ドライマウスが3か月以上続いたら…シェーグレン症候群のサインとは
[シェーグレン症候群] 2015/11/27[金]
※ドライマウス研究会「Q&A 口のかわきの原因は何ですか?」を基にQLife編集部が作成
唾液の分泌が少なくなり、口の中が乾燥するドライマウス。「歳だから仕方ない」と思い込んでいませんか?ドライマウスの原因は、薬の副作用や全身の病気によるものなどさまざまで、内科や婦人科、膠原病科などで治療を行うこともあります。ドライマウスの原因となる病気の中で、近年注目されているのがシェーグレン症候群です。
※ドライマウス研究会「Q&A 口のかわきの原因は何ですか?」を基にQLife編集部が作成
シェーグレン症候群は、本来体を守る免疫が、誤って自身の唾液腺や涙腺を攻撃してしまう、自己免疫疾患のひとつです。患者さんの多くにドライマウスのほか、目が乾くドライアイや関節痛、疲れやすい、やる気が出ないといった症状がみられます。患者さんの大多数が女性、それも中高年に集中しているのも、この病気の特徴です。
「ただ口が乾いているだけ」と我慢してしまいがちなドライマウスですが、唾液の分泌が低下することで別の病気のリスクが高まることをご存知でしょうか?
国内で有数のドライマウス専門外来を行っている、鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎先生に、唾液の重要な働きと受診の目安についてお話を伺いました。
唾液分泌の低下がもたらすリスク
唾液には、水分のほかに、消化酵素や抗菌物質、成長因子などさまざまな成分が含まれており、その分泌量は健康な成人で1日に約1~1.5リットルにのぼります。唾液が少なくなると、乾燥によって口の中や舌に違和感や痛みを感じるだけではなく、唾液がもつ自浄作用が低くなり、虫歯や歯周病などのさまざまな病気のリスクが高まります。消化酵素が少なくなることで、吐き気や消化不良を引き起こすこともあります。
また、特に中高年で気をつけなければならないのは、食べ物などが誤って肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎です。厚生労働省の平成25年、人口動態統計によると、肺炎は日本人の死因の第3位で、その95%以上が高齢者です。このようにドライマウスには、「たかが口の乾き」では済まされないリスクがあるのです。
目安は3か月以上続く乾燥症状
診断の目安として、一時的に精神的ストレスなどがあって口が乾いているようなケースもありますので、「3か月以上口の乾きや目の乾きが続いているか」を診るようにしています。また受診の目安としては、よく患者さんに「日常生活に支障をきたすようになったら受診してください」と話しています。口の機能として『話す、食べる、味わう、歌う、笑う』などありますが、これらのうちひとつでも障害が出てきたら日常生活に支障があると考えましょう。
シェーグレン症候群によるドライマウスは、早期の対処で改善できる場合も
シェーグレン症候群によるドライマウスは早いうちに治療をすれば、お薬を飲んだりすることで残っている唾液腺の働きを促して唾液の分泌を促進し、改善できる場合があります。シェーグレン症候群が疑われる場合、唾液や涙の分泌量や血液検査、生検病理組織検査などを組み合わせて検査し、必要に応じて口や目などの不快な症状をやわらげる対症療法を行います。
まずはかかりつけ医に「今、困っていること」をきちんと伝えましょう
シェーグレン症候群をそのまま放っておくと、日常生活への支障はもちろん、口の乾きなどから人と話しにくくなって、うつや不安神経症を発症したり、ストレスからますます唾液が出にくくなってしまう場合があります。また、味覚障害がある場合、「料理を作る際に味がわからない」、「会食に出かけても昔味わったような美味しさを感じられない」といったことを訴える患者さんもおられます。気になる方はかかりつけの医師に症状とともに「私はシェーグレン症候群ではないでしょうか?」と聞いてみてください。唾液分泌量や血液検査などを行い、診断にもつながります。ドライマウスなどの症状が気になるときは、まずかかりつけ医に相談してみましょう。
提供 キッセイ薬品工業株式会社
鶴見大学歯学部 教授
斎藤 一郎先生
ドライマウス研究会(会員数約4300人)代表、日本抗加齢医学会(会員数約8000人)副理事長。
専門は自己免疫疾患ならびに外分泌腺の障害・修復機構の解明。東京医科歯科大学難治疾患研究所、徳島大学等を経て2002年より現職。
鶴見大学歯学部附属病院にドライマウス外来を開設。2008年より4年間、鶴見大学歯学部附属病院の病院長を務め、現在も外来を担当している。
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