[病院を知ろう!プロジェクト] 2011/03/28[月]

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 東北地方太平洋沖地震は、今もなお(2011年3月28日現在)災害拡大が続いています。歴史に例を見ない大災害は、被災者以外の生活・心理面にも大きな影響を与えています。
 そこでQLifeは、茨城県を除く関東地方の医療現場に、「大震災に起因する患者の病状悪化」状況を確認しました。

 その結果によると、直接大きな被害を受けていない地域でも、半分以上の医療現場で「震災で心因的な病状悪化」した患者さんが見られました。大震災による「心因的病状悪化」は、「女性」「高齢者」の患者に多く、小児では「喘息」「発達障害」の悪化、大人では「高血圧」「うつ」「不眠症」の悪化が多く見られました。また、3分の1の医療現場で「向精神薬の処方」が増えた患者さんがいます。その原因不安は、「余震が続く」が1位、「悲惨な映像」が2位でした。実体験でなくとも映像によって精神的影響を受けた患者さんも少なくないという結果でした。
 さらに、42%の医師が、今後、自分の患者さんのなかでPTSDを生じる人がいると予想しています。過去にPTSDの症例経験がない医師も多いと思われるため、(そもそもPTSDとは何かを含めて)医療者間での診療ノウハウの早期共有が望まれます。

※「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」とは…危うく死亡・重症に至るような出来事を経験した後に、不安・不眠やパニックなどの症状が、一か月以上継続する、精神的な病気。(症状が1か月未満の場合は、PTSDではなく、ASD=急性ストレス障害に分類)


1.「東北地方太平洋沖地震」の発生以来、【過去10日間】で、大震災に関連すると思われる「心因的な病状悪化」が見られる患者さんはいますか。

茨城を除く関東地方(1都5県)全体で、55%の医療現場において、「心因的な病状悪化」の患者さんが見られた。東京でも、57%の医師が、大震災影響での病状悪化症例を診ている。

病状悪化は、「子供」だけに限らない。むしろ「大人」に認められるとする医師の方が多い。また、「病院」よりも「診療所」の患者さんに、影響を受けている患者さんが多い。

2.大震災関連の「心因的な病状悪化」が多い患者さんの、「属性/類型」傾向を教えてください。

どんな患者に「心因的な病状悪化」が多いのか、その属性/類型を聞いたところ、【小児】では、喘息や発達障害の患者に多いようだ。あまり性・年齢による傾向は強くない。

一方、【大人】では、「女性」「高齢者」に多いとの傾向が顕著であった。また、「高血圧症」や「うつ」を患っている患者に多い。「独り暮らし」で、再び大地震が来たらどうしたらよいのか、と不安が強まって持病を悪化させている患者も多い。

◆「心因的な病状悪化」が多い【小児】患者の属性

  • 性別:男女による多寡報告はほとんどない
  • 年齢:年代による多寡報告はほとんどない
  • 持病:「喘息」、「発達障害」の患者に多い

 ※“【小児】に心因的病状悪化が見られる”とした医師45人の回答から読み取り集計

◆「心因的な病状悪化」が多い【大人】患者の属性

  • 性別:「女性」が圧倒的に多い
  • 年齢:「高齢者」が多い
  • 持病:「高血圧」「うつ」「不眠症」が多い他、精神疾患名を挙げる医師が多い
  • その他:「独り暮らし」「もともと心配性・神経質」が多い

 ※“【大人】に心因的病状悪化が見られる”とした医師134人の回答から読み取り集計

3.「心因的な病状悪化」で最も印象的だった【症例】を、具体的に一つ教えてください。

最も印象的な「心因的な病状悪化」症例を聞いたところ、内容は多岐にわたった。なかには「自殺傾向を示す(東京・病院)」「定期受診者の全員が血圧上昇(群馬・病院)」「心不全が増悪して入院(千葉・病院)」との報告も。典型内容は、「不眠」「めまい・浮遊感」「血圧上昇」の順であった。「余震」「TV映像」がきっかけになる症例も多い。

※“心因的病状悪化した患者がいる”とした医師138人の回答から読み取り集計(複数選択)

◆印象的な【小児】の症例

  • 以前よりも顕著に視力障害の程度が悪化した小児(病院/東京)
  • 3歳女児 地震後より頻尿みられ、入眠不可となり余震があるたびに泣き叫ぶようになった(病院/神奈川)
  • 断続的に余震が続くので、そのたびに動作が止まってしまい母親のもとから離れようとしない就学前の幼児(病院/東京)

◆印象的な【大人】の症例

  • 2年間殆ど喘息発作の無かった患者で、感冒など一般的な増悪因子が無いにも関わらず、喘息発作が再燃した。(病院/神奈川)
  • 40代女性が、心労と過労で軽度のアトピー性皮膚炎が悪化、また慢性蕁麻疹も合併している状態で来院。(診療所/神奈川)
  • 以前から、数年に一度程度のめまいを自覚していた60歳代女性。主に安静時に頭位と関連ないめまいがみられ、神経系、画像所見問題なし。メリスロンなどの投与がある程度有効であった。(病院/千葉)

4.次のいずれかが原因とみられる「強い不安の訴え」があり、トランキライザーなど向精神薬を新たに(または増量して)処方した患者はいましたか。(複数選択)

大きな被災を直接受けなかったにも関わらず、3分の1の医療現場で「向精神薬の処方」が増えた患者さんがいる。その原因となった「強い不安」の具体的内容は、「余震が続く」が20%で1位だが、「悲惨な映像」が14%で2位に入り、実体験でなくとも映像によって精神的影響を受けた患者さんも少なくないようだ。なお「放射能」に対する不安で向精神薬の処方に至る症例も、7%の医師において認められた。

5.【今後のこと】について教えてください。自分の患者に大震災に起因するPTSDが見られると予想しますか。一番近いものを選んでください。

大きな被災を受けていない地域にもかかわらず、42%の医師が、自分の患者さんに「今後PTSDが見られる可能性が高い」と予想している。過去にPTSD症例経験ない医師も多いと思われるため、(そもそもPTSDとは何かを含めて)診療ノウハウの早期共有が望まれる。

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