[統合失調症の治療と、よくある悩みの解決法] 2011/01/14[金]

いいね!つぶやくはてなブックマークGooglePlus
福島県立医科大学 教授 丹羽真一先生

 私の患者さんでも、2割程度の方が同様の症状を訴える印象で、けっして珍しくありません。これは、周囲の人からは「怠けているだけ」と誤解されやすいため、本人には辛いものです。もともと統合失調症の陰性症状※1の代表的な症状の一つであり、また、薬による過剰鎮静※2で似たような症状がでる場合もあります。
 NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会が実施したアンケートによると、精神疾患で薬物療法を受けている患者さんのうち、約3割が「頭がボーッとする」、「だるい」、「日中、眠くなる」などと回答しており、日常生活に支障をきたしていると報告しています。

※1:「陰性症状」=統合失調症の症状には主に「陽性症状」と「陰性症状」があります。「陽性症状」とは本来あるべきではないものが現れるもので、「陰性症状」とは本来あるべきものがない、あるいは低下し過ぎたものです。前者の具体例は幻覚・幻聴・妄想などで、後者の具体例は感情平板化・意欲低下などです。

※2:「過剰鎮静」=活動性が低下してしまうことで、眠気以外にも、身体が重くだるい感じがしたり、視界がぼやけることがあります。

なぜ「日中眠くなる」のでしょうか。

 統合失調症にはもともと陰性症状として、やる気が出ない、力が入らない、疲れやすいなどの症状があります。まずは、その症状が出ているという可能性が考えられます。
 次に、統合失調症の治療に使われる薬物のなかには、抗ヒスタミン作用を持つ薬物※3があり、そのために鎮静の副作用が出る場合があるので、その可能性も考えられます。本来は、注意機能、記憶機能、学習機能などを改善し、陽性症状である幻覚妄想や精神興奮を抑えるために薬を使用するのですが、別の作用を引き起こし、昼間から眠い、だるい、やる気が出ないなどの状態に見舞われることがあるのです。例えるなら、風邪薬を飲むと熱が下がったりする一方で、風邪薬に含まれる抗ヒスタミン薬が作用し、眠くなるのをイメージしてもらえば分かりやすいと思います。

※3:「抗ヒスタミン作用」=ヒスタミンとは、必要に応じて私達の細胞から放出され、血管を拡張するなどするほか、神経伝達物質として働くこともある物質です。重要な役割を果たしていますが、鼻水やかゆみなど、アレルギーや風邪の時の諸症状を起こします。この作用を抑える薬を抗ヒスタミン薬といいます。

「日中眠くなる」と、治療や生活上で、どんな影響があるのでしょうか。

 「日中眠くなる」「頭がボーッとする」などの状態が続くわけですから、患者さんの注意力は低下します。そのため、日常的な活動でできることが少なくなってしまいますし、転倒による骨折の危険や事故などを起こすリスクも増します。
 また、学習能力や記憶力も低下する可能性があります。そのために治療にも前向きに取り組めなくなってしまって、結果として病状がなかなか改善しなくなる場合もあります。
 過剰鎮静の状態になると、一見するとイライラした様子がなくなりますから、そのことだけをとらえると、家族から見れば「いい傾向だ」と思うかもしれませんが、過剰鎮静の状態は、本人のQOL(生活の質)が低下しているのですから、好ましい状態とはいえません。ましてや病気が良くなっているわけではありませんので、誤解しないように気をつけてください。

改善するには、どうしたら良いのでしょうか。

 日常的に眠気を感じるようであれば、まずは医師に相談するようにしてください。単に生活のリズムが崩れている場合もありますし、薬剤による過剰な眠気のせいかもしれません。
 その上で、まずは生活リズムを整えるようにしましょう。朝起きても眠いのは、夜更かししただけなのかもしれません。生活にメリハリがつくように生活の目当てをつくるように工夫するのが良いでしょう。
 薬の副作用で過剰な鎮静状態になってしまっている場合には、薬剤の量や種類を調整することも検討できます。さいわい、統合失調症の薬の種類や投薬方法は選択肢が増えてきましたので、よく主治医と相談してください。

(遠慮がちな)患者さんや家族へのメッセージを。

 統合失調症の治療においては、周囲の家族の皆さんの協力が不可欠です。ですから医師の多くは、患者さんだけでなく、家族とも、コミュニケーションを増やしたいと思っています。遠慮せずに質問や相談をしてください。
 多くの患者さんは治療により自立した生活をおくれるようになっており、病気そのもののイメージも以前とはずいぶん変わってきています。治療することは、自立生活の力をつけていくうえでとても大切です。もし、患者さんが自立した生活をおくれるようになるのに、過剰鎮静が障害となるのであれば、遠慮せずに医師に相談してみてください。
 また薬の副作用に不安を感じることもあるかもしれません。そんなときには、自分の判断で勝手に服用を止めたり、医師に黙って量を減らしたりは、絶対にしないでください。自分の判断で服用をやめてしまい、再発してしまうことは望ましくありません。医師と相談すれば、薬の量や種類を調節してもらえるでしょう。お薬を上手に使って、治療を続ければ再発の防止にもなります。
 実際、再発を防いで治療を続ければ、自立した生活を送れる力はついてきています。
 希望を持って、焦らず、じっくり治療を続ける心構えで、医師ともコミュニケーションをして欲しいと思います。

福島県立医科大学 教授 丹羽真一先生
東京大学医学部卒業後、1976年同大学附属病院精神神経科助手に就任。その後、1992年に福島県立医科大学神経精神医学講座 教授に就任。2004年に同大学医学部附属病院 院長に就任。2006年には、公立大学法人 福島県立医科大学 理事に就任し、現在に至る。専門領域は、臨床精神医学。日本臨床神経生理学会前理事長、日本統合失調症学会副理事長 ほか。

実際に検索された医療機関で受診を希望される場合は、必ず医療機関に確認していただくことをお勧めします。口コミは体験談です。当サービスによって生じた損害についてはその責任の一切を負わないものとします。病院の追加、情報の誤りを発見された方はこちらからご連絡をいただければ幸いです。

服薬体調管理すまいるメール
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。