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[教えて!ドクター] 2010/05/14[金]

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新しい指標で対処することが求められる高血圧

新しい指標で対処することが求められる高血圧
取材協力/高沢謙二教授・東京医大八王子医療センター循環器内科
取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト

カルナの豆知識2007年12・1月号特集より

「平均血圧」と「脈圧」、「上の血圧」がキーワード

 日本人の三大死亡原因は、(1)がん(30%)、(2)心臓病(16%)、(3)脳卒中(12%)の3つですが、そのうち心臓病と脳卒中の2つは高血圧や動脈硬化などの進行による、血管の突発的事故によって引き起こされます。
 「人は血管とともに老いる」といわれます。早いか遅いかの違いはあるものの、年を重ねるとともに血管の動脈硬化は進みます。
 動脈硬化が進めば、血圧の上昇を招いて高血圧となり、さらに高血圧が動脈硬化を推し進めるという悪循環に陥ります。心臓病や脳卒中の発病を未然に防ぐには、血圧をうまくコントロールし、できるだけ動脈硬化の進行を抑えることが切実に求められています。
 血圧をうまくコントロールするには、これまで「上の血圧」と「下の血圧」を目安とすることが推奨されてきました。
 「しかし、これからは『上の血圧』『下の血圧』の2つを指標とするだけでは不十分です。新たに『平均血圧』と『脈圧』という2つの要素についてしっかりと理解し、血圧をより厳密にコントロールすることが求められています」と、東京医科大学八王子医療センターの高沢謙二教授(循環器内科)は指摘します。

平均血圧は「細い血管」の動脈硬化の指標

 動脈は心臓から送り出される血液を、体のすみずみまで運ぶ通路の役目を果たしています。
 高沢教授「心臓が収縮と拡張を、ドッキンドッキン繰り返して血液を送り出しますが、その血液がまず送られるのは直径3~4cmの大動脈です」
 大動脈からより細い動脈へ流れていく血液は、いくつもの段階を経て直径約2~3mmの細小動脈へ送られます。そして、さらに枝分かれした毛細血管を通り、体のすみずみに酸素と栄養素を供給します。
 高沢教授「心臓と動脈(大動脈―細小動脈―毛細血管)は、ちょうどダムと田圃をめぐる水路にたとえられます。ダムからドッキンドッキンと放出された水は、まず太い水路からより細い水路を経て田圃に達します」
 田圃の細い水路では、ドッキンドッキンというリズムの伝わり方は弱まり、微かなものになって穏やかに水が流れていきます。
 高沢教授「細い水路にゆったりと水が流れていくのは、常に一定の圧がかかっているからです。『平均血圧』とは、いわばこの水路を流れている水にかかる一定の圧のことを指しているのです」
 動脈硬化によって、「細い血管」の内腔が狭まるなどすると、血流に対する抵抗は高まり必然的に平均血圧を押し上げます。平均血圧が高まるということは、「細い血管」の動脈硬化が進んでいることを示しているのです。

平均血圧の近似値の簡単な求め方

 平均血圧は、「上の血圧」と「下の血圧」の値から、容易に近似値を求めることができます。
 高沢教授「せっかちな人は、『上の血圧』と『下の血圧』の値を足し、その合計値を2で割ればよいと単純に考えがちですが、それは間違っています」
 平均血圧を求めるには、「血圧」という山と、その山となっている土塊の分量を想定する必要があります。平均血圧とは、「血圧山」の高さを2分したものではなく、「血圧山」の土塊の分量を2分したときの高さを表す数値なのです。
 高沢教授「たとえば、標高3776mの富士山の高度を2分したときの高さは1888mですが、富士山という土塊を2分したときの高さはそれとは違います。富士山という土塊を2分したときの高さは、山の裾野を形成する土塊の分量のほうが、山の頂上の土塊より多いから、高度を2分したときの高さよりもずっと低い位置に存在するのです」
 では、血圧を2分したときの平均血圧は、どのような計算式で求められるのかというと、次のような簡便式があります。

 平均血圧=「下の血圧」+{(「上の血圧」-「下の血圧」)÷3}

 高沢教授「たとえば、『上の血圧』が150、『下の血圧』が95の場合の『平均血圧』は、
 95+{(150-95)÷3}=113となるのです」

脈圧は太い血管の動脈硬化の指標

 一方、「脈圧」とは、心臓が血液を送り出すときに拍動によって生まれる圧力のことです。
 高沢教授「心臓が収縮して、血液を送り出したときの血管壁への圧力=『上の血圧』の値から、心臓が拡張し血液を心臓へ流入させたときの、血管壁への圧力=『下の血圧』の値を引くことで求められます」
 「脈圧」を大きくする決定的な原因は、血管の動脈硬化です。
 高沢教授「とくに『太い血管』の動脈硬化が進めば進むほど、脈圧は大きくなります」
 動脈硬化は「細い血管」から起こり、やがて「太い血管」にも波及しそれを進行させることがわかっています。そのため年を重ねるに従って、まず「細い血管」の動脈硬化によって「平均血圧」が上昇し、次いで「太い血管」の動脈硬化から「脈圧」が大きくなっていくのです。

「下の血圧」が下がり始めるのは危険な徴候

 今まで血圧が高いというと、上も下も高くなると思われてきました。
 高沢教授「しかしながら、動脈硬化が進行していくと、ある時点で『下の血圧』が下がり始めるのです。動脈硬化が『太い血管』にまで波及し、それが徐々に進行するにつれて『脈圧』を増大させていくからです」
 「脈圧」が増大し「上の血圧」の上昇を上回り始めると、それまで上がり続けてきた「下の血圧」が下がり始めます。「脈圧」の増大によって「下の血圧」が抑えられ、引き下げられてしまうのです。それなのに「下の血圧」の値が下がり始めたことに安心し、脳卒中や心臓病への警戒を緩め、油断してしまう人が後を絶ちません。
 「私は『上の血圧』は165と非常に高いのですが、幸いなことに『下の血圧』は75と正常なので安心しているのです」
 病院の待合室でこんな会話を耳にすることがありますが、とんでもない誤りといえます。「下の血圧」が下がり始めたのは、「脈圧」が増大したからであり、「脈圧」の増大は「太い血管」の動脈硬化が進行した結果意外の、何ものでもないからです。

何よりも大事なのは「上の血圧」の値

 これまで、血圧の目安といえば「上の血圧」と「下の血圧」だけを問題にしてきましたが、これからは「脈圧」や「平均血圧」ということも考えなければなりません。
 高沢教授「とりわけ、『下の血圧』の値だけを取り出して目安にすることは、まったく意味がありません」
 それだけでなく、誤った判断を下し、重大な血管事故を招きかねないので注意しなければなりません。
 高沢教授「要は、『下の血圧』の値は『上の血圧』の値との関係次第なのです」
 たとえば、「上の血圧」が正常範囲に入る120で、「下の血圧」も正常範囲の70ならば『青信号』でまったく問題はありません。しかし、「下の血圧」が同じ70でも、「上の血圧」が正常範囲を逸脱した160という高値であれば、きわめて危険な「赤信号」といえます。
 高沢教授「『上の血圧』の値次第で、『青信号』になったり『赤信号』になったりするのが、『下の血圧』なのです」

「上の血圧」には「善玉血圧」と「悪玉血圧」がある

 ところで、心臓が収縮するたびに「脈波」というものがつくられ、その「脈波」が血管に伝わります。この脈波の研究から、「上の血圧」には「善玉血圧」と「悪玉血圧」という、2つの血圧があることがわかってきました。
 「脈波」は、心臓からまず血液が送り出される大動脈の入り口で、おおもとの波の形がつくられます。
 高沢教授「脈波測定機器で、大動脈の入り口の脈波を測ると、P1(変曲点)をピークとした『ひとこぶ目の波』と、P2をピークとした『ふたこぶ目の波』の2つが記録されます」
 P1をピークとした「ひとこぶ目の波」は、心臓が収縮して血液を大動脈の入り口に向かって送り出したときの波です。P2をピークとした「ふたこぶ目の波」は、血液を送り出したときの波が全身の血管に当たって跳ね返り、戻ってきたものでつくられた波です。
 高沢教授「全身の血管の動脈硬化が進み、血管が硬くなってくると、この『ふたこぶ目の波』の戻りが速くなります。戻りが速くなればなるほど、『ふたこぶ目の波』の背は高くなっていきます。『ふたこぶ目の波』は、実は血管の動脈硬化を反映した波なのです」

善玉波と悪玉波

血圧の姿をより詳しく、かつ正しくとらえることが大事

 反射によってできた、「ふたこぶ目の波」の戻りが速くなると、その波=反射波は心臓が血液を送り出している最中に、戻ってくることになります。
 高沢教授「血液を送り出している最中は、心臓と大動脈の間にあるドア(大動脈弁)がまだ開いているので、反射で戻ってきた波の圧力をもろに受けることになります」
 波の戻りが速ければ速いほど、心臓にとっては邪魔な大きな負担となります。
 高沢教授「大きな負担を凌ぎながら、なおかつ血液を送り出さなければならないので、必然的に血圧も高くなってしまうのです。そのため、反射で戻ってくる『ふたこぶ目の波』を悪玉波、悪玉波がピークを示したときの血圧の値を『悪玉血圧』と呼ぶのです」
 一方、「ひとこぶ目の波」は心臓から血液を大動脈に送り出したときにつくられる波なので善玉波と呼び、善玉波がピークを示したときの血圧の値を「善玉血圧」といいます。
 以前は、「上の血圧」と「下の血圧」の値を知ることで、大まかな血圧の姿をとらえていました。しかし、今は「上の血圧」には「悪玉血圧」と「善玉血圧」の2つがあり、さらに「平均血圧」や「脈圧」を知ることで、より詳しい血圧の姿を見ることができるようになりました。
 健康で、長寿を楽しむ人生を実現するには、しっかりと血圧を管理しなければなりません。そのためには、血圧についてより正しい知識を身につける必要があります。
 今後、「平均血圧」と「脈圧」、「上の血圧」の「悪玉血圧」と「善玉血圧」は、「血圧の新常識」として定着していくことになるのは間違いありません。

高沢謙二(たかざわ・けんじ)教授
東京医大八王子医療センター循環器内科

1952年生まれ。東京医科大学卒業後、同医大第2内科へ入局。自治医大循環器内科へ研究出向後、東京医大第2内科講師、助教授を経て現職に。東京医大八王子医療センターの副センター長も兼任。『血圧革命』『あなたの「血管年齢」は若返る』(講談社)、『血液をサラサラにして血管年齢を若返らせる本』(PHP研究所)など著書多数。

※掲載内容は2007年12月の情報です。

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