[もっと知っておきたいADHD(発達障害)] 2014/01/24[金]

取材協力/日本イーライリリー株式会社 、記事は「あんふぁんWeb」より転載

 発達障害とは、乳幼児期から青年期に至る成長発達の過程で何らかの脳の機能的な問題から生じるものです。
 そのひとつであるADHD(注意欠如・多動性障害)は、学齢期の子どもの3~7%にみられ、適切な支援がない場合、本来の能力が十分に発揮されず、一日を通じた日常生活や学習、将来的には就労等でつまずくことがあります。
 ADHDにどうやって気づき、どこへ相談に行けばいいのか、その対応法は?

特性は年齢や発達に不つりあいな「不注意」「多動性」「衝動性」

 ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴は、集中力が続かずすぐに気が散る、忘れっぽいなどの「不注意」と、落ち着きがなくじっとしていられない「多動性」、思いついたら考える前に実行してしまう「衝動性」などが挙げられます。こうした行動は小さい子どもにはよくみられることですが、その程度や頻度が並はずれていてADHDと診断されるような場合でも、周囲には障害だとは認識されないケースがあります。「乱暴な子」とか「悪い子」などと思われてしまいやすく、親の育て方が悪いなどと誤解を受けることもあります。しかし、ADHDは育て方やしつけが原因ではないし、本人の努力が足りないわけでもありません。脳の発達の特性が関係しているのです。

専門家に聞きました!
うちの子、ちょっと落ち着きがないけれど小学生になったらきっとうまくいく…
と期待しつつ不安に思う親に向けて

 子どもの個性はさまざまです。中には、大部分の子どもが苦もなくできることが、その子にとっては難しく、とても困っている場合があります。親御さんや周りの人、先生がそのことに気づいて適切なサポートをしてあげることが大切です。そこで先生に気づくきっかけやタイミング、サポートについて聞きました。

市川宏伸先生

一般社団法人 日本発達障害ネットワーク 理事長 市川宏伸先生
専門分野:精神疾患の分子遺伝学、神経生化学、薬理遺伝学、臨床精神薬理学
経歴:北海道大学医学部卒業。東京都東村山福祉園医務長、東京都立梅ヶ丘病院院長などを経て、現在に至る。日本発達障害ネットワーク理事長、「ADHD保護者調査」の監修者

Message1ADHDに気づくきっかけは、集団生活

 ADHDの症状は、個人差があり年齢によってもそれぞれ違います。例えば、一口に落ち着きがないといっても、じっと座っていられずすぐに立ち上がってあちこちに歩きだしてしまうケースと、座ってはいるけれどきょろきょろとして集中できないケースなどがあります。また、言われたことをすぐに忘れてしまったり、今やっていたことを放り出して興味の対象がたちまち次に移ってしまう、ちょっとしたことでカーッとなりやすいなども特徴的な状態です。このような特性が一つではなく、いくつかみられるのがADHDに気づくポイントといえます。こういう様子は普通の子にもみられることがあるのですが、幼稚園や学校など集団行動が増える頃から何らかの問題が目に見えてくることが多いといわれています。実際に、「わが子は少し落ち着きがないのではないかと思っていたけれど、幼稚園に行くようになってみんなと一緒の行動ができない、友達が作れないなど集団行動になじめないのが心配」と、専門の機関に相談をしてADHDと診断される子も珍しくありません。ADHDに気づくきっかけは、集団生活にあるというわけです。

Message2その子にとって一番いいサポートを探っていく

 ADHDの子は、集団生活の中でみんなと同じことを同じようにすることができないために注意されることが多くなり、自信や自尊心を失ってしまいがちです。学校と家庭、一日を通して苦労することが多いです。しかし、適切な対応をしてあげればその子らしさを伸ばしていくことができるし、小学校で普通の子と一緒に勉強していくこともできます。学校にあがる前に、幼稚園や保育園の先生にADHDのことをよく知ってもらい、この子の場合は、どういうやり方をすればみんなとうまくやっていけるか考える必要があります。例えば、強く怒られたと思わせないような話し方を工夫する。叱ってはいけないというのではありません。その子の得意なところを見つけて見守っていく、こういうところは苦手だけれどここなら負けない、すごいねとほめてあげることが大事です。とはいえ、本に書いてある通りには対応できないこともたくさんあるでしょう。ADHDの子の調子には波があります。担任の教諭がかわるとたちまち調子が悪くなるケースもよくあります。一人ひとり、その都度、その子にとって一番いい方法は何かを探りながらサポートしていく必要があります。

コラムまず大事なのは親や先生の正しい理解 支援の基本は、教育・療養的支援

 ADHDの主な症状である「不注意」「多動性」「衝動性」の頻度や程度をできるだけ減らし、本人や周囲の人が困っている点を改善して、その子らしく生きられるように手助けをするのがADHDの治療の目標です。
 本人の生きにくさを取り除き、他の子どもたちと同じように学んだり遊んだりすることができるように適切にサポートしていくのです。まず大事なのは、保護者や幼稚園・学校関係者など周囲の人たちがADHDについて正しく理解すること。その上で環境調整や心理療法などの教育・療育的な支援を行います。集団の中でうまく適応するためのノウハウを本人が学ぶソーシャルスキルトレーニングと、保護者が子どもの問題行動にどのように対処したらいいかを学ぶペアレントトレーニングが代表的です。しかし、それだけでは学校や家庭での不適応が改善しない場合には、薬物療法との組み合わせも選択肢となります。
 薬の服用は、ADHDの子どもが自らをコントロールすることや、周囲との協調性を学ぶための手助けとなります。

Message3相談・受診は早い方が良い

 ADHDの子を持つ保護者を対象とした調査によると、現状ではADHDと診断された年齢は、平均6.7歳、薬物療法の開始は8.2歳となっていました。(棒グラフ参照)

 しかし、わが子がADHDと診断を受けた保護者に振り返って、理想の薬物療法開始時期をうかがうと、41%の保護者が「就学前」と回答されています。(円グラフ参照)

 小学生になればきっとうまくいくのではないかと期待を持ってそのままにしていたけれど、うまくいかない、振り返ってみるともっと早く障害だと知りたかった、もっと早くから薬物療法をしていれば、学校や友人関係、周囲とうまくおりあえたと思うこともあるようです。なお、薬物を使用できる目安は6歳からです。わが子の発達に問題があるのではないかと気になったら、できるだけ就学前に、まず地域の保健センターや発達障害者支援センター、児童相談所、かかりつけの小児科医などの専門機関に相談することを勧めます。その後、必要ならば専門の医療施設に紹介してもらえるでしょう。症状が激しく現れる人は見つかりやすいけれど、大人になるまでADHDとは分からないまま、本人がその能力を十分に発揮できなかった、長い間生きづらい経験をしてきたという人もたくさんいます。できれば就学前には気づいてあげて、適切な対応・支援を受けることが、子どもにとって最も大事です。

Message4薬物療法に期待できること

 いろいろなことをしたけれど、やっぱりうまくいかないときには薬物療法も選択肢となります。保護者が希望すれば、集中力を高め、多動も抑える薬を使います。現在では比較的安全性において懸念の少ないお薬も出てきましたし、服用しやすい剤型も開発されています。 実際に薬物療法をした場合に、集中力が高まり、結果として、例えば文字がきれいに書けるようになるといった変化がみられることがあります。(図1参照)
 しかし、薬を使えばADHDは必ずよくなるとは限りませんが、飲み始めたらきちんと継続して服薬しましょう。ADHDは適切な時期に適切な支援を受けることが肝心です。信頼できる専門家・主治医と十分にコミュニケーションをとって、その子に合った支援・治療を選んで、その子らしいのびのびした成長をサポートしましょう。

図1.書字における内服前後の変化

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