Web市民公開講座『いっしょに学ぼう 膿疱性乾癬』レポート
[特集] 2024/07/31[水]
2024年5月26日(日)、希少疾患である膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)について理解を深めるためのWeb市民公開講座『いっしょに学ぼう 膿疱性乾癬』が開催されました。
本講座では、日本医科大学大学院医学研究科 皮膚粘膜病態学分野 大学院教授の佐伯秀久先生を座長に迎え、日本医科大学千葉北総病院 皮膚科 講師の萩野哲平先生による『膿疱性乾癬ってどんな病気?』、NPO法人 東京乾癬の会P-PAT 会員の河﨑玲子さんによる『膿疱性乾癬と私』の2つの講演の後、Q&Aセッションが行われました。
本記事では、当日の講演やQ&Aセッションの内容についてレポートします。
提供:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
佐伯 秀久 先生
日本医科大学大学院医学研究科 皮膚粘膜病態学分野 大学院教授
萩野 哲平 先生
日本医科大学千葉北総病院 皮膚科 講師
河﨑 玲子さん
NPO法人 東京乾癬の会P-PAT 会員
『膿疱性乾癬ってどんな病気?』萩野哲平先生
膿疱性乾癬とは
発疹や膿疱が体の一部に出る限局型の膿疱性乾癬と、全身に出る汎発型の膿疱性乾癬があり、汎発型は厚生労働省が定める指定難病となっています。汎発型の膿疱性乾癬は、英語のGeneralized Pustular Psoriasisの頭文字をとってGPPと呼ばれることもあります。
GPPはとてもまれな病気で、乾癬全体の約1%といわれており1)、国内では約2000人の患者さんがいます(2020年現在)2)。
膿疱性乾癬の症状
膿疱性乾癬の原因
感染症や妊娠、薬の影響で悪化するという報告もあります3)。
膿疱性乾癬の検査
膿疱性乾癬かも?と思ったら
膿疱性乾癬に合併しやすい病気
膿疱性乾癬の治療法
医療費補助制度
日常生活の注意点
患者さんと医師とのコミュニケーション(患者さん実態調査より)
調査の結果によると、最終的に期待する/目指す皮膚の状態について、「完全に綺麗な皮膚」と回答した患者さんは56%だったのに対して医師では41%にとどまっており、患者さんと医師とで最終的に目指している症状改善の程度が異なっている可能性が示唆されています。
患者さんにとって満足のいく治療を行うためには、患者さんと医師の意見が一致していることが大切です。私たち医師は、患者さんに納得して治療を受けていただき、また悩みを少しでも減らしていただきたいと考えておりますので、何か気になることや悩みがあれば、遠慮せずに相談していただければと思います。
まとめ
膿疱性乾癬は早期発見と治療が重要です。気になる症状があればためらわず、皮膚科専門医を受診しましょう。
積極的なコミュニケーション
些細なことでも遠慮をせずに医師や看護師に相談しましょう。
最新情報の収集
新しい治療法の研究が日々進んでいます。医師や看護師さんから情報を得て、適切な治療を受けましょう。
家族や友人のサポート
家族や友人のサポートは治療の一助となります。身近な人と情報を共有し、サポートを受けましょう。
皮膚症状で困っている患者さんがいらっしゃいましたらぜひ当施設も含めて、お近くの病院の先生、かかりつけの先生に悩みを相談していただければと思います。
『膿疱性乾癬と私』河﨑玲子さん
症状のはじまり
症状の悪化
光線療法、飲み薬、塗り薬による治療を始め、当初は効果が得られていたものの、次第に全身の紅斑と膿疱、発熱、痛み、むくみが出るなど、症状が悪化し始めました。そして診断名が膿疱性乾癬に変わりました
全身に皮疹が出るようになると、薬を塗るのに20分以上かかり、塗った後はベタベタで衣服が体に張り付いてしまう状況でした。頭にも皮疹があったので、長い間美容院にも行けませんでしたし、衣服が触れるところは皮疹が出るため、衣服でこすれないように柔らかい綿素材の大きめサイズの服しか着られませんでした。人目が気になり、「見られたくない、隠したい」といつも思っていて、外出する気持ちにはなれませんでした。皮膚が焦げるような灼熱感や痛みにも悩みました。やけどのようにジリジリと痛く、炎症で熱をもっていたので保冷剤を当てていました。痛みで眠れない、ベッドに敷いた保冷剤を夜中に何回も替えなければいけないこともあり、睡眠不足に陥りました。
また、鱗屑(りんせつ)や落屑(らくせつ)にも苦しみました。着ていた衣服に付着した剥がれた皮を集めると手のひらいっぱいくらいになりました。剥がれた皮が自宅のいたるところに落ちてしまっている状態だったので、よその家に上がることにはとても抵抗があり、できませんでした。気分が落ち込み、QOL(生活の質)が下がり、絶望さえ感じていました。
新たな治療の開始から現在まで
治療を続ける上での、気持ちの支え
主治医の先生は「今はいい薬がたくさんあるから大丈夫」といつも明るく話しかけてくださり、前向きな気持ちになれました。治療効果が出たときも一緒に喜んでくださいました。
趣味・友人
つらいときに没頭できる趣味があると救われます。私の場合は書道でした。書道サークルの友人の気遣いや励ましもありがたかったです。
家族
通院の送り迎えや、家事の手伝いをしてくれました。つらいときに弱音を言える妹にも助けられました。
日常での注意・工夫
日常生活では、ストレスをためないこと、規則正しい生活をすること、感染症対策をしっかりすることを心がけています。また、肌触りのよい服を選び、無添加の化粧品を選ぶなど、スキンケアにも気を付けています。
さいごに
膿疱性乾癬はまれな病気なので、どうしても孤独感や不安感がつきまといます。そのようなとき、同じ病気の方々とつながることが治療への大きな力になります。もし一人ぼっちだと感じることがあれば、患者会などをのぞいてみるのもよいと思います。
周囲の方へ
膿疱性乾癬は「うつる病気」と誤解されがちです。患者は周りに不快感を与えていないかといつも心配になり、皮疹を隠してしまいます。一人でも多くの方に、うつらない病気だと理解していただけたらありがたいと思います。
自分も膿疱性乾癬なのかもと不安に思っている方へ
一人で悩まずに、早めに専門医を受診することをおすすめします。あきらめないでほしいとお伝えしたいです。私自身も再発の不安に襲われることもありますが、医療を信じ、そのときそのときで自分に一番合った治療法を、主治医の先生と相談しながら選択していきたいと思っております。
Q&Aセッション
左から河﨑さん、萩野先生、佐伯先生
また、『GPPひろば』のサイトから患者さん向けのアプリがダウンロードできますので、こうしたツールを活用し、症状の経過を記録したり、同じ症状の患者さんと情報を共有したりすることで、再発した場合に早く対応できるようになるのではないかと思います。
1)山本俊幸 編. 乾癬・掌蹠膿疱症 病態の理解と治療最前線. 東京: 中山書店; 2020.
2)厚生労働省. 令和2年度衛生行政報告例(令和2年度末現在)
3)Morita A, et al. JEADV Clinical Practice. 2023; 2: 261-272.
本研究は日本ベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。
4) Yagi N, Tada Y, et al. Future Rare Dis. 2023; 3(2).
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。
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