者さんが、抗うつ薬による治療でも症状が改善しない「難治性うつ病」に

国際医療福祉大学医療福祉学部教授上島国利先生
国際医療福祉大学医療福祉学部教授
上島国利先生

 うつ病は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで引き起こされると言われています。神経伝達物質には、ノルアドレナリンという意欲に関係するものと、セロトニンという安らぎに関係するものがあります。うつ病になると、この2つの神経伝達物質の分泌量が少なくなり、意欲が低下したり、不安感、焦燥感などが生じると言われています。
 うつ病の治療方法としては、休養・環境調整、薬物療法、認知療法や対人関係療法などの精神療法を中心に行われています。最も多く行われているのが薬物療法です。そのうつ病の薬として現在は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬が主要な薬として処方されています。
 うつ病は、薬物療法の場合、おおよそ3~6ヶ月の治療で改善が見られることが多く、6割以上の患者さんは、抗うつ薬を服用することで、症状が次第に改善していきます。しかし、約3人に1人の割合で、抗うつ薬を服用しても思ったような効果が見られず、治療が長期にわたってしまう患者さんがいます。
 患者さんへの薬剤への印象を尋ねたアンケートでも一定数の患者さんから『効果がない』という不満が挙がっています。『病院を受診しているのにうつが良くならない』『抗うつ薬を飲んでいるのにうつが治りにくい』と感じてしまっている現状があります。
 このように、ある一定期間に抗うつ薬などの薬物療法を中心とした治療を行っても症状の改善が見られないうつ病は『難治性うつ病』または『治療抵抗性うつ病』と呼ばれています。患者さんにとっては「薬を飲んでもよくならない」ことから、医師との信頼関係が崩れてしまい、複数の病院・クリニックを訪れてしまう“ドクターショッピング”の原因になっているとも言われています。

気分障害総患者数の推移

[厚労省患者調査をもとにQLife編集部にて再構成]

さまざまな視点から診断を再検討する難治性うつ病の治療

 難治性うつ病に対しては、さまざまな視点で診断を再検討して治療にあたります。具体的には症状や、医師と患者さんとの関係などの心理的要因などをもう一度見直したり、新たな認知行動療法の導入、さらには動脈硬化や甲状腺機能の異常といった身体の他の部位の疾患の可能性の検討などがあります。
 薬物療法についても同様ですが、まずは現在処方している薬剤が十分量であるか、十分期間投与されてるか、が重要です。それでも効果が認められない場合に、薬剤の変更のほかに、付加療法という治療法を導入する場合もあります。付加療法には併用療法と増強療法の2種類があり、前者は最初の抗うつ薬の効果増強のため、別の抗うつ薬を加える治療法が一般的です。一方、後者は抗うつ薬以外の異なる種類の薬剤を追加し、従来以上の効果を期待する治療法です。
 これら付加療法のうち、今年新たに使用可能となった増強療法の組み合わせが抗うつ薬と非定型抗精神病薬を組み合わせる増強療法です。

新しい治療法が「難治性うつ病」治療の可能性を広げる

増強療法とは

 このたび新たに可能となった治療法は、これまでの治療で服用している、セロトニンやノルアドレナリンに作用するSSRI/SNRIなどの抗うつ薬に、ドパミン系に作用する非定型抗精神病薬を組み合わせることで、抗うつ効果をさらに高めることが期待されています。
 近年良く使われている非定型抗精神病薬は複数ありますが、現在、うつ病治療でこの増強療法が可能な非定型抗精神病薬はアリピプラゾールのみです。この「抗うつ薬+アリピプラゾール」の増強療法は既にアメリカでの臨床試験で効果が確認されており、アメリカの薬剤を認可する機関であるFDAからうつ病の増強療法として認可されています。その療法がこのたび日本でも可能となり、医師の間からもその有用性が期待されています。実際、私の場合でも、これまでの抗うつ薬にアリピプラゾールを加えた増強療法を行ったところ、短期間で症状が改善された患者さんもいらっしゃいます。

主な新規抗精神病薬の適応症
成分名 アリピプラゾール オランザピン クエチアピン ブロナンセリン ペロスピロン リスペリドン
製品名 エビリファイ ジプレキサ セロクエル他 ロナセン ルーラン リスパダール他
統合失調症
双極性障害
(躁状態)
うつ病・
うつ状態

※既存治療で十分な効果が認められない場合に限る

[各薬剤の添付文書情報をもとにQLife編集部にて作成]

しっかりと自分の状況を伝え、積極的に治療を行いましょう

 うつ病がなかなか治らないということは、普段の生活になかなか戻れないために、QOL(=生活の質)などいろいろな悪影響が生じるだけでなく、患者さん自身が出口の見えない状況で症状がさらに悪化してしまう可能性も少なくありません。そのためにも、自分自身の今の状況をしっかりと伝え、医師と共に適切な治療プランを作っていくことが必要です。今回の増強療法はもちろんのこと、それ以外の方法も取り入れることも考慮に入れながら、ご自身に合った治療で、早期の回復を目指してください。

上島国利(かみじまくにとし)先生

上島国利(かみじまくにとし)先生 国際医療福祉大学医療福祉学部 教授
慶應義塾大学医学部卒業。昭和41年慶應義塾大学医学部精神神経科入局。平成元年杏林大学精神神経科教授。平成2年昭和大学医学部精神医学教室教授。平成18年より現職。日本臨床精神神経薬理学会、日本精神科診断学会、日本総合病院精神医学会(ともに名誉会員)、日本うつ病学会名誉会員ほか。「躁うつ病の臨床」「うつ状態・うつ病Q&A」「抗うつ病の知識と使い方」など著書・編書多数。

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