[ヘルスケアニュース] 2017/06/16[金]

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既存の抗うつ薬が効かない治療抵抗性うつ病患者も約3割

 うつ病の新しい治療法として、関節リウマチの治療薬に広く使われている「インターロイキン6(IL-6)受容体抗体」が有効である可能性が、千葉大学の研究で明らかになりました。

 世界保健機構(WHO)によると、世界中で3.2億人がうつ病に罹患し、年間80万人もの患者が自殺しているという報告があり、うつ病がもたらす社会的損失は計り知れません。国内でも、100人のうち3~7人がうつ病を経験したという報告があるなど、うつ病は決して特別な病気ではないのです。

 ストレスなどがうつ病の発症に関わっていることは知られていますが、発症の詳細なメカニズムは未だにわかっていません。薬物療法として、主に抗うつ薬が使用されていますが、既存の抗うつ薬が効かない治療抵抗性うつ病患者も約30%いるとされ、治療法にも課題が山積している状態です。

「うつ病の炎症仮説」を支持する成果

 千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授らの研究グループは、T細胞やマクロファージなどの細胞から産生される炎症性サイトカインのひとつ、「IL-6」に注目しました。炎症性サイトカインとは、体内の炎症反応を促進する働きを持つタンパク質。うつ病患者の血中IL-6濃度が健常者よりも高いことから、うつ病とIL-6に関連があるとする、うつ病の炎症仮説が提唱されてきました。

 一方、関節リウマチの多くの症状が血中IL-6濃度の上昇と関わっており、治療薬としてIL-6受容体抗体が開発されました。今回、IL-6シグナルを阻害するため、うつ病のモデルマウスにIL-6受容体抗体を静脈投与したところ、即効性の抗うつ効果を確認。さらに、脳内における樹状突起スパイン密度の減少や、腸内細菌叢の変化を改善することも判明しました。脳室内への投与では、同様の抗うつ効果が得られなかったことから、IL-6受容体の働きを末梢で阻害することで脳腸連関を介し、抗うつ作用に関わっている可能性が示唆されました。

 この研究によって、近年提唱されているうつ病の炎症仮説が支持される結果となりました。研究グループは、「IL-6受容体抗体はすでに、関節リウマチの治療薬として世界中で使用されているので、血中IL-6濃度の高い治療抵抗性うつ病患者に効果がある新しい治療薬として期待できる」としています。(菊地 香織)

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