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[ヘルスケアニュース] 2022/10/20[木]

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がん患者さんだけでなく、家族の心のケアも重要

 生涯で2人に1人は経験するといわれている「がん」1)――。治療は大きく進歩しており、いまやがんと共に生きる時代といわれています。とはいえ、自分や家族ががんになったときの戸惑いや不安の大きさは計り知れません。

 製薬会社の武田薬品工業は2022年9月11日、オンラインで、がん患者さんと家族の心のケアについてセミナーを開きました。セミナーでは、がん患者さんや家族の心のケアに携わっている清水研先生(がん研究会有明病院腫瘍精神科)が登壇し、「がんと診断されると非常につらい時期を迎えるが、人には困難を乗り越える力がある」と強調しました。

 清水先生は講演で、「がんと診断されてから1年以内の人は、がんではない人に比べて自殺のリスクが約24倍に上る一方で、がんと診断されてから1年以上経過している人では、がんではない人と自殺リスクに差がない2)」と説明し、言葉に力を込めました。

 困難を乗り越える力について清水先生は、「必ずしもすべての人に当てはまるとは限らない」と前置きしつつ、がん体験後の心の道筋として、「外傷後成長モデル」を紹介しました。外傷後成長モデルとは、がんの診断など衝撃的なできごとが発生すると、今までの価値観の崩壊、生きる意味の喪失が起こり、その後、新たな世界観を形成するというものです。清水先生は外傷後成長モデルについて、「新たな世界観を形成するまでの過程で、しばらくはつらい考えや感情がめぐるが、やがて病気になったことの意味を考えるようになる」と説明しました。

 清水先生はまた、「『なぜ自分が』という気持ちや、悲しくて仕方がない気持ちになるつらい時期にも、意味がないわけではない」と指摘。「状況を受け止めようとしており、必要なプロセスでもあるのではないか」との考えを示しました。

 講演で清水先生は、家族を対象とした心のケアの重要性も指摘しました。「『患者本人が最もつらいのだから』と苦しみを抑え込んでしまう家族もいる。しかし、家族は患者本人と同等あるいはそれ以上の苦痛を有するという調査結果もある」(清水先生)

「がん相談支援センター」でも相談が可能

 認定がん専門相談員の品田雄市さん(東京医科大学八王子医療センター)は「がんではないか、と疑いをもつときから心は大きく動く」として、「心のケアは診断が下りる前から必要だ」と指摘しました。

 心のケアを受けるに当たっては、全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されているがん相談支援センターを利用することが可能ですが、品田さんによると、がん相談支援センターを利用したことのある人は多くないのが現状だといいます。品田さんは、がん相談支援センターの役割について、「相談内容に対して、何が実現可能なのかを考えながら、その先の道筋、次の自分の行動を決めるためのサポートをしていく」と説明。患者さん・家族ともに相談を受け付けていると話しました。

 品田さんは心のケアについて、「何が不安なのか、何を恐れているのかを整理することが必要だ」とし、「自問自答ではなく、誰かと語り合う、わかち合う中でヒントを得ることが多いのではないか」と語りました。また、「守秘義務があるため、相談内容が主治医に筒抜けになることはない」と指摘。医療従事者との関係が悪化するのではないかという心配は不要だとしました。

 医療従事者とのコミュニケーションについては、GIST(消化管間質腫瘍)/肉腫患者と家族の会であるNPO法人GISTERSで副理事長を務める櫻井公恵さんも、「患者会でよく相談を受ける」といいます。櫻井さんは、「病院を変える前に、がん相談支援センターなどで相談をするよう案内をしている」と説明しました。

 誰にも相談できずに、悩みを抱えているがん患者さんや家族もいらっしゃるのではないでしょうか。がん相談支援センターは、がん患者さんや家族、地域の人などどなたでも相談をすることができる施設です。匿名でも相談は可能で、費用はかかりません。1人で悩みを抱え込まずに、お近くのがん相談支援センターで相談することも検討してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

1)がん情報サービス:最新がん統計.
[https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html](10月17日閲覧)
2)Yamauchi T, et al: Psychooncology. 2014;23(9):1034-1041.
[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24711163/](10月17日閲覧)

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