20年ぶりの新薬「タルラタマブ」が変える小細胞肺がんの治療
[ヘルスケアニュース] 2026/04/28[火]
新規の治療薬登場で選択肢に変化

倉田宝保先生(アムジェン提供)
肺がんの中でも特に進行が速く、長年治療の選択肢が限られていた「小細胞肺がん」。2000年代以降、目立った新薬が登場せず、医療現場では「取り残されたがん」とも称されてきました。しかし今、その停滞を打ち破る新薬「タルラタマブ」が登場し、治療選択肢に変化が訪れています。製薬企業のアムジェン株式会社が2026年4月20日に開催したメディアセミナーにて、関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座主任教授の倉田宝保先生が小細胞肺がんの最新の治療動向について紹介しました。
進行が速く、手術が難しい小細胞肺がん
肺がんは大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2つに分けられますが、小細胞肺がんは全体の約10%を占めます。小細胞肺がんの最大の特徴は、進行スピードが速く、あっという間に転移してしまうという点にあります。多くの場合、診断されたときにはすでに他の部位へ広がり、早期であっても手術の適応とならないことが少なくありません。
小細胞肺がんの治療は、長らく抗がん剤と放射線治療が中心でした。1990年代後半以降、多くの新薬が開発されてきた非小細胞肺がんに比べ、小細胞肺がんでは有効な薬がなかなか現れず、20年もの間、治療開発は足踏みを続けてきました。近年、免疫チェックポイント阻害剤が登場し、一部の患者さんには恩恵をもたらしましたが、それでも小細胞肺がんには「効きにくい」という課題がありました。その理由は、リンパ球(免疫細胞)が小細胞肺がんのがん細胞を認識して攻撃しにくい性質を持っているためです。
タルラタマブの仕組みと期待
この課題を克服するために開発されたのが、新薬のタルラタマブです。タルラタマブは、がん細胞と免疫細胞(T細胞)の両方にくっつく「二重特異性抗体」という特殊な仕組みを持っています。薬が橋渡し役となることで、これまでがんを認識できなかった免疫細胞を強制的にがん細胞のすぐそばまで連れていき、攻撃を開始させます。
これまでの化学療法が効かなくなった患者さんを対象とした臨床試験では、腫瘍が縮小した割合が41%に上り、生存期間を有意に延ばすことが確認されました1)。これは、これまで他の治療薬で効果がなかった厳しい状況にある患者さんにとっても、非常に大きな希望となる数字です。
タルラタマブには、特有の副作用として「サイトカイン放出症候群」があります。これは免疫反応が活発になることで起こる発熱や倦怠感などで、薬が効いている証拠とも言えます。医療従事者側での管理が不可欠ですが、適切に対処をすれば治療を継続することが可能です。倉田先生は、「臨床試験の結果を見ると、これまで免疫チェックポイント阻害剤が効かなかった患者さんにも効果が得られるかもしれない」と期待を示しました。
ワンステップ(患者会)の理事長、「これでどう生きるかを考える余地が生まれる」と期待

長谷川一男さん(アムジェン提供)
また、メディアセミナーにはNPO法人肺がん患者の会ワンステップの理事長を務める長谷川一男さんも登壇。「かつては30年間変わらないと言われてきた治療に、ようやく光が差し始めました。治療の選択肢が増えることは、単に薬の数が増えるだけでなく、仕事を続ける、家族との時間を守るといった『どう生きるか』を考える余地が生まれ、喜ばしい」と述べました。
進行がんでも諦めるだけの時代は終わり、小細胞肺がんの治療は今、確実に次のステップへと進んでいます。(QLife編集部)
1)Ahn MJ, et al. N Engl J Med 2023; 389: 2063-2075.
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