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[ヘルスケアニュース] 2022/08/25[木]

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2018年の患者数は約3万人、近年増加の傾向

 仕事中に休み休み作業をしている人を見かけて、「もしかしてあの人、怠けているのでは……?」と思ってしまうことはありませんか。でも、休み休み作業をしているのには、病気など何か理由があるのかもしれません。

 重症筋無力症という病気を持っている人のうち約4割で、友人や周りの人から病気を理解してもらえず「怠けている」と思われた経験がある――。

 製薬会社のアルジェニクスジャパンは2022年6月、このような調査結果を発表しました。

 重症筋無力症は、体を守る役割のある免疫系が正常に機能しなくなり、自身の正常な組織や細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。神経と筋肉をつなぐ部分に障害が起こることで、力が入りにくい、疲れやすい、まぶたが下がる、ものが二重に見えるなどの症状が現れます。重症化すると呼吸困難をきたすことも。日によって、また1日の中でも時間によって体調が変化することがあるのも特徴です。

 2018年の全国疫学調査によると患者数は2万9,210人で、人口10万人あたりの 有病率 は23.1人1)。頻度の高い病気ではありませんが、2006年の全国疫学調査から患者さんの数はおよそ2倍にまで増えています。

疲れやすい、ものが二重に見える……、仕事や趣味への影響も

 製薬会社のアルジェニクスジャパンは2022年4~5月、全国の重症筋無力症で通院している452人を対象に、重症筋無力症に関する実態・意識調査をオンラインと郵送で行いました。調査結果によると、「友人や周りの人から病気を理解してもらえず、『怠けている』と思われた」経験があると回答した人の割合は42%に上りました。また、これまでに仕事をしたことがある患者さんでは、「同僚や上司から病気を理解してもらえず、『怠けている』と思われた」経験がある人は33%、「家族から病気を理解してもらえず、『怠けている』と思われた」経験がある人は32%でした。調査結果から、周囲から病気への理解を得ることが難しい重症筋無力症の実態が浮かび上がりました。

 同調査結果では、仕事をしている人のうち4割近くは「自身が重症筋無力症であることを職場の上司や同僚に話しづらい」と回答しており、その理由としては「病気や症状の大変さを理解してもらえないから」が半数を占めました。

 患者さんが困っている症状で最多だったのは「疲れやすい」で52%。続いて、「ものが二重に見える」(32%)、「まぶたが下がる」(29%)、「腕や脚の脱力」(26%)と、周囲の人から病気だと気づかれにくい症状が上位にあがりました。

 治療をしていても、「日常生活に何らかの支障がある」と回答した患者さんは約6割に上りました。病気になってからできなくなったこととしては、「運動すること」が74%と最も多く、「友人と出かけること」「趣味を楽しむこと」「旅行に行くこと」と答えた人も約6割いました。

 また、病気により仕事に支障をきたした患者さんは約7割と多く、そのうち約3割は仕事を辞めざるを得なかったという結果も判明しました。


川口直樹先生(アルジェニクスジャパン提供)

 アルジェニクスジャパンが2022年6月21日に開催したセミナーでは、重症筋無力症に詳しい神経内科医の川口直樹先生(医療法人同和会神経研究所・脳神経内科千葉 神経研究所所長)が講演しました。川口先生は、「重症筋無力症では、筋力を保つことが難しく、休み休みでないと作業を行うことができない。周りの人から理解を得られず『怠けている』と思われて、さまざまな機会が奪われている現状がある」と問題視。「失職や収入の減少を経験するケースもある」と指摘しました。


恒川礼⼦さん(アルジェニクスジャパン提供)

 NPO法人筋無力症患者会の恒川礼⼦理事長は、仕事への影響について、「筋力を維持できないことからタクシーやトラックの運転手、農業を仕事にしている人はどうしても離職してしまうことが多い」と述べました。会社に病気のことを詳細に話したら離職に追いやられてしまうのではないかと不安で、打ち明けることができないという相談もあるそうです。一方で、「最近は学校や会社からどのような配慮が必要なのか、問い合わせの連絡がくることもある」と話しました。

 一般社団法人全国筋無力症友の会で事務局長を務める北村正樹さんは、誤解を招きやすい重症筋無力症の症状を紹介しました。「最初は普通に作業したり動いたりすることができても、だんだんと動きが鈍くなってしまうため、怠けているようにみられてしまう。階段を上る際も、最初はスムーズに上ることができるが、途中から急に重い荷物を背負ったように、動くことが難しくなる」と説明。「まぶたが下がってしまうため、眠たそうに見られたり、あごを上げて人をみてしまい、よく思われないことがある」と話しました。


北村正樹さん(アルジェニクスジャパン提供)

 そのうえで北村さんは、「今回の調査によって重症筋無力症への理解が深まり、病気であっても生活しやすい環境になってほしい」と願いを語りました。

 医療が日進月歩していても、長く付き合っていくことが必要な病気はまだまだ数多くあります。病気であっても生活しやすい社会を実現するために、QLife編集部としても、患者さんが抱えるさまざまな背景について認識が広まるよう、啓発活動を行っていきたいと思います。(QLife編集部)

1)栗山長門,他:厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究(H29-難治等(難)-一般-057 )分担研究報告書.重症筋無力症(MG)ならびにランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の全国疫学調査研究.

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