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[ヘルスケアニュース] 2021/06/25[金]

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 がんになると、「食欲が落ちる」「体重が減っていく」「疲れやすくなる」「筋力が落ちる」――。そんなイメージを持っていませんか? それは、「がん悪液質」による症状かもしれません。

 がん悪液質は、進行がん患者さんの5~8割1)にみられ、体重が減る、食欲が出ない、疲れる・だるい、筋力が落ちるといった症状を引き起こします。すい臓がんや胃がん、食道がん、頭頸部がん、肺がんで特に起こりやすく、乳がんや前立腺がんでは起こりにくいことがわかっています。ダイエットで体重が減る場合は、エネルギーの消費量も減り、体を守るために大切な筋肉の量が維持されますが、がん悪液質では、体重が減っているにもかかわらず、エネルギーの消費量も増え、筋肉をも分解してエネルギーにかえてしまうのです。

 製薬会社の小野薬品工業は6月7日、がん悪液質とサポーティブケア(支持医療)についてセミナーを開き、京都府立医科大学大学院医学研究科の髙山浩一先生(呼吸器内科学教授)が講演しました。


髙山浩一先生(小野薬品工業提供)

 髙山先生は、がん患者さんと家族・介護者との間で食欲が出ないことや体重が減ることについて考え方にギャップがあることを紹介。がん患者さん(n=538)と家族(n=517)を対象に実施した調査2)によると、がんと診断されて以降、食欲不振について「気にかけている」と回答したのは、家族では56.5%に上った一方、患者さんでは29.0%にとどまっていました。体重減少を「気にかけている」と回答したのは、家族が46.4%、患者さんは38.3%でした。「食欲不振と体重減少のどちらも気にしていない」と回答したのは、家族では33.3%だったのに対し、患者さんでは53.3%を占めました。髙山先生は、「家族・介護者は患者さんが痩せていく姿をみて心配で食べるよう患者さんに勧めがちだが、患者さんは食べたくても食べられないことから、対立が起きることもある」と指摘。「がん悪液質について家族や介護者を含め、多くの人に知ってもらいたい」とがん悪液質の周知が課題だと述べました。

 髙山先生は、「死因を正確に調べるのは難しい」としつつ、「死因の2/3は臓器不全によるものだが、1/4はがん悪液質によって徐々に衰弱して亡くなる」と、がん悪液質について問題視し、がん悪液質を治療する必要性を訴えました。

がん悪液質かもしれないと思ったら、まずは医療機関に相談を

 がん悪液質の治療は、薬物療法・栄養療法・運動療法を組み合わせて行います。

 食事は栄養バランスがとれたものが理想です。食欲が出ないときは、食べやすいもの、食べられるものを探してみましょう。味覚障害の症状があるときは、梅肉を使用する、カレー味にするなどアクセントをつけると食べやすくなるそう。必要な栄養をなるべく口から取り入れるために、さまざまな対策方法を試してみてはいかがでしょうか。ただし、無理に食べないほうがよい時期もあります。がんと診断されてから食欲が落ちたと感じた場合は、まずは主治医の先生や看護師さん、栄養士さんなどに相談してみることが大切です。

 適度に運動することも重要です。ウォーキングやサイクリング、水泳、ランニングといった有酸素運動を行うことで、活動量を維持することができます。筋肉トレーニングも有用です。

 認定NPO法人キャンサーネットジャパンが発行している冊子「もっと知ってほしいがん悪液質の予防と改善のこと」などで、トレーニング方法も詳しく知ることができます。無理をしない程度に取り組んでみましょう。

 自分らしい生活を維持しながらがんの治療に向き合うためには、がん悪液質の対策も大切です。がんになってから食欲が出ない、体重が減ったなど、がん悪液質かもしれないという症状がある場合は、医療機関で相談してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

1)Fearon KC. Eur J Cancer. 2008; 44(8): 1124-1132. Teunissen SC, et al. J Pain Symptom Manage. 2007; 34(1): 94-104. などを参考
2)T Morimoto. et al. Gan To Kagaku Ryoho. 47(6) 947-953 (2020).

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