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[ヘルスケアニュース] 2019/09/11[水]

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潰瘍が進み、壊死になると手遅れの重症下肢虚血

 慢性動脈閉塞症は、手足(主に足)の血管が塞がって、先の方まで十分に血が通わなくなってしまう病気です。重症の患者さんは世界的に増えていますが、現在の治療法では効果が得られない患者さんも多くいます。こうした中で、このたび重症患者さんの治療選択肢を広げる、新しい遺伝子治療薬が発売されました。


大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
森下竜一先生

 大阪大学発のバイオベンチャー、アンジェス株式会社は、9月10日に新発売したHGF遺伝子治療薬の「コラテジェン(R)筋注用4mg」(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド)について、9月9日に都内で記者説明会を行いました。同説明会では、アンジェス株式会社の山田英社長が同治療薬の開発から薬価収載までの過程を簡単に説明し、次いで大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学の森下竜一教授が、同治療薬とその適応症についての解説を行い、最後に同治療薬の販売元である田辺三菱製薬株式会社の三津家正之社長が、今後の取組みについて説明しました。

 コラテジェンを使った治療の対象となるのは、慢性動脈閉塞症のうち、閉塞性動脈硬化症とバージャー病の患者さんです。バージャー病は、指定難病のひとつで、詳しい原因はわかっていませんが、自己免疫応答により血管に炎症が起き、手足の血管が塞がってしまう病気です。喫煙が発症に関わると考えられており、喜劇俳優のエノケンさんがなったことでも知られています。

 閉塞性動脈硬化症は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が原因となって、主に下肢(足)の動脈硬化が進む病気で、重症になると、潰瘍や壊疽ができ、切断に至ることもあります。歌手の村田英雄さんがなったことでも知られています。重症に至るまでに長い経過をたどるのが特徴で、最初は、冷感・しびれ(1度)に始まり、次に、少し歩くと痛くなって歩けなくなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」(2度)、普段から痛い「安静時疼痛」(3度)と進行し、最後に潰瘍、それが治療できない場合は壊死(4度)となります(Fontaine分類による)。国内の研究では、この病気全体の5.5%が4度、10%が3度であるとされています。

 2~3度の治療には、血管拡張剤や抗血小板剤などの薬が用いられていますが、重症になると効果が得られにくくなります。また、外科的なバイパス手術や、血管内にカテーテルを通し、閉塞している場所でバルーンを膨らませて血流を再開させる、PTAと呼ばれる治療法も基本的な治療として行われていますが、足の先端に近いほど、治療が難しくなります。これは、膝から下の血管が非常に細くて詰まりやすいからです。「血管が塞がると、やがて血管はなくなってしまいます。その部分で潰瘍が進み、壊死する前にどうにかして治療をしたい」という、森下先生たちの強い願いから開発されたのが、今回のHGF遺伝子治療薬なのです。

注射するだけで血管を再生させることができる遺伝子治療薬

 HGFは、もともと肝臓の再生因子として見つかったタンパク質です。その後、肝臓だけでなく、血管や神経突起の再生作用も持つことがわかりました。HGF遺伝子治療薬を、足の、血管を再生させたい部分の筋肉内に注射すると、骨格筋細胞にHGF遺伝子が導入され、HGFタンパク質が局所で産生、分泌されます。このHGFの作用により、近くの血管の内皮細胞が増殖し、新しい血管が足先に向かって伸びていきます。その結果、虚血部分の血流が回復するという仕組みで、この薬は作用します。HGF遺伝子治療は、外科的なバイパス手術に対し、「バイオバイパス」と呼ばれることもあります。これまでに、VEGF、FGFなど、10近い血管再生因子を使って、同様の遺伝子治療が世界各国で試みられましたが、作用に関するさまざまな理由により、うまくいったのは今のところ、このHGFのみなのだそうです。

 HGF遺伝子治療薬は、国内で行われた3相試験の結果に基づいて承認されました。この試験は、多施設で行われた、プラセボとの比較試験で、対象者は、安静時疼痛または潰瘍のある人のうち、既存治療の効果がない人、あるいはバイパス、風船療法が困難な人でした。当初120人で研究を行う予定でしたが、40人の結果が出た時点で中間解析をしたところ、統計学的に有意な差が見られたため、そこで試験をストップし、申請に至りました。評価時の潰瘍サイズは、プラセボでは平均+6.97%と、むしろ潰瘍サイズが少し大きくなっていたのに対し、治療群は平均-69.53%と、明らかに縮小していたそうです。また、両足に潰瘍があり車いすだった人が、治療後に階段の上り下りができるようになったケースもあったそうです。注射した足ではない部位にあるがん細胞や、糖尿病性網膜症の悪化はみられず、他の部位に影響なく安全な治療薬であることも確認されています。

 治療は、血管造影などを用いて血管を再生させたい部分を医師が決め、HGF遺伝子治療薬を8か所注射し、1か月後に再度8か所、効果が十分でなければまた1か月後に8か所注射します(最大24か所注射)。簡単な治療なので、外来でも可能な上、一度血管ができれば効果は持続するので、その後治療は終了となります。

 森下先生は今回の講演の最後に、「難治性潰瘍(治りにくい潰瘍)は他にも、静脈瘤からくる潰瘍、褥瘡による潰瘍、自己免疫疾患(皮膚筋炎、ベーチェット病など)による潰瘍、糖尿病性の抹消の潰瘍など、たくさんあります。こうした潰瘍に対し、動物実験では既にHGF遺伝子治療薬の効果が見られています。潰瘍は患者さんにとって、毎日の傷口の消毒、感染が起きたときの対処、痛みなど、生活の質(QOL)を低下させる原因となります。今後、HGF遺伝子治療薬の適応を拡大させ、できるだけ多くの患者さんの治療に使っていただきたいと思っています」と、述べました。

 国産初の遺伝子治療薬コラテジェンは、プラスミドという安全性の高い構造を持つ遺伝子治療薬として世界で初めて承認されたもの。また、血管新生作用をもつ世界初の医薬品と、初めてづくしの医薬品です。3月に承認、8月に薬価収載され、9月に発売となりました。現在、条件付き承認での販売となっており、5年間で200人(治療120人、プラセボ80人)の結果を得て、有効性を再度示した上で、本承認を得ることになっています。(QLife編集部)

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