[ヘルスケアニュース] 2025/11/20[木]

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これからのがんケアを考える特別企画を開催

 社会の高齢化が進展する中で、がんや認知症などの疾患を持つ家族を支えるケアラーの問題が顕在化してきていますが、支援や制度充実への働きかけは十分ではなく、急にケアラーになって困るようなケースもあるようです。

 製薬企業のファイザー株式会社は、特別企画「血液がん(多発性骨髄腫)の患者さんとケアラーの声から考える、これからのがんケア」を2025年11月10日開催しました。LIGARE血液内科太田クリニック・心斎橋院長の太田健介先生が多発性骨髄腫におけるケアラーの役割を紹介したほか、日本骨髄腫患者の会代表の上甲恭子さんによるがん患者のケアラーに実施した意識調査の結果紹介、患者さんやケアラー、医療ソーシャルワーカーが参加した対話型ワークショップ『ブラインド・トーク』も行われました。

ケアが原因で悩みを抱えているのは70%


太田健介先生(ファイザー提供)

 特別企画ではまず、太田先生がケアラーの問題について解説しました。

 ケアラーとは、こころやからだに不調のある人の「介護」「看病」「療育」「世話」「気づかい」など、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人を無償でケアする人のことを指します。近年、18歳未満がケアラーとなる「ヤングケアラー」が話題となっていますが、仕事とケアを両立する「ワーキングケアラー」も多いのが現状です。ケアラーが直面する課題としては、ケアを実施することにより学業や仕事に支障を来たす、介護疲れやストレスでからだの調子を崩す、などがあります。

 埼玉県が実施した「ケアラー支援計画のためのケアラー実態調査」によると、調査対象となった1,022名のケアラーのうち、ケアが原因の悩みの有無について、「ある」と回答した割合は69.4%と大半が悩みを抱えていました。悩みの内訳をみると、「心身の健康」(61.8%)が最も多く、その他の主なものとして「ケアしている相手との関係」(32.4%)、「自分の自由な時間が取れない」(29.9%)、「経済的な問題」(26.5%)などとなっていました。この調査では、ケアラーが必要と考える支援についての質問もあり、「ケアラーに役立つ情報の提供」(41.5%)が最も多く、その他「緊急時に利用できてケアの相手の生活を変えないサービス」(28.3%)、「電話や訪問による相談体制の整備」(24.4%)、「気軽に休息や睡眠がとれる機会の確保」(23.3%)などが重要視されていました1)

 多発性骨髄腫にはさまざまな治療薬が登場しており、以前と比べて患者さんの生存期間は長くなりました。それ自体は喜ばしいことですが、生涯にわたって治療を続けることが多く、患者さんご自身の負担だけでなく、経済的な負担、通院などによるケアラーの負担の長期化への対策も講じる必要があります。

 太田先生は、「ケアラーには心理的、身体的、経済的、社会的なさまざまな負担が重くのしかかっているにもかかわらず、サポートするための支援や法整備等が十分といえない」と指摘。また、「多発性骨髄腫は、生涯にわたる通院が必要であり、長期におけるがん患者さんに対するケアラーの役割やそのサポートを考える上での良いモデルといえる。国民の二人に一人ががんになる時代において、ケアラーの負担を軽減するための取り組みは、今後ますます重要になる」と述べました。

ケアラーの63%が「患者の思いや望むことを理解できている」と感じていない


上甲恭子さん(ファイザー提供)

 続いて、ファイザーが行った「がん(多発性骨髄腫)患者のケアラー500名の意識調査」の結果の概要について、上甲さんが紹介しました。同調査は、多発性骨髄腫患者さんと交流経験がある家族・親族、知人など全国の500名を対象に、2025年4月21日~5月6日に行われました。その結果、「患者の思いや望むことを理解していると思うか」という問いに対し、63%が「理解できている」と感じていない中ケアにあたっている実態が明らかとなりました。上申さんは、父親が多発性骨髄腫で闘病し、退職してケアに専念した経験があります。当時は熱心に介護していましたが、「私も本当に父の思いをくみ取れていたかどうか、わからなかった」と振り返りました。

 また、「多発性骨髄腫患者さんへの支援・サポートにおいて負担を感じたか」との問いに対し、49.8%が「負担を感じたことがある」と回答しました。負担の中で最も多かったのが「自分の精神的な負担が大きかった」(34.2%)で、ケアラーへのメンタルケアが必要なことが浮き彫りとなりました。

 がん治療を進めていくうえでは、介護してくれる人の存在が大きな支えとなります。多発性骨髄腫に限らず、希少がんや希少疾患など疾患があまり知られていない場合、理解度や情報が限られ、不安を抱える中である日突然治療やケアが始まることがあります。上甲さんは「社会全体で、患者さんだけでなく、ケアラーへの理解・支援が必要」と強調しました。


ブラインド・トークの様子(ファイザー提供)

 当日は、視界を閉ざして、患者さんとケアラーがお互いの声に耳を傾け合う対話型ワークショップ『ブラインド・トーク』も開催されました。ブラインド・トークは、テーマを設定し、アイマスクを使用して視覚を遮断しながら語り合い、そこに視覚障害者が“導き手”として入り込むことによって、参加者のより深いテーマ理解を促し、本音での語らいを引き出します。今回は、夫婦で参加した患者さんとそのケアラーもおり、それぞれ別のグループに分かれてトークを行いました。普段はパートナーに話せない話を他人に本音で語ることで、さまざまな気づきが得られたようでした。(QLife編集部)

1)埼玉県ケアラー支援計画のためのケアラー実態調査結果(地域包括支援センター)(2025年11月閲覧)
[https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/187028/0101tyousa.pdf]

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