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[ヘルスケアニュース] 2021/10/28[木]

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石郷岡先生「うつ病の症状がなくても社会機能が回復していないケースも」

 うつ病の治療で症状が改善したと思っていたのに社会復帰がうまくできないケースがあるのをご存じですか?

 会社で自身が持っている能力を発揮したり、余暇を楽しんだり、家族との関係を保てたりする機能のことを「社会機能」といいます。就労世代では、社会機能が十分に回復しないまま復職し、うつ病が再発してしまうことは少なくありません。

 うつ病からの社会復帰をテーマに石郷岡純先生(石郷岡病院理事長)は9月29日、製薬会社の武田薬品工業とルンドベック・ジャパンが開いたセミナーで講演しました。

 石郷岡先生は、「うつ病の症状がほとんどない状態にまで改善してからも、社会機能の障害は一定期間続くという報告が増えてきている」と話し、「症状の改善と社会機能の回復は必ずしも相関していない」と指摘しました。その上で、「社会機能が十分に回復しないまま社会復帰した場合、自分が本来持っている能力を発揮できずに苦しみ、うつ病が再発しやすい」と説明しました。

 同日のセミナーでは、患者さんと医師が持つうつ病に対する認識の違いを理解する目的で実施したインターネット調査の結果も発表されました。調査は全国20~65歳の患者さんと医師(解析対象回答828、患者さん828名、医師326名)を対象として2020年3月~5月に行ったものです。

 調査結果によると、うつ病で表れている症状について患者さんと医師の間で認識に大きな差はありませんでした。一方で、患者さんの社会機能については、患者さんが感じている状態よりも医師は低く評価していることが明らかになりました。調査結果を受けて石郷岡先生は「社会機能の障害について患者さんは楽観的にとらえている場合がある」との考えを示し、「患者さんと医師で認識にギャップがあることが治療の妨げになるのであれば、取り除く必要がある」と話しました。

自分を客観視し、考え方や行動のくせと向き合うことが重要

 うつ病が再発しないよう、社会機能が回復してから社会復帰していくためには何が大切なのでしょうか。

 セミナーではうつ病を発症し、再発した経験もある林晋吾さんが登壇し、社会復帰する際に直面した課題や回復のポイントを語りました。

 うつ病になって退職した後、日常生活が問題なく送れるようになったと感じたことから就職活動を始めたという林さん。再就職してからしばらくは順調だったものの、約1年半後にうつ病が再発し、離職を余儀なくされました。林さんは当時を振り返って「自分の状態を把握できていなかった」と反省。「就職活動時には同居していた母親から『焦りすぎている』『辛そう』と何度も言われたが、耳をかさなかった」「再発がわかったきっかけは会社の同僚が上司に相談したこと。普段なら起こさないような単純ミスを繰り返していたが自覚はなかった」と話しました。

 林さんによると、再発のきっかけは同じようなケースだったそう。当時の自分を「困っていることを相談できず、一人で抱え込む傾向があった」「仕事で認められたいという気持ちが強かった」と分析し、「自分の考え方や行動のくせと向き合っていなかった」との考えを示しました。また、食事や睡眠などのライフスタイルが整っていなかったと振り返りました。

 回復にいたったポイントについては、「私のことをゆっくり待ってくれる人がいた」「できごとを客観的に振り返り、自分と向き合うことを続けた」「日常生活を整え、体の負担にも気を配るようになった」と挙げ、最近5年間は再発もなく、安定した状態を保っていると明かしました。

復帰の判断「発症時と同じような状況になっても上手く切り抜けられるかを確認」

 産業医の立場からは野﨑卓朗先生(三菱ケミカル株式会社産業医、産業医科大学非常勤助教)が登壇し、「うつ病になり休職した方が焦り、早い段階で復職を望むケースをよく経験する」と紹介しました。復帰できるかを判断する際には、「安定して就業を続けられる状態か、発症時と同じような状況になったときに上手く切り抜けるスキルを身につけているかを含めて確認している」といいます。

 野﨑先生は「うつ病の経験者は、普通の人が経験したことのない苦難を乗り越えてきている。しっかりと復帰できる状態になれば、発症前よりもレベルアップして、社会に貢献できる人材になる」として、周囲が期待し支援していくことが重要だと言葉に力を込めました。その上で、医療だけでなく職場からも支援を行うことがうつ病経験者の活躍につながるとして「企業でもうつ病経験者が活躍できる場所を作ることが求められる」と強調しました。

 「うつ病を経験したからこそ、レベルアップして社会に貢献できる」という野﨑先生の言葉には力強さを感じます。うつ病は決してめずらしい病気ではありません。うつ病を経験しても再発することなく活躍できる社会の実現には、うつ病患者さん本人を含め、より多くの方がうつ病の症状と社会機能の関係を知ることが第一歩です。また、患者さんの社会復帰については本人が焦る必要のないように、周囲の方は長い目で見つつ期待することが大切です。(QLife編集部)

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