[シェーグレン症候群] 2016/07/12[火]

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日本シェーグレン白書 シェーグレン症候群は、40~70代の女性に多い自己免疫疾患のひとつです。口が乾くドライマウスや、目が乾くドライアイといった乾燥症状のほか、関節痛や疲労感がみられることもあります。本来、体を守るために備わっている免疫に異常が起こり、自分自身の唾液腺や涙腺などを誤って攻撃してしまう病気ですが、明らかな原因は特定されておらず、2015年1月から指定難病になりました。

 治らないことへ不安を抱える人が多いシェーグレン症候群と、どう付き合っていけばよいのでしょうか。日本シェーグレン症候群患者会が患者実態を調査報告した「日本シェーグレン白書」を基に、日本大学医学部 内科学系 血液膠原病内科学分野 部長 主任教授の武井正美先生に、お話を伺いました。

診断されていない患者は公表の3倍以上もいる可能性が

 日本でのシェーグレン症候群患者数は厚生労働省研究班の報告では約7万人とされていますが、医療機関を受診していない潜在患者も含めると、その数は20万人以上とも考えられ、その数は実に3倍以上にもなります。

 シェーグレン症候群は、女性の更年期と重なるような時期から発症することが多い病気で、更年期障害の乾燥症状と同一視されてしまうことが多く、検査や健診をしても正常だといわれてしまうなど、適切な診断がなされなかったり、患者さん本人も「歳のせい」と思い込んでしまっていることが考えられます。また、口や目の乾きを“医師に相談するほどでもない”と我慢している患者さんも多くいます。

関節リウマチ患者さんの約20%がシェーグレン症候群を合併

 シェーグレン症候群は、単独で発症する一次性と、関節リウマチなど膠原病に合併する二次性があり、関節リウマチ患者さんの約20%は、シェーグレン症候群を合併するといわれています。

 関節リウマチは治療法が進み、コントロールできるようになってきていますが、関節リウマチの治療をしても、シェーグレン症候群の症状はあまりよくなりません。また膠原病は命に関わるため、症状が急激に現れる時期など、症状を可能な限り早期に抑えるよう強く治療しますが、シェーグレン症候群の場合、副作用の方が強くなってしまうことがあるので、治療のバランスからこのような強い治療ができないという面があります。

92%の患者さんが「不安あり」、「病気の悪化」を最も懸念

 シェーグレン症候群の患者さんの実態を調査した「日本シェーグレン白書」で、不安やつらいことを209名にアンケート(複数回答)したところ、92%の患者さんが現在不安が「ある」と回答しました。その内容は、「悪化進行」が最も多く141名、次いで「日常動作の低下」、「老後」を挙げる人が多くいました。つらいことについては、「治らない」と答えた方が134名と圧倒的に多く、次いで「痛み」、「周囲の無理解」という結果でした。

 「シェーグレン症候群には根本的な治療法がないため、一生病気と付き合っていく不安などから、心理テストを行うとほとんどの患者さんがうつ傾向を示します。その傾向が強いと、体中に痛みが出る場合があり、慢性疼痛症や線維筋痛症を約30%の患者さんが合併しているというデータもあります」(武井先生)

不安なことグラフ現在つらいことグラフ

※日本シェーグレン白書「不安やつらいこと」を基にQLife編集部で作成

症状に応じて不快な症状をやわらげる対症療法が中心に

 シェーグレン症候群の治療は、現状では不快な症状をやわらげる対症療法が基本です。ドライマウスに対しては唾液の分泌を促す薬や人工唾液スプレー、ジェル、軟膏などで口内の乾燥症状をやわらげます。ドライアイでは、なるべく防腐剤の入っていない目薬で涙を補充する、涙液の分泌を促進したり、眼の表面をおおう涙液膜を安定化させる目薬、涙の蒸発を防ぐカバーがついたドライアイ眼鏡の使用、涙の排出口である涙点を小さなプラグで栓をする涙点プラグといった治療をします。

 シェーグレン症候群では、ドライマウスやドライアイだけではなく、さまざまな臓器の不調や血液検査の異常を示す場合があります。この場合は重症度に応じて通常の膠原病と同様、ステロイドや免疫抑制剤などによる治療を行います。関節リウマチで起こる関節炎と、シェーグレン症候群で起こる関節炎を鑑別するのは難しいケースもあるため、通常の治療であまり症状が改善しなければ、関節リウマチとして生物学的製剤を使うこともあります。ただし、シェーグレン症候群の確定診断の前に、膠原病の治療としてステロイドや免疫抑制剤を使用すると、シェーグレン症候群の症状が隠れてしまい、正しい診断ができなくなってしまうことがあるので注意が必要です。

生活の質を高く保つために

武井先生顔写真 シェーグレン症候群には根治療法がないため、不安が増大してしまう方が多くいますが、必要以上に不安を抱く必要はありません。適切な医療機関を受診して治療することで、不安や症状の軽減が可能です。またシェーグレン症候群になると、唾液が出なくなってしまうことで虫歯になりやすくなります。早い段階から歯科の主治医などに予防歯科的なケアをしてもらうことは、QOL(生活の質)を保つうえで大切なことです。また、快適な生活を送るためには、ドライマウスやドライアイなどの不快な症状への対策も必要です。

 シェーグレン症候群ではさまざまな症状が現れるため、不安を感じることがあるかもしれません。症状のことや治療方針について分からないことがあったら歯科、耳鼻科、眼科、膠原病リウマチ内科などの主治医に質問し、不安を取り除いて治療に取り組みましょう。

提供 キッセイ薬品工業株式会社

日本大学医学部 内科学系
血液膠原病内科学分野 部長 主任教授

武井 正美先生

専門分野は、膠原病リウマチ学。対象疾患は、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織病、ベーチェット病、血管炎症候群、抗リン脂質抗体症候群、リウマチ性多発筋痛症など。
アメリカリウマチ学会正会員、アメリカ免疫学会正会員、日本内科学会、日本リウマチ学会、臨床免疫学会評議員、日本シェーグレン症候群学会理事、「日本シェーグレン症候群患者会」事務局長、NPO法人 シェーグレンの会 副理事長。

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