[ヘルスケアニュース] 2017/05/17[水]

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約10人に1人が経験するといわれる“うつ病”

 一生のうち、およそ10人に1人が経験するといわれるうつ病。気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠障害など、さまざまな症状がある精神疾患で、患者さんや家族にとって、先が見えないトンネルに入っているような辛い病気です。死にたい気持ちになる「自殺念慮」から、自殺につながる危険もあり、うつ病がもたらす社会的損失は計り知れないものになっています。

 現在の治療では、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」に属する抗うつ薬が最も広く使われています。しかし、その寛解率(病気の症状が一時的あるいは継続的に軽減し、安定した状態)は半数にも満たないとされており、SSRIが効かない難治性うつ病患者を治療するための新たな方法や治療薬の開発が期待されています。

 大阪大学大学院医学系研究科の近藤誠准教授、島田昌一教授らの研究グループは、「セロトニン3型受容体」に注目しました。セロトニンは、動物の情動に関わる脳内の神経伝達物質のひとつで、うつ病などの精神疾患の病態に関わっていると考えられています。セロトニンが結合し、その刺激を受け取る部位をセロトニン受容体と呼び、セロトニン3型受容体はそのひとつです。これまで、その詳しい働きはわかっていませんでした。

従来の抗うつ作用とは異なる、新しいうつ病治療のメカニズム

 動物の脳の海馬には、神経幹細胞が存在し、新しい神経細胞(ニューロン)がたえず生まれています。この現象を、海馬の「神経新生」といいます。そして、うつ病の治療メカニズムには、海馬の新生ニューロンが必要であることが知られています。研究グループは、運動がもたらすうつ病の予防改善効果や、海馬の新生ニューロン増加にセロトニン3型受容体が必須であることを明らかにしており、今回は海馬の神経新生やうつ行動との関連についてより詳しく解析しました。

 その結果、セロトニン3型受容体が、IGF-1(インスリン様成長因子-1)促進することを発見。これは、海馬の新生ニューロンを増やし、抗うつ効果をもたらすことも明らかにしました。

 このメカニズムは、SSRIを投与した際には見られない現象で、従来の抗うつ作用とは異なる、新しいうつ病の治療メカニズムになることから、近藤准教授は「SSRIが効かない難治性うつ病の患者さんに対する、新たな治療薬の開発に役立つ可能性が期待されます」としています。(菊地 香織)

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