生活の質を低下させるシェーグレン症候群
[シェーグレン症候群] 2016/01/15[金]
口や目が乾くドライマウスやドライアイといった症状のほか、関節痛、疲れやすいといった全身症状がみられることもあるシェーグレン症候群。なかでもドライマウスは8割以上の患者さんにみられ、口内の痛みや味覚障害などを引き起こすことによって生活に大きな影響を及ぼします。また、シェーグレン症候群は女性に多く、40~70代が約8割を占める病気*ですが、この年代は家族構成の変化などからライフスタイルの変化が起こりやすく、また女性ホルモンの分泌低下にともなって、体調の変化も起こりやすい年代です。
そこで今回は、ドライマウスの専門医、鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎先生に、ドライマウスが生活に及ぼす影響や症状の改善のために、日ごろから気をつける点についてお伺いしました。
ドライマウスは生活の質にも影響が大きい
シェーグレン症候群の代表的な症状は、口が乾くドライマウスと、目が乾くドライアイです。その他にも膣や皮膚の乾燥や、疲れやすいといった全身症状が現れることもあります。ドライマウスになると味覚障害によって食事に制限がでたり、頻回な飲水を必要とすることから、美術館などの飲食ができない場所への外出ができないなど、多くの影響がでてきます。また、乾きは日中だけでなく夜間も続くため、夜中に口が乾いて目が覚めてしまい、睡眠が十分にとれないと訴える患者さんもいます。ドライマウスは「単なる口の乾き」ではなく、生活の質にも影響を及ぼす症状なのです。
複数の原因によって悪化するドライマウス
シェーグレン症候群によるドライマウスに加えて、複数の原因が絡みあって口の乾きが悪化する場合があります。最も多いのは薬の副作用によるものです。血圧、アレルギーや不安などに対して処方される薬の中には、副作用として口が乾くものが多くあります。また、更年期になると女性ホルモンの分泌低下にともなって、乾燥症状が起こりやすくなります。ストレスを強く感じることも唾液が減る原因のひとつです。
また、シェーグレン症候群による不安から抗不安薬を服用し、その副作用で更にドライマウスがひどくなってしまうといった悪循環がみられることがあります。ドライマウスの原因はひとつとは限らないため、普段服用している薬や病気のことを医師にしっかり伝えましょう。
薬や認知行動療法などで治療を
シェーグレン症候群には根本的な治療法がないため、症状をやわらげるための対症療法が基本です。多くの患者さんは小康状態を維持していますが、まれに重篤化する方がいるため、半年に1回は血液や唾液の検査をして状態をチェックします。
ドライマウスの治療では、唾液の分泌を促す薬をはじめ、水分補給や人工唾液スプレー、ジェル、軟膏などで乾燥症状をやわらげます。ドライアイでは、涙を補充したり安定化させるための目薬や、涙の蒸発を防ぐカバー付き眼鏡の着用、目頭にある涙の排出口である涙点を小さな栓でふさぐ(涙点プラグ)といった治療などが行われます。そのほか、気持ちを楽にしたり行動をコントロールする認知行動療法やライフスタイルの提案などによって、患者さん自身での症状コントロールが上手になることで、薬の量が減っていったり、徐々に唾液の量が増えていく患者さんもいます。
生活習慣を変えるだけで症状が改善する場合も
ドライマウスの改善には、薬などによる治療とともに生活習慣の改善もとても大きな役割を果たします。口の中を清潔に保つのはもちろん、十分な睡眠をとる、外出時には水分補給のための水筒や目薬を持ち歩く、食事のときは刺激物を避け、よくかむといったこともぜひ心がけてほしいと思います。
口の乾きを起こす病気はシェーグレン症候群の他にも
乾きの原因がシェーグレン症候群によるものなのか、それとも他の原因によるものか特定するためにも、医師による正しい診断が必要です。自覚症状に合わせて、ドライマウスならドライマウス外来、歯科、口腔外科や耳鼻咽喉科、ドライアイなら眼科、乾きに加えて関節の痛みや繰り返す発熱がある場合はリウマチ・膠原病内科や内科など専門医を受診することが大切です。
心身の健康状態を把握するためのメッセージにもなる唾液
シェーグレン症候群によるドライマウスの場合、他の原因によるドライマウスより症状が重いにもかかわらず、まだ医療機関を受診していない潜在患者さんが多いと考えられます。私は、口はさまざまな健康のバロメーターであり、唾液は心身の状態を反映するメッセージと捉えています。シェーグレン症候群の患者さんは、唾液の分泌量が少ないことで悩むことが、さらに唾液量の低下につながってしまうこともあります。ドライマウスなどの症状があったりシェーグレン症候群かもしれないと悩んでいる方は、乾燥による痛みや不快感の軽減が可能ですので、ぜひ受診することをおすすめします。
提供 キッセイ薬品工業株式会社
鶴見大学歯学部 教授
斎藤 一郎先生
ドライマウス研究会(会員数約4300人)代表、日本抗加齢医学会(会員数約8000人)副理事長。
専門は自己免疫疾患ならびに外分泌腺の障害・修復機構の解明。東京医科歯科大学難治疾患研究所、徳島大学等を経て2002年より現職。
鶴見大学歯学部附属病院にドライマウス外来を開設。2008年より4年間、鶴見大学歯学部附属病院の病院長を務め、現在も外来を担当している。
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