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[教えて!ドクター] 2013/02/01[金]

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早期の段階の扁摘パルス療法で寛解・治癒するIgA腎症

取材協力/堀田修(ほった・おさむ)IgA腎症根治治療ネットワーク代表
取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト
カルナの豆知識2012年6・7月号特集

国民の10人に1人が慢性腎臓病

 近年、慢性腎臓病(CKD)が大きな注目を集めています。腎臓が慢性的な経過をたどって徐々に障害されていく病気の総称で、いまや慢性腎臓病が疑われる人は約1350万人、国民の10人に1人が該当するため、新たな国民病といわれています。
 腎臓はきわめて我慢強い臓器です。機能が少しばかり障害を受けても、無症状のまま腎臓としての働きを十分にまっとうすることができます。事実、腎臓の機能が本来の2分の1、3分の1に低下しても、体に支障をきたすことはありません。
 しかし、なにごとにも限度というものがあります。腎機能が本来の3分の1以下に低下すると、いずれ尿の濁りや浮腫、高血圧などのさまざまな症状が現れます。気づいたときは回復できないほど進行していた、ということが少なくありません。
 腎臓は尿をつくるだけでなく、ナトリウムやカリウム、リンなどの体液の成分=電解質を一定の割合に維持したり、血圧を調整するレニンやカリクレインなどのホルモンの分泌を調整したり、あるいはエリスロポエチンというホルモンを分泌して、赤血球を造り出すのを助けるといったさまざまな働きをしています。腎機能の低下を放置していると、本来、なすべきこうした働きができなくなります。この状態を腎不全といいます。

早期に治療を始めて人工透析を回復

 腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全の2つがあります。急性腎不全は腎臓の働きが急激に低下した状態で、適切な治療によって回復することが少なくありません。しかし、慢性腎不全は徐々に腎臓の働きが低下し、ある段階まで腎機能が低下すると、回復する望みは絶たれてしまいます。最終的に腎臓の働きが失われ、人工透析の導入となります。
 人工透析を受ける患者は年を追って増加し続け、いまや全国で29万7126人を数えます。人工透析によって日常生活を送ることができ、導入後の5年生存率は59.6%、10年生存率は36.7%ですが、近年は長期生存も可能となっています。
 慢性腎臓病という新たな考え方は、気づかないまま慢性腎不全が進行し、人工透析に至るという事態をなんとか阻止したい、という目的から新たに提唱されました。加えて、最近は腎機能の低下が原因で高血圧となり、それが腎機能の低下をさらに促進するという悪循環により、動脈硬化から心筋梗塞や脳卒中を発症させる人が増えてきました。しかも腎機能低下のごく初期の段階から発症の危険性が大きいことから、慢性腎臓病に対する警戒が強く喚起されるようになったのです。

約200万個の糸球体で血液中の有害物質を除外

 腎臓は腹部の背中側、ウエストのやや上にあるソラマメの形をした左右一対の臓器です。大きさは、縦約12cm×横約6cm×厚み約3cm。大人の握りこぶしくらいです。
 腎臓を縦切りにすると、外側に皮質、皮質の内側に髄質、さらにその内側に腎盂が存在します。
 皮質は、毛細血管が糸くずのように絡み合った直径約0.2mmの糸球体という組織の集合体で、左右両方の腎臓に約200万個の糸球体が詰まっています。糸球体のなかの毛細血管の壁がフィルターの役割を果たし、血液中の有害物質は水分とともに毛細血管の外へ通過します。これが尿の元になる液体で、原尿と呼ばれています。
 髄質には尿細管があります。糸球体でつくられた原尿のなかには体に必要なものもあり、これを再吸収しているのが尿細管です。原尿のほとんどは尿細管で再吸収され、残りが尿として排泄されます。
 腎盂は糸球体と尿細管でつくられた尿が集められるところで、腎盂から尿管を通って膀胱へ送られ、さらに尿道を経て体外へ尿が排泄されるのです。

慢性腎臓病の双璧は糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎

 腎臓の病気は糸球体や糸球体のなかの毛細血管、毛細血管を支えるためのメサンギウム細胞、尿細管や尿細管を支える間質などの障害から生じます。なかでも腎機能の低下にもっとも関連しているのが糸球体の障害です。糸球体の硬化で有害物質を濾過できないそれが増える一方、正常な糸球体もオーバーワークとなって硬化が促され、慢性腎臓病を発症させてしまうのです。
 慢性腎臓病の原因となる病気はいろいろありますが、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎はその双璧です。
 糖尿病性腎症は血糖値が慢性的に高くなる糖尿病の進行により、糸球体の毛細血管の動脈硬化を招き、慢性腎臓病を発症させてしまいます。人工透析を受ける患者のうち、もっとも多いのが糖尿病性腎症の患者(43.5%)です。
 一方、慢性糸球体腎炎は血尿やタンパク尿、高血圧などの症状が1年以上続くものです。まれに、風邪などから生じる急性糸球体腎炎の発症後、慢性糸球体腎炎を発症することもあります。いつ発症したのかもわからず、会社や学校などの健診で偶然に発見されることが少なくありません。人工透析導入の原因疾患として、糖尿病性腎症に次いで多いのが、この慢性糸球体腎炎(21.2%)です。
 慢性糸球体腎炎はいくつかのタイプに分けられます。もっとも多いのがIgA腎症で、慢性糸球体腎炎の約4割を占めます。ほかに膜性腎症や急側進行性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、微小変化型ネフローゼ症候群などがあります。いずれにしても、健診で血尿やタンパク尿の異常が指摘されたら腎臓内科専門医を受診し、きちんとした検査と診断を受けることが重要です。

早期発見・早期治療でIgA腎症は9割が治る

 慢性糸球体腎炎のうち、とりわけ早期発見・早期治療の重要性に大きな注目を寄せられているのがIgA腎症です。
 「最初に血尿が出てから3年以内に扁桃摘出術+ステロイドパルス療法(扁摘パルス療法)を受ければ、9割の患者が治癒・寛解するからです」と指摘するのはIgA腎症に対する扁摘パルス療法を確立し、その普及に努めるIgA腎症根治治療ネットワークの堀田修院長(堀田修クリニック・宮城県仙台市)です。
 IgA腎症は、糸球体のメサンギウム細胞にIgAという免疫グロブリンが沈着し、毛細血管の断裂などから腎臓の濾過機能の低下を招く病気です。風邪などをきっかけに口のなかの口蓋扁桃などに細菌が巣食い、長期にわたって免疫システムを刺激し続け、白血球による糸球体の毛細血管の破壊を促すことから生じます。扁摘パルス療法は細菌が巣食う口蓋扁桃を手術で切除し、かつステロイドの点滴大量療法で異常な免疫反応などを抑えることで、IgA腎症を治癒・寛解へ導く治療法です。
 堀田院長:「すでに扁摘パルス療法は1500人以上のIgA腎症の患者に試みられ、優れた治療成績をあげています」

軽視してはならない血尿 尿沈査で突き止める

 重要なのは会社や学校の健診などで血尿が指摘されたら、IgA腎症かもしれないと考え、すみやかに適切な検査と治療を受けることです。
 堀田院長:「IgA腎症などの慢性糸球体腎炎による血尿か否かは、尿沈査という検査で突き止められます」
 尿を遠心分離器にかけて沈殿させ、赤血球などの有形成分を顕微鏡で調べる検査です。それまで尿潜血検査の結果が陰性で、かつ尿沈査で変形した赤血球か、赤血球円柱のどちらかが見つかり、それが1年以上持続していたらIgA腎症の可能性が非常に高いといえるのです。
 尿沈査はほとんどの検査会社が請け負っています。診療所や小さな病院でも、検査会社へ尿沈査を外注してもらうだけでよいのです。
 堀田院長:「実は、かつてIgA腎症は治らない病気ではあるけれど、慢性腎不全に陥るケースは少ない、予後良好の病と考えられていました」
 そのため腎機能が低下し始めたら、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬を処方されるケースもありました。
 堀田院長:「しかし、最近はIgA腎症に対する考え方が劇的に変わってきました。すなわち、IgA腎症は発症後20年で40%、30年で50%の患者さんが腎不全に陥り、人工透析を導入していることが判明しています。長い目で見ると予後不良の病気であるという事実がわかってきたのです」
 一方、IgA腎症を早期発見し、早期に扁摘パルス療法を試みれば、治癒・寛解することも確かめられてきました。そこで、早期発見のカギを握る血尿は重要な徴候であり、患者自身も気をつけねばならない、との意識転換が切実に求められているのです。
 堀田院長:「とくに中学や高校などの学校検尿で血尿が見つかったお子さんは、要注意です。軽視すると将来に大きな禍根を残してしまいかねません」
 また、症状がほとんどないことから治療をドロップアウトする中高年世代のIgA腎症の患者が目立ちます。症状がないからといって放置せず、適切な治療を受けましょう。

堀田修(ほった・おさむ)代表
元仙台社会保険病院腎センター長。1988年にIgA腎症の根治治療として扁摘パルス療法を考案。早期の段階で扁摘パルス療法を行えばIgA腎症が治りうる疾患であることを米国医学雑誌(AJKD、2001年、02根)に報告。2011年、堀田修クリニック(宮城県仙台市若林区六丁の目南町2番39号)をオープン。わが国のIgA腎症の診断と治療の第一人者として広く知られている。

※掲載内容は2012年6・7月の情報です。

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