[知っておきたい!ニュースな言葉] 2018/01/17[水]

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画像は2017 John Maddox Prizeのキャプチャ

2017年11月30日、医師でジャーナリストの村中璃子さんがジョン・マドックス賞を受賞しました。ジョン・マドックス賞とは、イギリスの科学誌「ネイチャー」元編集長であるジョン・マドックス氏の功績を称え、設立されたもの。健全な科学とエビデンスを広めるために、障害や敵意にさらされながらも貢献した個人に与えられる国際的な賞として、2012年に始まりました。

村中さんは、HPVワクチンの安全性を検証する情報を発信し続けてきたことが評価され、2017年の受賞者となりました。今回のニュースな言葉では、そもそも子宮頸がんとはどんな病気で、何が問題となっているのか、まとめます。

目次
  1. 子宮頸がんとは
  2. 子宮頸がんの検診と予防(ワクチン)について
  3. 子宮頸がんワクチンの助成制度の開始と推奨の中止
  4. 国内での副反応報告と専門家の見解
  5. 海外での副反応報告と各国・専門機関の見解
  6. 子宮頸がんワクチンはこれからどうなるのか

子宮頸がんとは

子宮頸がんは女性の子宮の出口付近、膣との接続部にできるがんのことを指します。このがんは、主に性行為によりヒト乳頭腫(パピローマ)ウイルス(HPV)に感染することで発生します。国立がん研究センターによる予測値1)では2017年に子宮頸がんに罹った人は1万1,300人、死亡者は3,000人となっています。

グラフ:子宮頸がん死亡者数(1958-2016)
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

女性特有のがんである子宮頸がんは乳がん卵巣がん、子宮体がんと比較して原因が明確であるため予防も含め対策が可能ながんといえます。

子宮頸がんの詳しい解説はこちらでも⇒ QLife家庭の医学 子宮頸がん

子宮頸がんの検診と予防(ワクチン)

ただ、欧米では子宮頸がん検診の受診率が7割以上といわれているなかで、日本では検診の受診率は4割弱に過ぎませんでした。2)

一番効率的な対策はHPVへの感染そのものを防ぐことです。現在、HPVは100種類以上の型あり、これらはまず感染する部位によって皮膚感染型と粘膜感染型に分けられます。子宮頸がんは粘膜感染型のHPVによって起こります。

そうしたなかで2006年にアメリカで初めて登場したのがHPVの感染を防ぐHPVワクチンです。日本でも2009年10月にサーバリックス、2011年7月にガーダシルの2種類のワクチンが承認され、その後発売されました。

HPVワクチンのサーバリックス、ガーダシル製品画像
画像はメーカーホームページより

ちなみにこの2種類のワクチンはサーバリックスがHPVの16型、18型、ガーダシルが6型、11型、16型、18型の感染を予防する効果があるとされています。このうちHPVの16型、18型は発がんの高リスクタイプのウイルスであることが分かっています。

現在HPVワクチンは世界100か国以上で使用されています。

子宮頸がんワクチンの助成制度と推奨の中止

厚生労働省では2010年からこのワクチンの接種を行う市町村に助成を開始しました。この結果、接種対象となった小学校高学年から高校生の女性は低額あるいは無料で接種できるようになりました。2013年4月には、HPVワクチンは予防接種法に基づく定期接種の対象となりました。

定期接種ワクチンにはA類疾病とB類疾病があり、集団予防に重点を置き、接種者本人の努力義務や国による推奨があるのがA類疾病です。HPV感染症はこのA類疾病となっています。

しかし、2013年、6月14日に開催された第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議で、HPVワクチン接種後にワクチンとの因果関係を否定できない持続的な痛みなどを訴える人が発生したことが報告されました。

合同会議では定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでしたが、発生頻度などがより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に推奨すべきではないとの結論に達しました。

画像:厚労省 子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ (平成25年6月版)キャプチャ
画像:厚労省 子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ (平成25年6月版)キャプチャ

現在でもHPVワクチンは予防接種法に定める定期接種対象のワクチンで、小学校6年生から高校1年生までは無料で接種が可能です。ただ、国は予防接種法に定めている責務である啓発や知識普及活動をHPVワクチンに関しては当面積極的には行わないというものです。

国内での副反応報告と専門家の見解

それから4年が経過し、現時点まで推奨の中止は続いています。この間、専門家による一定の見解の合意は得られています。

まず問題となった持続的な痛みや運動障害などの副反応(ワクチンの場合、副作用を医学的には副反応と表記します)は2013年9月末時点で130例にのぼりました。これを発生頻度に換算すると、接種回数10万回当たり約1.5件という計算になります。3)

翌2014年1月20日と7月4日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の第7回と第10回の副反応検討部会ではこれらの副作用を審議しました。

その結果、発症時期や症状、その経過などに統一性がなく、神経疾患、中毒、過剰な免疫反応などワクチンを原因とすることでは説明がつかず、「機能性身体症状」と考えられると出席委員の合意が得られました。つまりワクチン接種後に発生したと報告されている持続的な痛みは、ワクチンとの因果関係は薄いとの評価を下しています。

この機能性身体症状とは、より平たく説明すると、痛みなどの何らかの症状がありながら、病院で検査をしてもその症状に一致する何らかの検査値の異常などが見つからない原因不明の症状というものです。

主な症状は、

  1. 痛み、感覚が鈍い、しびれる等の知覚に関するもの
  2. 力が入らない、安定して歩けない、手足や体が勝手に動く、けいれんする等の運動に関するもの
  3. 動悸、下痢など自律神経に関するもの

の3つです。

また検討会では機能性身体症状のケースについて「接種後1か月以上経過してから発症している症例は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」、「機能性身体症状が慢性に経過する場合は、接種以外の要因が関与している」とも判断しています。

海外での副反応報告と各国・専門機関の見解

厚生労働省では、この後も海外でのワクチンの副作用発生状況なども調査しています。アメリカ、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの事例が報告されましたが、機能性身体症状と似通っている神経症状などの発生頻度はHPVワクチンの接種で増加したという報告はありませんでした。4)

また、欧州医薬品庁5)、イギリス医薬品庁6)、フランス医薬品・保健製品安全庁7)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)8)、世界保健機関(WHO)9)などもHPVワクチンの安全性に問題はないとの報告書を公表しています。

イギリス医薬品庁の報告では、HPVワクチン接種後の機能性身体症状と同様の症状の発生頻度は、むしろワクチンを接種していない人よりも低いと結論付けています。

さらに、健康問題を扱う国連の専門機関であるWHOの「ワクチンの安全性に関する諮問委員会」は2015年の声明9)で、日本での接種の推奨中止について「若い女性達は(ワクチン接種によって)予防しうるHPV関連のがんに対して無防備になっている。ワクチンの安全性に関する諮問委員会が以前指摘したように、弱いエビデンスに基づく政策決定は、安全かつ有効なワクチンを使用しないことにつながり、実害をもたらしうる」と非難めいた調子の指摘を行っています。

一方、日本国内では2016年4月に日本小児科学会をはじめとする学術団体17団体がHPVワクチンの積極的な接種推奨を求める見解を公表10)しています。

画像:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解(予防接種推進専門協議会)キャプチャ
画像:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解(予防接種推進専門協議会)キャプチャ

子宮頸がんワクチンはこれからどうなるのか

撮影:村上和巳

さて、最近の状況ですが、2017年12月22日、第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議が開催されました。

そこではHPVワクチンに関して接種対象者やその保護者向けの一般的な情報提供パンフレットと接種対象者に接種を受ける直前に情報提供パンフレット、医療従事者向け情報提供パンフレットを改定するための素案が提出されました。

改定素案では、3種類のパンフレットとも国内でのワクチンによる効果推計、副反応疑い報告の実態、副反応時の救済制度の実際とその利用状況などの詳細な情報が新たに付け加えられました。

推奨中止の原因となった接種後の疼痛、しびれなどの慢性的な症状について、改定素案でも「機能性身体症状であると考えられています」と記述し、因果関係については「『接種後1か月以上経過してから発症している人は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい』と専門家によって評価されています。またHPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を有する方が一定数存在したこと、が明らかとなっています」と否定的な表現を新たに盛り込みました。

委員からは素案を肯定的に評価する声が多数を占めましたが、「接種を受ける人はおおよそ中学生であり、保護者との理解能力には差があることから、両者を分けたパンフレット作成が必要ではないか」「接種者・保護者向けパンフレット素案は、一般の方がより理解しやすい工夫が必要」などの意見もあり、委員からの追加意見などを年内中に収集し、新たな素案を作成することになりました。

また、これらの情報提供について関連学会、文部科学省を通じた学校養護教諭、各地医師会会員など幅広い情報提供を進めるべきとの意見が相次ぎました。厚生労働省はこの点も今後検討する見通しです。

ただ、焦点となっている推奨の中止を解除するかについては、合同会議の審議では触れられませんでした。また、改定素案では問題が起きてから記載されている国としては中止に関する文言が継続して掲載されていることから、まだ先は見えていません。

※編集部追記:厚労省は2018年1月18日付けで、新たなパンフレットを公表しました。
 ⇒ ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種に関するリーフレットについて

1) 国立がん研究センター「2017年のがん統計予測」
2) OECD,OECD Health Data 2013,June 2013
3) 厚生労働省「ワクチン接種後の副反応と疑われる疾患の発生状況等について
4) 厚生労働省「子宮頸がん予防ワクチンの安全性に関する海外の状況」
5) the EMA communication that the CHMP confirms that HPV vaccines do not cause CRPS or POTS
6) MHRA (Medicines and Healthcare products Regulatory Agency) PUBLIC ASSESSMENT REPORT
7) http://ansm.sante.fr/S-informer/Actualite/Vaccination-contre-les-infections-a-HPV-et-risque-de-maladies-auto-immunes-une-etude-Cnamts-ANSM-rassurante-Point-d-information
8) Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)Summary Report
9) Global Advisory Committee on Vaccine safety Statement on Safety of HPV vaccines
10) http://vaccine-kyogikai.umin.jp/pdf/20160418_HPV-vaccine-opinion.pdf

参考リンク

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