[ヘルスケアニュース] 2016/12/09[金]

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治療につながるメカニズムを解明

 脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血はいずれも、日本人の死因第3位である「脳卒中」の種類です。手遅れになると、命を落とすこともある恐ろしい疾患で、助かったとしても後遺症が残ることもあります。厚生労働省の調査によると、2015年度の死因別死亡総数のうち、これらを含む脳血管疾患は約11万人で、全体の8.7%を占めており、くも膜下出血は1万2,476人でした。

 くも膜下出血は、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂・出血するもので、激しい頭痛や意識消失を引き起こします。脳卒中のなかでも死亡率が高く、迅速な対応が必要とされます。また、手術で破裂した脳動脈瘤を処理した後も、脳の血管が細くなる「脳血管れん縮」により、重篤な後遺症が残ったり、死亡したりすることも稀ではありません。

 最近の臨床研究では、脳血管れん縮を抑えるだけでは、患者さんの予後を改善するのに十分ではないという新たな問題提起も浮上。くも膜下出血の治療法は混とんとした状況が続いています。こうしたなか、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授と伊達勲教授の研究グループは、脳血管れん縮のメカニズム解明に成功したと発表、イギリスの科学雑誌「Scientific Reports」に研究結果が掲載されました。

抗体投与で、「脳血管れん縮」を抑制

 研究グループは、ラットで作製されたくも膜下出血モデルで、血管れん縮を起こしている血管壁の平滑筋細胞から細胞内タンパク質「HMGB1」が細胞外へ放出されており、HMGB1の働きで血管の収縮を誘導する受容体の発現量が上昇することを突き止めました。

 したがって、この受容体の働きを抑制する抗HMGB1抗体を投与することにより、発現量の上昇が抑制されると、脳血管の収縮性が抑制されるのです。同時に、抗HMGB1抗体の投与は、れん縮血管と脳内全体で生じる炎症応答を抑えることも判明。急性脳障害につながる悪化因子の制御にも貢献していると推測されます。

 研究グループは既に、ヒトの治療に使える「ヒト化抗HMGB1抗体」の作製に成功しており、今後は臨床での応用に向けて治療薬開発を加速させる計画。同グループは「くも膜下出血の治療に向けての研究は継続する必要がありますが、抗HMGB1抗体治療は有望な治療法として期待できる」としています。(菊地 香織)

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