[統合失調症の治療と、よくある悩みの解決法] 2010/11/19[金]

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横浜市立大学 市民総合医療センター 病院長 平安良雄先生

 統合失調症の患者さんの約半数は、治療前と治療後で体重増加が確認されるようです。このなかには、病気で痩せてしまっていた方が回復して体重も健康な状態に戻ったというケースもありますが、一方では、「最近、体重が増え続けている」「太ってしまった」と悩む患者さんもいます。私の印象では、だいたい2割くらいの患者さんが太ったことに悩む、という印象です。ただし一概に太ると言っても、その感じ方には個人差があります。1~2Kg体重が増加しただけでも、深刻に悩む人もいれば、5~10Kg体重が増加してもあまり気にしない人もいますから。それでも、急激な体重増加には気をつけるに越したことはありません。

なぜ「太る」のでしょうか。

 患者さんが太る要因として、「病気の症状」「薬の副作用」「病状の改善」の3つが挙げられます。まず「病気の症状」から説明します。統合失調症の症状を、陰性症状と陽性症状という2つに分けた場合、典型的な陰性症状である「意欲の低下」や「活動性の低下」が起きている際には、運動量やエネルギー消費が少なくなります。意欲がわかず、引きこもりがちになると、日常的に運動をほとんどしなくなってしまいますから、カロリー消化が不足するわけです。
 2つ目の「薬の副作用」とは、抗精神病薬による体重増加作用と食欲亢進(しょくよくこうしん:過度の空腹感をおぼえること)作用を指します。そのメカニズムは充分に解明されているわけではありませんが、ヒスタミンという神経伝達物質が伝わるしくみの一つを薬が抑えてしまうという説が有力です。体重を増やしやすいタイプの薬剤は、ヒスタミンの受け皿の1種であるH1受容体の働きを阻害することがわかっています。
 そして最後の3つ目は、「病状の改善」です。回復してきちんと食事が摂れるようになった結果、それが体重増加につながっているケースです。
 このように、患者さんの状況や治療内容によって「太る」背景はさまざまなので、主治医の先生とよく話したうえでないと、太った理由を推測するのは困難なのです。

「太る」と、治療や生活上で、どんな影響があるのでしょうか。

 大きく3つあると思います。まずは直接的な治療への影響です。体重増加が気になり始めると、勝手に服薬を中止したり、主治医に黙って服薬の量や頻度を減らしてしまう患者さんがいます。これでは、統合失調症をなかなか治せなくなってしまいます。特に、薬を勝手に止めることは危険ですから、絶対に避けていただきたいと思います。
 2つ目は、生活面への影響です。太ることにより身体機能の低下、社会性の低下や仕事への影響など、患者さん自身のQOL(生活の質)を低下させ、社会復帰にも悪影響を与えるケースがあります。特に女性の場合には容姿に関する自信や不安がQOLに大きな影響を及ぼしますので、少しの体重増加であっても患者さんの主観的な抵抗は大きいですね。
 3つ目は、別の病気のリスクが高まることです。内臓脂肪型の肥満に発展するとメタボリックシンドロームに近づいてしまいますから、高血圧や脂質異常、心臓病、動脈硬化など他の疾患を引き起こす危険性が上がります。

改善するには、どうしたら良いのでしょうか。

 何よりも大事なのは、率直に医師に相談することです。太る原因は患者さんそれぞれ異なり、原因が複数ある場合も珍しくありません。患者さんの状態やそれまでの治療内容に応じて、改善策はいろいろあるはずです。
 一般的に言えることは、「まずは適度な運動を」ということです。もちろん具合の良い日もあれば悪い日もあるでしょうから、具合が良い日には外を散歩してみるなど、無理をしない程度に始めてみてください。
 それから食事の量や回数、時間帯、栄養面にも気をつけて下さい。ストレスにならない範囲で実践してみることをお勧めします。
 もちろん、太った理由が治療方法にもあると考えられる場合には、治療方法を変更することを検討できます。統合失調症の薬の種類や投薬方法は選択肢が増えてきましたので、よく主治医と相談してください。

(遠慮がちな)患者さんや家族へのメッセージを。

 体重増加に限らず、治療中に気になることがあれば、ぜひ遠慮せずに医師に相談してください。私達は多くの患者さんを診ていますし、日々、新しい治療法も研究、勉強しています。「こんなことぐらい・・・」と思わずに、少しでも変だなとか、嫌だなと思ったことはどんどん医師に伝えてください。
 診察室ではうまく話せそうにない場合は、あらかじめ相談事項を紙に書いておくのも、良い方法です。あるいは医師が相手だと話しにくい、ということであれば、看護師さんでも結構です。いずれにせよ、患者さんと医師とが話しあって、その人にあったベストな治療法を考えていく時代ですから、ぜひ遠慮せずに、相談をして欲しいですね。

横浜市立大学 市民総合医療センター 病院長 平安良雄先生
岡山大学医学部卒・同大学院修了後、琉球大学医学部精神神経科講師、杏林大学医学部精神神経科助教授を経て、2003年に横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門教授に就任。2010年より現職。この間、ブリティッシュ・コロンビア大学、ハーバード大学に計6年間留学、現在に至る。専門領域は、神経画像学、臨床精神神経薬理学、自殺予防対策。日本生物学的精神医学会理事、日本うつ病学会理事、日本自殺予防学会理事 ほか。

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